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『婚活食堂』と『孤独のグルメ』 作者同士が語る“食を通じた人間模様”の面白み

山口恵以子(作家)、久住昌之(漫画家、ミュージシャン)

2022年11月18日 公開

 

波紋のように広がっていく物語

【久住】「婚活食堂」は登場人物がすごく多いですよね。舞台はほとんど店の中で、いろいろな客が集まってくる。それを見事に動かして捌いて物語が成立している。

【山口】仕立ては「寅さん」と同じなんです。寅さんを囲むファミリーがいて、寅さんがマドンナに恋をして振られる。これの繰り返し。「寅さんの恋愛」という石を投げたら、ファミリーの波紋がきれいに広がって物語が生まれる。「婚活食堂」もほかのシリーズも同じです。石を投げて、物語を広げていく。

【久住】ぼくは、そういうふうに物語を組み立てるということがないし、結論に向かって進めていくのが苦手なので、お話をちゃんと作れる人ってすごいと思います。

【山口】私は物語を作るのが大好きで、作家になったんです。最初は漫画家、次は脚本家を目指しましたが、結論から言えば、「物語」を作りたかった。

漫画は絵とセリフで作る物語。脚本はト書きとセリフで作る物語。小説は文章で作る物語。あれこれ手段は変えたけど、「物語を作る」という1本の糸に導かれてやってきたのだと思います。

【久住】ぼくは、漫画も音楽も「みんなで作る」ことが好きなんです。例えば、原作が漫画になったとき、「おおー、こんな描写になるのか!」という驚きがあるとうれしい。

自分が頭で考えたものより、もっと面白いものを、第三者の力を借りて、生み出したいんです。だからまず一緒にやる誰かを喜ばせたい。1人じゃなくて、みんなで面白いことがしたいし、作りたいんです。

【山口】「誰かのために」というところがステキですね。私も食堂のおばちゃんだったころ、お客さんに喜ばれるのが一番うれしかったもの。いまも、読者の方に喜んでいただきたいと思って書いています。

【久住】こんど、一緒に何かやれたらいいですね。

【山口】うれしい! ぜひ、やりましょう。

 

【山口恵以子】
1958年、東京都江戸川区生まれ。会社勤めのかたわらドラマ脚本のプロット作成を手掛け、2007年『邪剣始末』で作家デビュー。13年『月下上海』で松本清張賞を受賞。おもな著書に「婚活食堂」「食堂のおばちゃん」シリーズ、『ゆうれい居酒屋』『恋形見』『いつでも母と』『さち子のお助けごはん』などがある。

【久住昌之】
漫画家・ミュージシャン。1958年、東京都三鷹市生まれ。81年、泉晴紀と組んだ「泉昌之」名でマンガ家としてデビュー。99年、実弟の久住卓也と組んだマンガユニット「Q.B.B.」で、「中学生日記」で文藝春秋漫画賞を受賞。谷口ジローと組んだマンガ「孤独のグルメ」が、2012年にTVドラマ化され、22年10月にはseason10が放映される。劇中全ての音楽の制作演奏、脚本監修、最後にレポーターとして出演もしている。

 

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