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生き方

自分で悩みを作り続けている?「前向きになれない人」の共通点

加藤諦三(早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員)

2022年04月20日 公開 2024年12月16日 更新

「テレフォン人生相談」というラジオ番組を、半世紀以上続けてきた加藤諦三さん。そんな加藤さんのもとには多くの記者が取材に訪れるが、最初はみな、「最初の頃の相談と最近の相談とでは、どのような違いがありますか?」と質問してくるそうだ。

それに対し、かかってくる電話の悩み相談は本質的に半世紀変わっていないと語る。共通する過去と現在の悩みを、加藤さんはどう考えているのか。

月刊「PHP」は1947年に松下幸之助によって創刊され、おかげさまで本年4月、75周年を迎えました。
PHPとは"Peace and Happiness through Prosperity"の頭文字で、「繁栄によって平和と幸福を」という、松下幸之助の願いが込められています。

※本稿は月刊誌『PHP』2021年10月号より抜粋・編集したものです。

 

「きっといいことあるさ」楽しいことを考えよう

今から100年以上前に、ジョージ・L・ウォルトン(George Lincoln Walton)というアメリカの心理療法士が『Why worry?』という本を書いた。

そこに、ある言葉が紹介されている。それはキリスト生誕の300年も前に古代ギリシャの哲学者エピクロスが語った言葉で、キリストが生まれたときでさえ、すでに昔話になっていた言葉である。

彼は、次に述べる自分の哲学を実践することによって、自分の苦しみがちな性癖から解放された。彼が逆風の中でも前向きになれた哲学とは、どんなものだったのか?

「すべての悩みがなくなるような力を求めてはいけません」である。

使徒パウロが「前向きなこと、楽しいことを考えよう」と言ったのは、紀元前のことである。しかし、何千年も前から言われているのに、今もまだ人々は、これらの言葉を実現できていない。そして、多くの人が「自分はなぜこんなに辛いのか?」と考える。

もし「自分には隠された憎しみがあるから」ということが理解できれば、今よりはるかに幸せな人生を送れるにちがいない。「きっといいことあるさ」と前向きになれるだろう。

 

過去に執着してはいけない

人生をあきらめる人は、結果ばかりにこだわる人である。いつも、「ああすればよかった、こうすればよかった」と自分で悩みをつくっている。

「あのときに株を買っていたら」「あのときに『好き』といっていたら」「あのときにあんなに高い家を買っていなければ」などと1人で勝手に人生の悩みを背負っている。

そして、いつか見返してやろうと思っているうちに、人生が終わってしまう。悩むだけ悩んで、後にはなにも残らない。何事も一生懸命やるだけのことをやったら、過去を捨てて未来に向かってはばたけるのに。

「地べたにいいものあるかなー」と思っていたら、鳥は大空をはばたけない。人はやるだけのことをやっていないから、今に満足していないから、過去に執着するのである。

 

自分の人生に責任を負う

逆風で心が折れない人のエネルギーの使い方と、逆風で心が折れてしまう人のエネルギーの使い方は違う。

まず、自分の意志がなくては努力しても幸せにはなれない。努力が違ったほうに行ってしまうからである。努力しても、それが前向きの努力ではないからである。

人から嫌われないようにする努力も幸せとは結びつかない。あの人が嫌い。でもあの人に良く思われたい。見栄を張ることでエネルギーが消耗し、前向きのエネルギーがなくなってしまう。誰も信じることができないから、前向きのエネルギーを出そうとしなくなる。

そのうちに、自分に対しても否定的な態度をとることが、心の習慣になってしまう。こうした心の習慣が、前向きのエネルギーをさらに奪う。他人からの不当な扱いを受け入れているときに、私たちは気力喪失という代価を払っているのである。

他人からの不当な扱いを受け入れる心の習慣があるかぎり、前向きなエネルギーは出てこない。「自分の人生に自分が責任を負う」という前向きな心の姿勢は出てこないのである。

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「私は愛されるに値する」と何度も言い聞かせる

著者紹介

加藤諦三(かとう・たいぞう)

早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員

1938年、東京生まれ。東京大学教養学部教養学科を経て、同大学院社会学研究科修士課程を修了。1973年以来、度々、ハーヴァード大学研究員を務める。現在、早稲田大学名誉教授、日本精神衛生学会顧問、ニッポン放送系列ラジオ番組「テレフォン人生相談」は半世紀ものあいだレギュラーパーソナリティを務める。

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