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「国民皆保険の日本」が起こした医療崩壊...コロナ禍の失敗を繰り返さないための提言

吉澤恵理(医療ジャーナリスト)

2021年12月01日 公開 2024年12月16日 更新

日本のみならず世界を不安と恐怖に陥れた新型コロナウイルスとの戦いもようやく出口が見えてきた。ワクチン、治療薬の登場も相まって第5波が収束し、以前の日常を取り戻しつつある。その一方で再び第6波により感染拡大することが懸念される。第5波までに見えてきた問題を明らかにし、対策を講じることが急がれる。

こうした状況を受け、感染症と自然災害に強い社会の構築を目指し、経済界、防災関係、自治体関係等の諸団体が広く連携した「ニューレジリエンスフォーラム」が設立された。日本医師会名誉会長の横倉義武医師や九州経済連合会名誉会長の松尾新吾氏、関西大学特別任命教授・社会安全研究センター長の河田惠昭氏がフォーラムの共同代表を務め注目を集めている。

また、事務局長は、防災・危機管理の専門家である拓殖大学特任教授・防災教育研究センター長の濱口和久氏が務め、フォーラムが今後の新型コロナウイルス対策に一翼を担うことが期待される。濱口和久氏に話を聞いた。

 

自然災害に加えて医療崩壊...国民が共有した危機感

日本の歴史を返ると地震、津波、台風・豪雨、火山噴火など数々の災害に見舞われ、災害大国と言っても過言ではない。防災への意識が高いはずの日本だが、新型コロナウイルスに翻弄され、医療崩壊を招く事態となり、一時は日本中がパニックとなった。

「過去の災害では被災者と非被災者との間には、少なからず災害に対する意識の差があったことは否定できないと思います。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大は日本人が危機感を共有する事態となり、過去の災害とは大きく異なりました」

賛否両論あった新型コロナウイルスへの政府の対策だが、濱口氏は日本政府は健闘したと語る。 

「法の立て付けから言うと総理とは言え限界があったことは事実であり、前総理の菅義偉さんは、最善を尽くしたと思います。第6波だけではなく、将来の新たな感染症に加え、大規模な自然災害などが同時に起こる可能性もあります。国家安全保障の立場から、複合災害に対応できるオールハザード型の備えとして、平時から有事にスムーズに動ける仕組み作りが必要です」

濱口氏が指摘する「法の立て付けの問題」と言う点では、第5波で顕著となった医療崩壊があたるだろう。

日本における病院の経営基盤は、全国で8割、東京で9割の病院は民間病院であり、行政は『協力要請』を出すのみで強制力を持たない。結果、医療の質も高く、国民皆保険が整備された日本でも、医療崩壊が起きたという側面がある。

 

第1次提言を政府、各党へ提出

第5波が収束する兆しが見え始めた10月中旬、後藤茂之厚生労働大臣は国立病院機構法などに基づき、全国の公的病院約200施設に対して病床確保を要求し、これにより、全国の病床は2割増となる見込みだ。しかしながら、医療崩壊を防ぐためには病床数を増やすだけでは片手落ちといえる。医療従事者の確保、ハード面の充実など整えるべき課題は多い。

「ニューレジリエンスフォーラムの第1次提言では、医療提供体制の改善すべき点や現行法のなかでどういった対策ができるかを提案していきます。また、論議する中で『緊急時』に相応しい法制度の整備が必要であれば提言していきます。すでに9月7日、ニューレジリエンスフォーラムは、第1次提言を加藤勝信内閣官房長官(当時)と、自民党、立憲民主党など各党政策担当者に提出しました」

第1次提言の柱は5つ。提言を受け政府が第6波に向け迅速な取り組みを行うことを望む。

1.医療提供体制の整備と医療従事者の確保
2.医療機関・医療従事者への迅速な経済的支援
3.海外からの感染流入を防ぐ水際対策の強化
4.国家安全保障としての感染症対策の戦略構築
5.「平時」から「緊急時」への円滑な転換を図るための関係法令の整備

「新型コロナ感染症だけを想定したものではありません。新たな感染症の出現や大規模自然災害など、緊急事態が起きる可能性に備える必要があります」

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