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住所は東京都なのに「埼玉県が突き刺さった」県境の謎

田仕雅淑(たし・まさよし,イラストレーター)

2022年07月15日 公開

練馬区(東京都)と新座市(埼玉県)の境界線がともに県境であること主張している

駅や商業施設を貫通する境界線、3つの県が集結した「三県境」...。世の中には知られざるマニアックな県境が少なからず存在する。

100を超える県境スポットを実際に訪れ、そのややこしくも興味深い裏事情とともにまとめた書籍『県境マニアと行く くるっとふしぎ県境ツアー』から、東京と埼玉の狭間にある一風変わった県境の数々をご紹介したい。(写真:田仕雅淑)

※本稿は、田仕雅淑著『県境マニアと行く くるっとふしぎ県境ツアー』(技術評論社)を一部抜粋・編集したものです。

 

埼玉県に囲まれた東京都

「県境」にはさまざまなタイプが存在する...と、いわれたら、皆さんはどのように思われるだろう。

「県境にいろんなタイプ?県境って1種類じゃないの?」普通の感性をもった方ならそう考えるかもしれない。実際、行政としての県境の機能は、県境も府境も都県境もドコも同じだ。そういう意味では1種類しかないのだが、細かく観ていくと、実にさまざまな状態の県境があることに気がついてくる。

そのなかでも一際異彩を放つのが「飛び地」の県境だ。飛び地とは、本体の自治体から切り離された場所にあり、周囲を違う自治体に囲まれた場所のことをいう。ちなみに離島は「飛び地」とはいわない。

さて、図らずもそのような場所が県境探訪の1ヶ所目になるとは、案内側としても紹介しがいがある。その場所は埼玉県新座市にある。西武池袋線保谷駅北口からコミュニティバスに乗り、武蔵野変電所の辺り(「変電所東」バス停)で下車、徒歩10分ほどで到着する。

飛び地の面積は1859㎡。「西大泉町」という町名は、この場所だけのものだ。昔は畑もあったが、今は十数軒の民家が隙間なく建つ。周囲にも住宅が並び、一見しただけではなんの変哲もない住宅地だ。

しかし県境の嗅覚を備える者には、道に置かれた消火器の区章や、ゴミ集積所の清掃事務所が練馬区の物であることにすぐ気がつくだろう。ここは埼玉県の中にある、れっきとした東京都なのだ。

なぜ東京都の土地がこのような飛び地になっているのか。一説には、この辺りを開発した不動産会社が登記を間違えたともいわれているが、練馬区も新座市もはっきりとした理由は把握できていない。

埼玉県に囲まれていても、この町の住所はもちろん東京都で、選挙区も練馬区。住民税も東京都だが、電話番号は東京03ではなく、新座市と同じ048の市外局番というのだからややこしい。

しかし県境マニアからすると、このような特殊な土地はとても貴重で憧れの場所である。住まわれている方々は特にマニアということではないだろうから、もし訪問する時は配慮を求めたい。

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埼玉県が「突き刺さった」東京都の駅

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