Case2.すぐ質問してくる!自分で考えない若手
【オトナのイラモヤ】
ある案件でデータ収集の仕事を頼んだら、「初めてなんですけど、どういうデータを調べたらいいんですか?」と返ってきた。こっちとしては、この案件を進めるのに必要そうなデータが何か、ってとこから考えてみてほしいわけで。最近の若いヤツって、とにかく答えを知りたがる。まずは一回、自分で考えてみてほしいんだけどなぁ。
【若手社員のホンネ】
なんでもかんでも自分で考えるのって無駄じゃないすか? 答えがあるなら、それ先に教えてもらったほうが、シンプルに考えて絶対的に効率いいっすよね。
「フォークボールの握りは教えないよ。必要なら見て盗めばいいんだよ」
その昔、プロ野球選手が新聞のインタビュー記事で、自分の決め球について、こう語っていた記憶があります。
これは極端な例かもしれませんが、確かに、ひと昔前は、丁寧に仕事を教えてもらえることは少なかったかもしれません。
上司や先輩から仕事を振られるときも、「とりあえずやってみてよ」といった雑なオーダーがまかり通っていました。若手は先輩のやり方を見よう見まねでやって覚えていくのが、ある意味当然でした。
もうちょっと考える習慣を身につけてほしいんだけど…。
すぐ答えを知りたがる今どきの若手社員への違和感は、「一から十まで全部説明しなきゃ分からんか…」や「ホント、言われたことしかやらないんだよなぁ…」のイラモヤ構造と、基本的には同じでしょう。
まずは、自分の仕事が捗らないという、極めてシンプルなイラモヤ。
一から十まで説明するのはめんどくさいし、言われたこと以上のことにまで気を回してほしいし、ある程度雑に仕事を振っても自分でなんとか対処してほしい。なんでもかんでも、やり方まで細かく教えていたら時間がもったいないし、なんなら自分がやったほうがよっぽど早い。そういったイラモヤです。
そしてもうひとつは、「仕事とはそうして覚えていくもんだ」という自分たちの仕事習慣からくるイラモヤ。その仕事のゴールに対する想像力、言われたこと以上のアウトプット、あえての試行錯誤。こうした仕事の進め方が重要だと思うのは、自分たちが、そうやって成長してきたという経験則があるからです。
若手にも育ってほしい。そう感じるからこそ余計にイラモヤしてしまうんですよね。
そんな中でも、「まずは一回、自分で考えてみてほしい」というのは、最も若手の成長に対する思いが強いイラモヤかもしれません。
若者の成長のためによかれと思って、あえてあまり情報を与えることなく仕事を振り出す。悩みの時間や立ち止まって考えることが、成長につながる。だから、すぐに答えをほしがるな。まずは一回、自分で考えてみてほしい。こんな気持ちを抱きながら。しかし、こうした気持ちは残念なくらい一方通行です。
<解決のヒント>まずは歩み寄り。お互いに譲歩する
このイラモヤは、前述のように、Case1.で取り上げたイラモヤと同じ構造です。そこでいくと、その解消法も、同じように、若手社員に「その意味合いやメリットをきちんと伝えること」になります。
……なんですが、実は、それが難しい場面かもしれません。
極端なくらい時間の無駄を排除しようとする合理主義者に、立ち止まって考えることのメリットを感じてもらうのは、なかなかハードルが高いと思われるからです。
無論、生産性を高めたいという若手の思考にも見習うべき点はありますし。
ここは、少し歩み寄るべきじゃないかと思うのです。ケースバイケースで、ある程度の情報やヒントを提示しながら、考えてもらうべきところに注力してもらう。こんな折衷案です。
【プロフィール】
平賀充記(ひらが あつのり :組織コミュニケーション研究家。人材コンサルタント)
同志社大学卒業。1988年、株式会社リクルートに入社。人事部門で新卒採用を担当。NY駐在員などを経て「FromA」「タウンワーク」「とらばーゆ」などの編集長を歴任。2008年からは主要求人媒体統括編集長を務め、日本における求人メディア隆盛の一端を担う。2012年、リクルート分社化で株式会社リクルートジョブズ メディアプロデュース統括部門担当執行役員に就任。2014年に同社を退職、株式会社ツナグ・ソリューションズ(現ツナググループ・ホールディングス)取締役に就任。2015年には、ダイバーシティワーカーに関するシンクタンク「ツナグ働き方研究所」を設立、所長に就任。
専門分野は人材採用、人材開発、組織開発など。人材領域を幅広く網羅した知見を持つ。「東洋経済オンライン」「読売新聞オンライン」など寄稿多数。著書に『非正規って言うな!』(クロスメディア・パブリッシング)、『神採用メソッド』(かんき出版)、『なぜ最近の若者は突然辞めるのか』(アスコム)などがある。