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新型コロナが日本に示した「既得権益者のための市場」 の限界

守屋実(新規事業立ち上げプロフェッショナル),鬼塚忠(作家エージェンシー代表)

2020年04月29日 公開 2022年12月21日 更新

 

大きな環境変化は、新規事業にとってチャンス


鬼塚忠氏(右)は経営者として、守屋実氏(左)にこの難局にチャンスが存在するのかを率直に聞いた。

さらに、既得権益者が守りたい市場は、バカでかい市場なので、それだけ攻めていくだけの価値があると思います。加えて、新規ビジネスが起こす変化は、この社会のために有益なことが多いです。

ひとつ例をあげます。これからもウィルスと戦っていくことを考えると、国は、PHR(注:パーソナルヘルスレコードの略)、つまり個人の健康に関するデータを保有しておいた方が、いざという時のために有益なのは明らかです。

だとしたら、我が国らしいPHRを構築したほうがいい。個人情報は誰のものなのか、というレベルの議論はもちろんあります。それを乗り越えなくてはいけないですが、それでも先に進んだほうがいい。

このようなことは民間企業には手強すぎる話かもしれませんが、それでも、医療介護ヘルスケアという業界にDX(注:デジタルトランスフォーメーションの略)が起こす最大のチャンスとして、PHRに真正面からぶつかっていく、ということもアリです。

(鬼塚)個人のデータを扱うのは注意が必要ですが、社会のためになる新規事業が世の中に出てくるのは賛成です。ですが、それでも、私が人生を賭けてやり遂げる、と名乗り出てくる人はそう多くはない。それは新規事業の立ち上げが簡単ではないからですよね。どうでしょうか?

(守屋)はい、もちろん、簡単ではないと思います。そもそも論として、これはコロナ以前からそうですが、新規事業は、だいたいうまくいかないのです。ただ、それでも、これだけの大きな環境の変化は、いつの日か、未来から遡ったら、必ずや、大きなチャンスだったと思うはずです。

のちのち、「あの大変な最中に、あの事業は生まれていたんだね」と言われる事業が今まさに生まれてもおかしくはありません。

 

旧来型の日本企業のパターンから、強制的に脱却させられた

(守屋)ちなみに、ビフォーコロナと、アフターコロナもしくはウィズコロナでは、「環境の差分」がある訳ですから、当然、「立ち上げ方」にも、何かしらのカタチで差分が現れると思います。

例えばですが、これまでは、目指す市場や戦う顔ぶれが、大きく強そうだと、それなりのお金が集まりました。ただ、これからはそうはいかないと思います。

その事業の確からしさの証明を、早い段階から求められてしまうと思うのです。小さくても構わないので、その事業の「勝ち筋」を示す必要がある、ということです。

このときの「勝ち筋」なのですが、私自身が言う「勝ち筋」には、2つの要素が含まれている必要があります。「勝ち筋=勝利の物語+勝利の方程式」です。

勝利の物語は、その事業の成長、成功の肝となる部分を、文章で表したものです。そして、勝利の方程式は、その事業の成長、成功の肝となる部分を、数式で表したものです。

この二つ、国語と算数で、シンプルにその事業の確からしさを示すことが、アフターコロナの世界では、より強く求められてくると思います。

(鬼塚)そういう会社が出てくれば、今からの日本社会はどうなりますか?

(守屋)これから不況は免れないと思いますが、やがてそのトンネルを抜け、再び、立ち上がるのではないかと思います。

これは確かな予測ではないですが、我々一人一人が、そう思い、行動することが大事だと思います。意志ある先にしか、道は拓けないと思います。逆に言えば、強い意志を持ち続ければ、道は拓けてくるのだと思います。

これまでの日本社会は、旧来型の先進国パターンでした。粒の揃った人材が、統率の取れた大きな組織を形成して効率的に生産活動を展開、今あるものを、より良いものにしていく改善力に長けていて、ルールを乱す人も少ないが、ルールを書き換える人もいない、そんな感じの成長パターンだったのではないかと思っています。

そのパターンがだんだんと精彩を欠いていき、勝てなくなりました。それゆえ、そのパターンからの脱却を図ろうとしていたのですが、コロナに直面したおかげで強制的に脱却させられようとしています。

今まで通り、なんとかやれてきた日本社会のやり方でやっていけないのは明らかです。いま、変われなかった国が得た、変わらざるを得ない環境に置かれています。ようやく、日本社会が再び立ち上がるチャンスに遭遇しているのだと思います。

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考えるより、とにかく動くこと

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