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平均年収2000万を達成した企業の営業部が徹底している“1つの鉄則”

三坂健(株式会社HRインスティテュート代表取締役社長)

2023年03月13日 公開 2024年12月16日 更新

平均年収2000万を達成した企業の営業部が徹底している“1つの鉄則”

激変する今の時代を生き残るには、戦略的思考が必要不可欠。目の前にある問題を解決しているだけでは、イノベーションを起こすことは不可能だ。戦略的思考の基本である「アウトサイド・イン」の考え方について、三坂健氏が解説する。

※本稿は、三坂健著『戦略的思考トレーニング 目標実現力が飛躍的にアップする37問』(PHPビジネス新書)から、一部抜粋・編集したものです。

 

戦略的思考の基本は「アウトサイド・イン」

本稿では、戦略的思考を実践するうえで必要な考え方について、深掘りをしていきたいと思います。キーワードは「アウトサイド・イン」です。

アウトサイド・インとは「外から内」という意味です。聞き慣れない言葉かもしれませんが、実際に関わった経験をもとにすると、成功している企業や事業の多くがアウトサイド・インの思考を実践しています。

反対に、失敗するケースに多く見られるのが「インサイド・アウト」、つまり「内から外」の思考プロセスです。例をあげてみましょう。

【演習問題】

あなたは、誰かにお勧めの飲食店を紹介し、そこに「行きたい!」という気持ちになってもらって、実際に足を運んでもらうことを目標としています。どのようにすればいいでしょうか?

まず、「どんなお店を紹介しようかな」と考えた人がいらっしゃるかもしれません。その方は、その時点で、「内から外」のインサイド・アウト的な思考をしています。

目標が「誰かにお勧めの店に足を運んでもらうこと」だとすると、どんなお店を紹介するかは、優先するべきことではありません。それ以上にこだわるべきは、「誰に」紹介するか、ということです。

最も手っ取り早いのは、「お腹がすいてしょうがない人」で、かつ、「お店に行くことができるお金を持っている人」です。そうだとすると、次のようなことが考えられるのではないでしょうか。

・前日の飲食が制限されていた人間ドック終わりの人を病院の前で待ち構えて、その人に近くにあるリーズナブルでおいしい飲食店を紹介する
・減量明けのスポーツ選手に紹介する
・朝から飲まず食わずで仕事をしていた同僚に、ねぎらいの意味を込めて紹介する

あなたがこのように考えるタイプであれば、「外から内」の思考、すなわち、アウトサイド・インの思考をしているのかもしれません。

経営や事業において大切なのは、「何を作るか」「何を売るか」の前に、「どんな目標を実現したいのか」「どんな状態に辿り着きたいのか」を考える視点です。

「内から外」のインサイド・アウトの発想だと、目的や目標、そして周辺の環境や相手の存在が忘れ去られ、自社の持っている商品やサービス、技術やナレッジから考えてしまうことになりがちです。

もちろん、自社の持っている商品やサービス、技術やナレッジはとても重要で、最終的にはそれを起点に考えることになるのですが、考える順序を誤ってはいけないということです。

また、「内から外」のインサイド・アウトの思考では、今あるもの、見えるものから考えるために、思考に制限が生まれやすい傾向もあります。

一方、「外から内」のアウトサイド・インの思考は、今あるもの、見えるものはいったん横に置き、目的・目標を軸に考えることで、制限なく、柔軟かつ戦略的に考えることにつながります。

まずは、自分がアウトサイド・インの思考プロセスを備えているか、意識できているかを振り返ってみましょう。

 

「彼を知り、己を知る」の順序で考えよう

引き続き、アウトサイド・インで考えるということを解説していきます。アウトサイド・インには、以下の3パターンがあります。

・「目標から戦略、そして、戦術」の流れで考える
・必要なリソースを洗い出して、「ないもの」「あるもの」を考える
・「外部環境から内部環境」で考える

反対に、インサイド・アウトは、

・目の前の問題、課題から考える
・今あるリソースから考える
・内部環境から考える

ということになります。戦略的思考は目標を実現するための思考ですから、アウトサイド・インで考えることがベースとなります。

ここで、問題です。

【演習問題】

日本でトッピングの種類とボリュームの多さで成功しているカレーチェーンがロンドンでの展開を考えています。成功するために、何をすればいいでしょうか?

・日本で売れ筋のトッピングをそろえて展開する
・ボリュームを売りに、コスパのよさをPRして展開する
・日本発のカレーチェーンということで、日本人が多く住んでいるエリアから展開する 

これらのアイデアはすべてインサイド・アウトの視点に偏っています。「今あるもの」「見えているもの」から考えている、ということです。もちろんこの視点も必要ですが、戦略的に考えるためには、アウトサイド・インの視点から考えるクセをつけることが必要です。

では、どのように考えるべきでしょうか。 

・まず「何のために展開するのか」「いつまでに、どの程度の目標を実現したいのか」を確認する
・ロンドンで好まれているカレーのスパイスや味はどんなものかを調べる
・ロンドンでカレーを特に多く食べる人の属性を調べ、そこをターゲットにする
・ロンドンで好まれている競合店を調べる
・ロンドンの人々から見たときの日本のイメージを踏まえ、特徴を出す

このように、アウトサイド・インは、常に目標や結果から逆算する思考だといえます。考える順序としては、次のようになります。

目的 → 目標 → 市場 → 競合 → 自社

何より大切なのは、まず目的。そして目標を押さえて、現状とのギャップを明らかにすることから考える。そのクセをつけてください。

自社の特徴やこれまでの実績はいったん横に置いて、市場や競合の観点から考える。この順序を徹底することです。このようなプロセスを踏むことが、戦略的な思考を生み出します。

『孫子』に「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」という言葉があるように、まず知るべきは「相手」です。相手のことがわかっていないのに、戦略となるシナリオを描くことはできません。

高収益企業として知られるキーエンスは、センサーメーカーとして、国内のみならず、世界で名だたる成果をあげています。経常利益率は50%を超え、社員の平均年収も約2000万円と、驚異の収益率を誇っている企業です。どうして、このような成果をあげることができるのでしょうか。

キーエンスが提供するセンサーを欲する企業は主に製造業で、製造ラインを安定的に動かすことでモノを製造し、出荷して、収益をあげる企業です。大企業向けの営業活動ももちろんしていますが、特徴的なのは、日本に多数存在する中小企業向けの営業活動です。

中小企業の社長・経営者は、常にバランスシートや損益計算書の中身を気にしていて、「もっと利益率をよくしたい」と考えて経営をしています。

そこでキーエンスは、センサーの特徴だけを説明するのではなく、「センサーを入れることで具体的にどの程度儲かるのか」ということまで数値で示します。そして、「その儲け分を使って、さらに投資をすることで、これだけの生産性向上を図ることができる」という提案を重ねていきます。

中小企業の経営者は、必ずしもセンサーが欲しいのではなく、センサーを通してもっと経営効率を高め、利益を捻出したいと考えているのだということをしっかりと理解し、その期待を実現する営業活動を行うように教育されているのです。

「そんなことは当たり前」と思われるかもしれません。しかし、その「当たり前」を徹底的にできているのがキーエンスの強さであり、すごさであるといわれています。

なぜ実践できているのかといえば、自分の給与の出所を各担当者がよくわかっているからではないでしょうか。

お客様の経営数値を改善することがさらなる投資につながり、結果的に商品が売れて、自分の給与に反映される。この仕組みを理解することで、「相手」に対する関心が高まり、「相手」をよく調べ、「相手の喜ぶことをやろう」という気持ちになる。

こうして、キーエンスの戦略と現場の行動が一致しているのでしょう。

己を知る前に、相手を知る。このことは、目標を実現するシナリオを描くうえで欠かせません。

 

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