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ムーギー・キムが明かす「世界トップエリートのコミュ力はココが違う」

ムーギー・キム&池原真佐子(MANABICIA代表)

2020年08月28日 公開

 

部下を伸ばす上司は「待つ」ことを知っている

【ムーギー】「相手の話を聞く」の次に大切なポイントはなんでしょうか。

【池原】コーチングを行う時には、相手の変化を導く立場になります。ただし、そういう時にも「変化を急かさない、焦らない」。けれども、「変化の兆しは見逃さない」。これが、2つめのポイントです。人が変化していくには、5つほどプロセスがあります。

【ムーギー】どんなプロセスを踏んでいくのですか。

【池原】現状に違和感を抱くのが、1つ目の変化の始まりです。例えば、先ほどの話のように、入社3年目までは充実していたけれど、このままこの会社にいていいのだろうかという違和感が湧いてくる。

そこから自分の居場所はここではないと気づくのが、2つ目のステップです。気づいても、どうしたらいいのかわからない時期でもあります。

【ムーギー】自分の居場所ではないとわかっていても、どこにいけばいいのかわからないから、ダラダラといてしまうわけですね。

【池原】そうですね。このプロセスの時期が一番長くて、悩んだり、落ち込んだり、うつ状態になったりする人が多いといわれています。そこから少しずつ選択肢が見え始めるのが3つめのプロセスで、選択肢を絞り込んでいくのが4つめのプロセス。そして、最後のフェーズで動き出します。

この最後のフェーズに至るまでの変化は、非常にゆっくりですし、見えにくいのです。ですから、コーチングをする立場の人は、このプロセスを理解しておくことが大切です。

【ムーギー】このプロセスは、私がフラれたあとに立ち直るまでに、1年くらいかかるのと同じですね(笑)。

【池原】恋愛でも同じだと思います。

【ムーギー】変化を急かさない、焦らない。けれども、変化の兆しは見逃さない。その次のポイントは?

【池原】3つめのポイントは、「ジェラシーを制する」です。例えば、部下のコーチ役になり、その部下がどんどん成功していく。

【ムーギー】部下が成功して、自分の上司になったりしたら、それは相当なジェラシーを感じますよね。

【池原】人間である以上、そういう気持ちは必ず湧いてきます。ただ、それを意識しておくんですね。そして、部下の成長は自分にとってもプラスであると認識する。自分と人を比較するのではなくて、昨日の自分と比較する。そんなふうに、軸を「自分」に持っていくようにすることが必要です。

【ムーギー】真佐子さんが今の社外メンター事業を開始する前、一時期コーチとして活動していた時、クライアントにジェラシーを感じたことはありますか?

【池原】ないです、と言い切りたいところですが、以前は感じることもありました。例えば、コーポレートのエグゼクティブの方ですと、フィールドが違うので嫉妬心が湧くことはありません。

でも、女性の支援をするような時には、自分と同一視してしまうことがあります。その時には、1つめのポイントの「相手の話を聞く」ことができていないことになりますから、「私だったら…」という気持ちが出てきたら、それに気づいて踏みとどまる。そうして自分の心を制するようにしています。

【ムーギー】コーチングをしている相手に嫉妬していることに気づいたら、自分の器の小ささに落ち込むこともあると思います。でも、それは自然なことなんですね。

【池原】自然なことです。それがわかっていれば、対策を取ることができるので、まず嫉妬することもあると知っておくことが大切ですね。

 

「とんでもないゴール」を設定せよ

【ムーギー】では、4つめのポイントは?

【池原】今までお話ししてきた3つのポイントは、どちらかというとコーチングをする側がより意識するとよいことでした。4つめ以降のポイントは、コーチングを受けるクライアントに意識させること、あるいは、自分がセルフコーチングで意識すべき点になります。そこでまず大切なのが、ゴールを設定することです。

【ムーギー】ゴール設定は重要ですよね。自己実現ができている人は、自分で目標を設定する力があると感じます。目標を立てる力とは結局、自分の好きなことを自分で決める力だという気がします。目標を立てる力をつけるために、コーチングではどんなことをするのでしょうか。

【池原】ゴール設定で重要なのは、「とんでもないゴール」を設定することです。人が目標設定をする時には、現状から想像がつく範囲のことを描きがちです。

なぜかというと、人は自分が心地よいと感じる「コンフォートゾーン」を好むのです。ただ、その中で目標設定をすると、力はそれほど発揮できないんですよね。

【ムーギー】とんでもない目標を立てるためには、どんなサポートが有効ですか?

【池原】いくつかコツがあって、1つは、数字を大きくする。ゼロを1つ、2つ増やしてみるんですね。それから、期間を延ばす。10年続く企業を作るというよりも、100年続く企業を作るといったほうが、目標は高くなりますよね。

また、抽象化することも有効です。例えば、この薬でこの地域の人を救いたいというよりも、この薬で世界の病をなくしたいというふうに、抽象化した高度な目標を立てる。自分のコンフォートゾーンから飛び出て、こんなの無理じゃないかなと思うところに目標を設定するのがポイントです。

そして、立てた目標、設定したゴールを、自分の「好き」にひもづける。あるいは、好きなものから目標にしていくことが、5つめのポイントになります。

【ムーギー】真佐子さんは、自分の立てた目標が、好きなものとは違ったという経験はありますか。

【池原】社会人になりたての頃は、「この会社でマネジャーになって出世したい」と考えていました。でも、なんのために出世をしたいのかと考えてみた時に、もっと多くの人に出会いたい、もっと多くの人が生きやすくなる社会を作りたいというところに結びつきました。そこをさらに掘り下げていった結果、学びや成長の支援というところにつながってきたのだと思います。

【ムーギー】目標が好きかどうかということは、根源的にやりたいことは何かを問いかけることにつながりますね。

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