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あなたは仕事を楽しんでいますか? 「入社10年目」の羅針盤

岩瀬大輔(ライフネット生命副社長)

2012年07月02日 公開 2024年12月16日 更新

あなたは仕事を楽しんでいますか? 「入社10年目」の羅針盤

「面白い仕事、やりがいのある仕事はいったいどこにあるのだろう」「そもそも楽しい仕事なんてあるのだろうか」。このように悩む若いビジネスパーソンは多い。

しかし、ライフネット生命 副社長の岩瀬大輔氏は、「そもそも仕事は、楽しくないのが当たり前」と言い切る。自分がいかに仕事を楽しむかを大切にすべきだという岩瀬氏の考えに迫る。

※本稿は、岩瀬大輔 著『入社10年目の羅針盤』(PHP研究所)より、一部抜粋・編集したものです。

 

楽しい仕事はない。でも、楽しく仕事をしている人がいるのはなぜか

あなたは今の仕事を楽しんでいますか?

僕はボストンのハーバード経営大学院に留学している時に、今後の人生の指針となる英文に出会いました。

Knowing “Just Enough”

ハーバードでは、「キャリアを通して何を実現できれば“成功した”といえるのか?」「あなたにとっての幸せとは?」といった、少し青臭い「青春の問い」のようなテーマをみんなでよく議論していました。

授業でもさまざまな文献を読んだのですが、その中の1つ、ハーバードの教授の著書の中に、Knowing “Just Enough”─「これで十分、満足したことを知る」という言葉があったのです。「足ることを知る」と置き換えてもいいでしょう。

何をもって自分が満足するか、それを知っている人こそが幸せになれる。逆に自分がどこで満足するかを知らない人は、たとえどれだけ物質的に恵まれても心は満たされず、永遠に幸せをつかむことができない。そんなふうに解釈できる言葉です。

当時、僕はまだ卒業後の就職先が決まっていなかったので、「自分はこれからどんな仕事をしようか。いったい何を達成することができたら自分は満足できて、よい人生だったと思えるだろうか」といったことを熟考していました。

授業中は会計やマーケティングなどの勉強に忙しかったのですが、自分がどう生きていくかを決めることは、そのようなことよりも大切なことではないかと思えたのです。

しかし今の日本には、このような人生の目標を設定しないまま過ごしているビジネスパーソンが多いように感じます。口をついて出てくる言葉は、「仕事がつまらない」「やりたいことができない」といった不満ばかり。

この本を手に取ったあなたばかりではなく、あなたの周りにも「仕事がつまらない」という悩みを抱えている人はいるのではないでしょうか?

理由はいろいろと考えられますが、ひと言でいえばそれはやはり、「足ることを知らない」からであるように思えます。どんなにいい仕事をしても、どんなに高い給料をもらっても、ただ上を目指し続けているのであれば、いつまでたっても満足感を得ることはできません。

最初は楽しい仕事でもそのうちつまらないと感じてしまうはずです。貪欲に挑戦する姿勢はもちろん大事ですが、それでも自分がどこに向かっているかを明確に意識しなければ、自分を見失ってしまうでしょう。

何をもって満足すべきかを知らない人は、属している会社の環境が悪いのではと考え、そのうち転職を経験すると思います。そういう人は結局、転職先でも自分の仕事に満足できず、つまらないと感じるはずです。

何度転職しても同じことの繰り返し。その結果、給料は上がらず、スキルも身につかず、人間関係も構築できず、ますます仕事がつまらなくなるという悪循環。

「面白い仕事、やりがいのある仕事はいったいどこにあるのだろう」「そもそも楽しい仕事なんてあるのだろうか」。そんなふうに思い悩むことでしょう。

でも僕は、はっきりとこういうことができます。

「仕事なんてそもそも、楽しくないのが当たり前」

多くの人は、「楽しい仕事」がどこかにあると思っていて、それを探そうとしているように見えます。しかし求人情報を見て探したところで、そんなものはありません。

「きっとどこかにある」と思ってはいけません。少し大げさにいえば仕事というのはいつも、面倒なこと、嫌なことの連続です。自分が志望する会社に就職したはずなのに、仕事がつまらない、やりがいを感じられないという人は、まずこの大前提に気づくべきでしょう。

それでも実際には、仕事を楽しんでいる人はいます。僕は今、ライフネット生命の副社長という仕事を楽しんでいるし、周りを見ても仕事を楽しんでいる人はたくさんいます。

「楽しい仕事はないといったのに、仕事が楽しいとはどういうことだ」と、矛盾を感じるかもしれません。しかし、僕がいいたいのはこういうことです。

「この世に楽しい仕事とつまらない仕事があるわけではない。すべての仕事は気の持ちようによって楽しくもなるし、つまらなくもなる」

楽しい仕事がどこかに転がっているわけではないのです。仕事が楽しくなるかどうかは、自分自身の問題なのですから。

 

20代・30代のビジネスパーソンに向けた公演の中で

僕はライフネット生命の副社長を務める傍ら、北は北海道、南は沖縄まで、全国各地を講演行脚しています。多い時で週5回。2011年は100回近くの講演をしました。

第一の目的は自分の会社のことを広く知ってもらうことなのですが、「保険の話をしてください」というオファーよりも、「仕事について悩んでいる20代・30代のビジネスパーソン向けに話をしてください」と頼まれることのほうが増えています。

ありがたいことに、最近はどの講演会場も満席に近い状態が続いています。終身雇用・年功序列社会が終焉する中で個人の働き方も一様ではなくなり、これまでのように「右へ倣え」さえしていれば、誰でもそこそこの幸せを手にすることのできる時代ではなくなっています。そんな中で、働くことの意味を見出せない人が増えているのでしょう。

講演のあとには、皆さんからの質問も受け付けています。

やりたいことを見つけるにはどうしたらいいか。仕事がつまらない、楽しく働けるコツはないか。いくら頑張っても給料が上がらない。将来のことを考えるとこのままでいいのか不安になる。

上司に怒鳴られてばかりで会社に行く気もしない。部下が自分について来ない。どうしたらプレゼンがうまくなるか。転職はどういった基準ですべきか。起業したいけれど、何から始めればいいのか分からない。

聞いてみると、人それぞれの事情、悩みがあるのだと思い知らされますが、「仕事がつまらない」という悩みについては、率直に「もったいないな」と思います。

先ほども述べたように、「楽しい仕事」があるわけではなく、そんなところで躓 <つまず> いていては若いエネルギーと時間を無駄に費やしているだけではないかと思うからです。

では、どうすればいいのでしょうか。

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