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「あなたのためを思って…」 周りの人をイラっとさせる“ずるい言葉”

森山至貴(早稲田大学准教授)

2021年07月26日 公開 2024年12月16日 更新

言われた言葉が、何となくモヤモヤして腑に落ちないけど、その違和感を言語化できないという経験はないだろうか。

著書『あなたを閉じこめる「ずるい言葉」』が話題のベストセラーになっている早稲田大学准教授の森山至貴氏によれば、そんなときは「ずるい言葉」で言いくるめられている可能性があるという。「ずるい言葉」に気づき、身近な家族にも使ってしまわないようにする方法をうかがった。(取材・構成 麻生泰子)

※本稿は月刊誌『THE21』2020年6月号より一部抜粋・編集したものです。

 

「ずるい言葉」とは? コミュニケーションでモヤモヤしてしまう原因

何気なく言われたひと言に、イラッときたり、モヤモヤした経験はありませんか?その違和感、気のせいではありません。

相手は「あなたのためを思って」「みんながこう言っている」などと、一見すると"いい人"の皮をかぶった言葉を発しています。しかしその発言の正体は、自分の言葉を使わずして、あなたを思い通りにコントロールしようする「ずるい言葉」なのです。

「ずるい言葉」は、その場しのぎの一方的な価値観の押しつけでしかなく、あなたの心の深い部分はその罠に気づいてアラートを出しています。それが相手の言葉への違和感の正体です。

ただ、善意や良識を巧妙に装っている言葉なので、どこが間違っているのかを明確に指摘するのはとても難しい。そこがまた「ずるい」のです。

「ずるい言葉」をたびたび使う相手とは、対等な会話が成り立たず、モヤモヤが溜まっていく一方です。だから、家族や友人など親しい間柄であっても、心理的に疎遠になっていきます。

でも、発言している本人はずるさの自覚が薄いので、不仲の原因を相手に求めて、薄情で身勝手なヤツだなどと嘆いていたりします。

 

"成功体験"が多い人ほど要注意! パワハラ・セクハラ予備軍の50代

これまで「ずるい言葉」の被害者たちは、相手のずるさを明確に言語化できずに泣き寝入りすることも多かったのですが、最近ではSNSなどでこうした「ずるい言葉」が俎上に載せられることも増えました。それらの「ずるい言葉」の加害者に特に多いのは、50代以降の男性です。 

男性中心社会でそれなりの地位を築いてくると、多かれ少なかれ自分の成功体験や価値観で凝り固まってきます。周囲の人が自分の思い通りに従ってくれる"成功体験"が多い人ほど要注意です。そういう人は、周囲から「間違っている」と指摘してもらえる環境にありません。

さらに、プライドが邪魔をして、素直に間違いを認めることが苦手な人が多いのです。だから、パワハラ、セクハラとして大事になるまで問題が膨らんでしまう。

加害者にならないための処方箋は「自分を主語にする」こと。「あなたのために」「皆がこう言っている」というカモフラージュではなく、「自分はこう思う」「自分はこうしてほしい」と自分を主語にした対話のカードを切れば、少なくとも相手も正面から対応できます。お互いの感情や価値観に基づいた会話が生まれ、対等な関係性に一歩近づくのです。

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