「私は愛されるに値する」と何度も言い聞かせる
自分が自分を見捨てると、他人に認めてもらうことが必要になる。そうした心の習慣を壊すことがなによりも大切である。このような自分の今の不幸の原因を正しく理解しなければ、幸せにはなれないだろう。
うつ病者がどうしても明るく前向きになれないのは、無意識のうちに悔しさを抱えているからである。復讐したいからである。
しかし、人のあら探しをするエネルギーと、前向きに生きるエネルギーとは違う。怒りと憎しみは、本当は誰に向いているのか? それを考えなければ、前向きな心の姿勢は出てこない。前向きになれない人は、なにかをするのが「面倒くさい」と言うが、それは嘘である。
彼らは自分の気持ちを深く考えるのを避けている。「自分は愛されていない」という自己イメージに直面するのが恐ろしいからである。しかし、「私は愛されるに値する」と自分に何度も言い聞かせれば、新しい神経回路ができる可能性はあるのだ。
人生は躓きの連続である
人は得てして自分の人生だけが躓きの連続であると思ってしまう。しかし、はたから見れば順風満帆で生きたように見えても、それはあくまではたから見てそうであるにすぎない。本人からすれば、それはやはり躓きの連続である場合が多い。
アメリカの偉大な精神医学者シーベリーは「現実の恐怖に対しても、同じ前向きの姿勢でのぞみなさい。そして状況がどれほど否定的であれ、肯定的な要素は常にあるのだということがわかるよう自分を訓練しなさい」と言っている。
過去を忘れて、前に行け!過去に囚われて未来を失うな!である。
【著者紹介】加藤諦三(かとう・たいぞう)
1938年、東京生まれ。東京大学教養学部教養学科を経て、同大学院社会学研究科修士課程を修了。1973年以来、度々、ハーヴァード大学研究員を務める。現在、早稲田大学名誉教授、日本精神衛生学会顧問、ニッポン放送系列ラジオ番組「テレフォン人生相談」は半世紀ものあいだレギュラーパーソナリティを務める。