キエフ攻撃。まさか21世紀のヨーロッパで他国に首都が攻撃されるとは、ほとんどの人が予想もしていなかったが、現実となってしまった。ロシアのプーチン大統領はリスクを無視して、なぜこれほどまでに強気なのか。その背景について、経済的な視点から歴史を研究する元国税調査官の大村大次郎氏が解説する。
※本稿は大村大次郎著『お金で読み解く世界のニュース』より一部抜粋・編集したものです。
なぜロシアはアメリカに強くものを言えるのか?
ヨーロッパには、EU、イギリスのほかにもう一つ世界経済に大きな影響を持つ大国がある。
ロシアである。
かつて東西冷戦のときには、ロシアはソビエト連邦として東側社会主義陣営の盟主だった。が、1990年前後に東ヨーロッパの社会主義国家群は次々に崩壊していった。盟主だったソビエト連邦も、連邦内の国々が次々と離れていき崩壊した。
そのソビエト連邦の国土の大部分を引き継いだのが現在のロシア連邦である。
ロシアは、欧米主要国や日本よりはかなり経済規模が小さく、GDPでは現在世界第11位である。GDPで言えば韓国よりも低いのだ。
だから経済規模だけで見るならば、ロシアはそれほどの大国ではないといえる。
しかし、ロシアは現在も、世界の政治経済に大きな影響を与え続けている。国際問題などでもたびたびアメリカと衝突しており、アメリカに対抗できる数少ない国となっている。
なぜロシアは、経済規模は小さいのにアメリカに対抗できるのか?
それはロシアの軍事力が大きく関係していると言える。東西冷戦中、ソ連は、西側諸国に引けを取らない軍事力を保持しており、ロシアはそのソ連の軍事力を引き継いでいる。アメリカと互角の核兵器保有国でもある。
が、その軍事力を維持するためには、それなりの経済力がなければならない。
GDP世界第11位の国が、どうやってその強大な軍事力を維持しているのだろうか?
その最大の要因は、「資源」である。
ロシアは、世界有数の資源大国である。
石油、天然ガス、石炭などのエネルギー資源、鉄鉱石・金・銅・ニッケル・水銀・アルミニウム等の鉱物資源など、産業に必要な資源のほとんどが産出されるといってもいいほどである。
冷戦中もソ連は石油産出量で、たびたびサウジアラビアを抜いて世界一となっていたが、現在のロシアも世界第2位の産出量を誇っている。天然ガスも世界第2位である。
またロシアというと、極寒の地というイメージがあるが、肥沃な土地を持つ農業の国でもある。特に小麦の生産量は世界第3位であり、自国民の消費を十分に賄える。それどころか輸出量も世界一なのだ。
魚介類などの水産資源も豊富で、森林が国土の半分を占めるため、木材資源も事欠かない。