韓国の若者たちの心を動かしたTABLOの「言葉の力」
「傘を差してあげる元気がないときは いっしょに雨に打たれてあげる」
「あまりにも美しくて 思い出にしたくない日」
「永遠はないという事実 その事実も永遠でなきゃいいのに」
余白の中にぽつんと刷られた言葉は視覚的にも際立ち、より力強く表現される。先述したRMや、ボーイズ グループ Wanna Oneのパク・ジフンら、数多くのK-POPアーティストのSNSでも、韓国での発売当初、TABLOの『BLONOTE』が紹介されていた。
同書には、K-POPグループ、BIGBANGのG-DRAGONことクォン・ジヨンや、『パスタ』『椿の花咲く頃』などのドラマ出演で日本でも人気の女優コン・ヒョジン、『オールド・ボーイ』や『お嬢 さん』などの個性的な作品で世界的にも著名な映画監督パク・チャヌクなどの直筆も掲載され、 TABLOが韓国アーティストの間で強くリスペクトされていることを改めて感じることができる。
TABLOが多くの人の心を揺さぶるような言葉を操れるのは、恐らく様々な国に移り住んできた経験が 大きく影響しているのかもしれない。そしてスタンフォードで文学的な精緻を極め、研ぎ澄まされた彼の言葉は、たとえそれが20文字足らずだったとしても、私たちの心を掴んで離さない。
TABLOは、2008〜2009年、2014〜2015年に『TABLOと夢見るラジオ』のパーソナリティを担当し、大変人気を集めていた。番組の終わりには彼が短いメッセージを読み上げ、同時に番組公式のSNSでもそのメッセージがアップされるスタイルが恒例になっていて、リスナーは耳で聴いた彼のメッセージを、再び文字で味わうことができたという。
BTSのRMやSUGAも、幼い頃にTABLOのラジオをリアルタイムで聴いて、彼のメッセージを書き留め、詩作を学んでいたかもしれない。TABLOの蒔いた言葉の種が、2022年のグラミー賞本命アーティ ストBTSという大輪の花となって開花したといっても過言ではないだろう。
その言葉は甘かったり、辛かったり、読む日の天気や気分によって変わるだろう。TABLOの言葉から、RMやSUGAが感じたときめきを共有することができるかもしれない。