考え込むよりもボーッとしたほうがいい
考えすぎて時間がなくなるのには、「良いアイデアが思い浮かばない」「ひらめかない」というケースもあるでしょう。歴史上の偉人たちの発明や発見には、根を詰めて考えているときではなく、ボーッとしているときに頭に浮かんだものが少なくありません。
例えば、「アルキメデスの原理」は、アルキメデスが入浴中に思いついたと言われています。また、木からリンゴが落ちるのを眺めていたニュートンが万有引力についてひらめいたという逸話も、真偽は定かではないとはいえ、ボーッとしているときに名案が浮かぶ好例と言えるでしょう。
読者の皆さんも、アイデアや問題の解決策を、ボーッとしているときに思いついた経験があるのではないでしょうか。
ワシントン大学のレイクル氏らの研究でも、「行動しているとき」よりも「ボーッとしているとき」のほうが、記憶や価値判断に関する脳の部位が活発に働いていることがわかっています。
「デフォルトモードネットワーク」と呼ばれるもので、近年、研究者たちの間で注目されています。無意識の状態のほうが、物事の意外なつながりや新たな発見が生まれやすいと、科学的にも考えられるようになりました。
余談ですが、私の大好きな曲である『みずいろの雨』を歌った八神純子さんは、原宿の歩道橋を歩いていたときにこの曲を思いついたと言いますし、作家の村上春樹さんが「作家になろう」と思い立ったのも、野球場で、ある選手の2塁打を目の当たりにしたときだったそうです。
リモートワーク中に考えるときの注意点
もちろん、単に何も考えないほうがいいというわけではなく、考えすぎても良い結果は生まれない可能性が高いということです。根を詰めて考えすぎずに、「コイン投げで決めてみよう」くらいの軽い気持ちで、まずは行動に移してみてはいかがでしょうか。
特にリモートワークの場合、Zoomなどを使ったテレビ会議はできるにしても、コミュニケーション量が大幅に減少します。すると、脳内で分泌されるセロトニンの量が減少し、うつっぽくなりやすくなります。
私自身、大学でリモート講義を担当するなかで感じるのは、精神的に疲れてしまっている学生が一定数存在しているということです。その状態で考えすぎることは、精神衛生上、よくありません。
考えすぎてしまうなら、身体を動かすことに時間を使うのがいいでしょう。例えば、ジムに通うことで、ストレスが減るだけでなく、感情のコントロールができるようになったり、学習習慣も身についたりと、様々な効果があることがわかっています(マコーリー大学のオートン氏らの研究)。
また、リモートワーク中は、インターネットで情報を得られるとはいえ、自分が知りたい情報にばかり接するようになるため、思いも寄らないものに出くわす可能性が低く、新しいことを学ぶのには適していません。
その点、トラブルを含めて、多くの体験をすることできる外出を意識的に増やすのは、ニューノーマル時代にこそ、大切になってくるのではないでしょうか。