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仕事

あなたは仕事を楽しんでいますか? 「入社10年目」の羅針盤

岩瀬大輔(ライフネット生命副社長)

2012年07月02日 公開 2022年12月22日 更新

岩瀬大輔

楽しく働くための3つの仕事観

先ほどの「足ることを知る」につながるのですが、それは、自分が仕事をいかに楽しむか、ということに尽きると思います。仕事がつまらないという人は、そもそも「働く」ということに対する考え方・姿勢が間違っているのかもしれません。

それでは何をしてもつまらなくて当たり前です。一度、自分が何を大事にして働いているのか、整理してみるとよいでしょう。

僕の場合は、(1)何をやるかよりも「誰とやるか」、(2)自分にしかできない「何か」はあるか、(3)社会に「足跡」を残したい。この3つの仕事観を大事にしてきました。1つずつ解説していきましょう。

(1)何をやるかよりも「誰とやるか」

大学時代、司法試験に合格した僕は弁護士になるつもりでいましたが、結局そのような選択はしませんでした。

「どうして? もったいないよ」「岩瀬は変わっているな」と言われたものですが、いろいろな法律事務所を訪問した僕の個人的な感想としては、みんなとても疲れた顔をしていて、精気が感じられない。そして何より、楽しく仕事をしている感じが伝わってこなかったのです。

自分がなりたいのはそんな大人ではない。

そう思った時にインターンとして働いたボストン・コンサルティング・グループ(BCG)では、ウイットに富んだ人たちが活き活きと働いている。

当時は今ほどコンサル会社が学生に認識されておらず、「その会社、何?」と聞かれるほどでしたが、それでも新卒でそこに入社したのは、「活き活きと働く人たちと仕事をしたいな」と思ったからです。

ライフネット生命を始める時も、最初に「生保をやる」と決めていたわけではありません。投資家の谷家衛さん(あすかアセットマネジメントCEO)に「新しいことをやろう」と言われて、「この人と何かやったら面白そうだな」と感じたから、起業の道を選んだのです。

仕事を選ぶ際には、「何をやるか」ということはなかなか自分では選べないものです。それに比べ「誰とやるか」ということなら、ある程度は選べます。

僕はいろいろ縁あってネット生命保険事業をやっていますが、今一緒に働いている仲間たちとであれば、まったく別の仕事であったとしても、協力し合いながら楽しくクリエイティブに取り組めるだろうなと思っています。

(2)自分にしかできない「何か」はあるか

どんな世界でも、スペシャリストは貴重な存在です。「これなら誰にも負けない」「こういうことなら自分は何かひと工夫できそうだ」という特技を活かせる仕事なら、それはその人に合った仕事だということができます。働くのも楽しいに違いありません。

でも、「そんな特技はない」「特技はあるけど、会社にはもっとすごいヤツがゴロゴロいる」なんていう人もいるでしょう。特に大企業においては、従業員が個性を発揮するのはなかなか難しいことです。

そういう意味では、僕は小さな会社を転々としてきてよかったと思っています。小さな会社であればあるほど、「この中では自分にしかできない」ということが増えます。

ライフネット生命を立ち上げた時などは、社長の出口治明と2人だけでした。業界の経験や知識でみれば出口のほうがはるかに優位ですが、僕のほうが若いのでインターネットの使い方には詳しい。そうなると、インターネットに関しては僕は頼られる存在になるわけです。

最近は学生が大企業を志望して、名もない中小企業は求人を出してもまったく人気がないといわれますが、小さな組織だからこそのメリットが必ずあります。

大会社で働くということは、大きな機械の歯車になるということを意味します。果たして、今、就職活動で大企業ばかりに目が向いている学生たちに、その覚悟があるのでしょうか。

自分らしく、楽しく、活き活きと働きたいのであれば、僕は小さな、伸び盛りな会社を勧めます。小さな会社では毎日どこに行くか、何が起こるか分からない。

突然面白そうな仕事がまわってくる。いろいろな人に会える。若いうちからさまざまな経験を積むことができ、自分がかけがえのない存在として職場で輝くことができます。

(3)社会に「足跡」を残したい

若い時には、「人間は何のために生きているのだろう」といったことを考えるものです。僕も学生時代には多種多様なことに思慮をめぐらせていました。

その時に思ったのは、「人間はみんな、いつか死んでしまう。儚いものだな」ということです。

今は当たり前のように生きている自分も、平均寿命を全うするとしたら残された時間はあと50年。1年という時間はあっという間に過ぎてしまいます。

そのうえ体感時間というものは年齢を重ねるほど加速度を増していきますから、現在36歳の僕は、実質的にはもう人生の半分を過ぎているといえるのかもしれません。

僕は死ぬまでに、自分が生きた足跡をこの社会に残していきたいと思っています。いつか死んでしまっても、誰かに覚えていてもらえるような仕事ができれば、生きた意味があったのだろうと思います。

そういう意味では、僕は教師という仕事は素晴らしいものだ思います。みんな小学校時代の担任の先生のことを覚えています。たとえ嫌な先生でも、その印象は強く残っているものです。

そんなふうに、何百人、何千人もの生徒の記憶に刻み込まれていく生き方は、なんて素晴らしいのだろうと思います。

僕が今やっている仕事は教師とは違いますが、世の中にこれまでなかったものをつくって後世に残すことはできます。その足跡が、僕が生きた証になるのではないかと思います。そういう仕事をこれからもしていきたいと思っています。

 

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