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「メンタルダウンしていた部下」に自信を取り戻させた上司のひと言

前川孝雄(株式会社FeelWorks代表取締役)

2023年06月13日 公開 2024年12月16日 更新

「メンタルダウンしていた部下」に自信を取り戻させた上司のひと言

自律的に仕事に取り組まない「指示待ちの部下」に悩む上司は少なくない。しかし、部下の自律性を奪っているのは上司に原因がある可能性が高い。部下を自律性高く育てるにはどうしたら良いのか。前川孝雄氏が解説する。

※本稿は、前川孝雄著『部下全員が活躍する上司力5つのステップ』(株式会社FeelWorks)より一部抜粋・編集したものです。

 

部下の自律性を高め、「切磋琢磨」を促す

上司の悩みとして多く挙げられるのが、部下に自律性がないという問題意識。部下が指示待ちで、自ら動いてくれない。「これはどうすればいいですか?」「あれは誰に連絡すればいいですか?」と何事も指示を仰ぎに来る。

しかし、よくよく上司にこの悩みの真因を掘り下げてもらうと、実は「失敗しないかと部下を信用できていなかった」「部下の仕事の結果は気にしても、本人の気持ちには無関心だった」「部下に仕事を任せきれていなかった」などの意見が出始めます。

皆さんは、心のどこかで「自分の最終判断なしに、チームの仕事の質は担保できない」「自分の考えや、やり方が正しいはずだ」という固定観念を持っていませんか。また、部下独自のアイデアや、自分と異なる仕事の進め方を退けてはいませんか。

それでは、部下は自律的に動きません。こうして多くの上司は、本来望まれる支援職ではない管理職になってしまっているのです。

目指すべきは、部下一人ひとりが自ら動き、互いに啓発し合い切磋琢磨する組織風土です。そのために上司は「任せた仕事の当事者は部下本人」であると心得て、部下の自律性を促す育成方法を講じることです。

 

キャリアの小さな階段をつくる

仕事の目的と工夫の余地をセットで任せ、部下本人が仕事の当事者であることを自覚すると、部下は自然と自分の仕事の責任を負うようになり、自発的に仕事のやり方を工夫し始めます。

自らの工夫がうまくいかなければ、原因を振り返り反省する姿勢も出てきます。自分自身が考えた仕事の仕方ですから、失敗しても上司や周囲の人のせいにせず、何とか自分で改善しようと考えます。

部下自身による改善を促すには、失敗のリスクがない簡単な仕事ばかりではなく、「少し背伸びが必要な仕事」を上手に任せることが有効です。これを私は「3割ストレッチの法則」と呼んでいます。

部下育成に不慣れな上司が部下に仕事を任せるときは、手取り足取り教えるか丸投げかになりがちです。手取り足取り教えれば、部下はミスなく仕事を完遂できます。

しかし、それでは部下はいつまでたっても上司の指示に従う作業者のままです。「次はどうすればいいですか」と、上司に指示を仰ぎ続けかねません。

一方の丸投げだと、経験の浅い部下なら何からやれば良いかが分からず仕事は止まったままとなり、結局周囲のフォローが必要です。これも、部下の成長につながりません。

そこで、仕事の任せ方の王道は、手取り足取りでも丸投げでもない「キャリアの小さな階段づくり」です。1年がかりの仕事なら、まず1年後に何を達成したいかゴールイメージを共有します。

その上で、1カ月後にどこを目指すか、それをクリアしたら2カ月後には何を達成するかと、中期~短期的なゴールを順に設定します。一歩ずつ階段を上がれるようにするのです。

 

プロセスは裁量に任せながら、妥協は許さない

部下に仕事を任せると、難しい局面のときに部下が妥協しようとすることも少なくありません。うまくいかない仕事のやり方は、適切に変えるべき場合もあります。

しかし、自分が一度約束した目標の実現を、安易に諦めさせてはいけません。上司としては「あなたは当事者として、やると言ったよね」と厳しく迫るべきです。仕事のプロセスについては裁量を持たせ自主判断に任せますが、約束した目標に対して安易に妥協することは許してはいけません。

これは、例えば育児や介護などと両立しながら働く社員に対しても同じです。幼い子どもは体調が不安定なことも多く、「子どもが急に熱を出してしまい、今日は仕事ができません」という場面はよくあります。そのようなとき、「構わないから、今日は早く帰っていいよ」「在宅で仕事をしてもいい」と伝え、柔軟に対応します。

しかしこれは、「任せた仕事をやり遂げなくてよい」ということではありません。休んだり在宅で仕事をした分、どう挽回するかは本人に考えさせ提案させます。

自分でリカバリーできない場合は周囲の力を借りても構いませんが、それも含めて自分の仕事。上司に「どうすればいいですか」と、依存はさせないことです。

「上司が最終的に巻き取ってくれて何とかなった」ではなく、「大変だったけれど、周囲の協力も得ながら自力でやり遂げた」とすることが、結果として部下本人の自信と成長にもなるのです。

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ステップを踏んだ伴走型の支援で、部下の成長を促す

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