道しるべとなった「マインドフルネス」
浮き沈みの激しい人生を歩み、とうとう自分の生きる道を見つけた著者。その道しるべになったのは、ルースに教わったマインドフルネスでした。
著者はルースの言葉を繰り返し思い出して、心を開くための10箇条をまとめます。その頭文字は「CDEFGHIJKL」です。「Compassion(共感)、Dignity(尊厳)、Equanimity(平静)、Forgiveness(ゆるし)、Gratitude(感謝)、Humility(謙虚さ)、Integrity(誠実さ)、Justice(正義)、Kindness(思いやり)、そしてLove(無償の愛)」の10個です。
詳しい内容は本書を読んでいただければと思います。本書には実際にどのような行為をすることで、その境地に近づいていくかが、話の進展に沿う形で紹介されています。マインドフルネスは、心を落ち着かせ、自分の内なる考えを感覚として再認識することを助けてくれるようです。
人のものと同様に、自分の本当の考えを見つけることは難しい
周りの人とわかり合うことは、実際には難しいことです。相手に自分を理解してもらうことを強く期待しすぎれば、いずれは落胆することが避けられません。
一方で、まったく期待しないことは聖人のような人でなければ難しいでしょう。いずれにせよ、人に本当の自分を理解してもらうことには、高いハードルがあるように思います。
哲学者のカントは『純粋理性批判』という主著で、理性だけで考えることの危うさを説いています。理性は働かせれば働かせるほど暴走してしまうもので、現実と離れてしまいます。
本当の願いは自分の中にしかないので、理性だけで考えても見つかりそうもありません。その自分を見出す行為は、本書ではマインドフルネスの形で表現されています。
そして、自分の中は簡単には覗けないため、無意識の中にアクセスをして感覚を研ぎ澄ます目的で、願いを思い浮かべる前にまず心を開くルーティンになっているのだと理解できます。