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生き方

「争いをやめない人間の矛盾」に疑問を呈した松下幸之助の真の願い

松下幸之助

2022年10月06日 公開

 

人間にとって「真の幸せ」「真の平和」とは

この100年のあいだには、世界の各国が互いに相争ういわゆる世界大戦というものが再度にわたって行われています。日本一国だけを考えてみても、4回の戦争を経験しています。勝った場合もあれば、負けた場合もありますし、またその原因というものもいろいろありましょう。

しかし、こうした経験をしてきたことは事実です。そのように日本だけでなく、多くの国々が世界大戦のほかにも互いに幾度となく戦争をくり返し、そのつど無数の人々があるいは傷つき、あるいは命を失うという悲惨な姿に陥っているのです。これは、人間の真の幸せとはとうてい考えられません。

さきにも述べたように、一方には人間が地下を走り、空をかけ、月にまで到達するというほどの進歩があります。

しかし、世界の人口40億のうち、その4分の3余りは貧困な生活をしており、何億という人々が飢餓に瀕しているといわれています。物の面だけを考えてみても、まことに不調和な状態がそこに見いだされるわけです。

世界的な大戦争というものは、幸いにして第2次世界大戦以後には起こっていません。しかし、局地的な戦争、戦闘あるいは悲惨な紛争などは、国際連合はじめ、世界の多くの人々の願いと努力にもかかわらず、その間もアジアでアフリカで、また東欧で、中近東で中南米で絶えまなく生じ、今なお続けられています。

そして、それによって何百万、何千万という多くの人々が、あるいは倒れ、あるいは傷つき、家族を失い財産を失うなどの不幸に陥っています。

しかも、当面のところ世界的な大戦争がない、いわば全体としての平和的な姿であるというものの、そのよってきたるところは、1つには核兵器に対する恐怖からだといわれています。

原子爆弾、水素爆弾というものが発明され、そのわずか1発で大きな都市を破壊し、何十万、何百万という人々の生命が奪われる危険も出てきました。そして今日までにつくられ蓄えられている核兵器の総量は、世界じゅうの人々を絶滅させうるものであるといわれています。

そこから、このような人間を滅ぼしかねない大量殺戮兵器の出現によって、人間はその恐ろしさにおびえ、平和を保っていくようになるだろうという考え方も出てきています。

確かにそれも1つの見方でしょう。また、事実この20数年間、世界の各所で頻発した戦争がいずれも局地的なものにとどまりえたのは、いわゆる核の抑止力、つまり原水爆に対する恐怖によってであるともいわれています。

しかし、もしそのように核兵器の怖さによって、やむをえず大規模な武力の行使を抑えているとするならば、そういう姿をはたして真の平和といえるでしょうか。また、そういうようなことでいつまでも平和を保っていけると安易に考えていいものでしょうか。

 

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