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生き方

「神が世界を造った」は本当? 宗教を信じない学生に神父はどう語るか

片柳弘史(カトリック司祭)

2022年08月29日 公開

 

一見、何の変哲もない茶碗に価値がある

【学生】なるほど。そういわれるとうれしいですが、自分が最高傑作とまではなかなか思えませんね。いったい、このぼくのどこが最高傑作なのか。

【神父】テレビの番組で『開運! なんでも鑑定団』というのがありますが、ご存じですか。

【学生】ええ、見たことはありますが、あれが何か。

【神父】自分が最高傑作だと信じられないという人に、わたしはよくあの番組のことを話すのです。あの番組でよくあるのは、蔵の中からおじいさんが大切にしていた茶碗が出てきた。

一見、何の変哲もない普通の茶碗、どこにでもありそうなありふれた茶碗だが、おじいさんがあれだけ大切にしていた以上、きっと価値があるに違いない。そう思って鑑定を依頼したというような話です。

【学生】まあ、そんなパターンが多いようですね。

【神父】スタジオで鑑定するうちに、専門家の顔色がだんだん真剣に変わってゆきます。そして最後に値段が発表されると、なんと100万円。「えっ、このありふれた茶碗が100万円だなんて」とみんなが驚いて終わる。

あのパターンが、わたしたち人間にも当てはまるとわたしは思っています。つまり、わたしたちは、自分で自分の価値に気づいていないのです。

 

「このゆがみ方が実にいい」

【神父】神の目から見れば、わたしたち一人ひとりが最高傑作。「いや、この微妙なボケ具合がなかなか出ないんですよ」「このゆがみ方がまた実にいい」などと、神はわたしたち一人ひとりを満足気に見てくださっている。わたしたちが自分でまだ気づいていないよさまで、神は見ていてくださる。わたしは、そんなふうに想像しています。

【学生】まあ、そんなふうに考えたら楽しくなりますね。でも、なかなかそうは信じられないな。

【神父】なぜでしょう。わたしから見て、あなたは若くて力に満ちあふれ、きらきら輝く目をしたすばらしい青年に見えます。

あなたという人は世界でたった一人、あなたしかいません。世界でたった一つだけの、神の最高傑作だといって間違いないでしょう。「わたしは駄作だ。価値がない」なんていったら、せっかく造ってくださった神さまががっかりしますよ。

【学生】うまく丸め込まれたような感じがしますが、まあいいでしょう。そんなふうにほめてもらって、悪い気はしませんから。今日は、キリスト教の1番基本的な考え方を教えてくださってありがとうございます。うちに帰ってよく考えてみます。

 

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