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小学生が「日本のジェンダーギャップ指数」を見た反応は? “無意識の思い込み”を学ぶ授業から

PHPオンライン編集部

2026年01月21日 公開 2026年01月21日 更新

小学生が「日本のジェンダーギャップ指数」を見た反応は? “無意識の思い込み”を学ぶ授業から

東京都が令和4・5年度に実施した調査では、「男性だから」「女性だから」と思うことがあると答えた割合は、小学生(5・6年生)で約4割、高校生(1・2年生)では約5割にのぼり、成長とともに性別による無意識の思い込みが強まる傾向が見られました。

こうした背景を踏まえ、東京都は子どもたちの将来の選択肢を広げる取り組みの一環として、2025年12月18日にあきる野市立前田小学校と連携し、性別による「アンコンシャス・バイアス」をテーマにした授業の機会を設けました。性別による無意識の思い込みに気づくことで、子どもたちが将来の選択肢や可能性を、より自由に考えられるようになってほしい――そんな狙いがあります。

本記事では、教室で交わされた子どもたちの声や、授業を通して見えてきた先生の思いを取材しました。

 

男性らしい・女性らしい仕事って?

あきる野市立前田小学校での「無意識の思い込み」をテーマとした授業

今回、授業が行われたのは5年生と6年生のクラスです。主に6年生の授業を見学しました。冒頭に行われたのは、提示された人物の写真から職業を推測するワークで、教室には子どもたちの率直な反応が次々と飛び交いました。

あきる野市立前田小学校での「無意識の思い込み」をテーマとした授業

「幸せそうな顔をしているから社長かな」「チャラそうな男の人はだいたいアパレル」など、見た目の印象や性別から職業を推測する声が上がります。5、6年生という年齢は、すでに自分たちの中に偏見が芽生え始めている、その境目にあることがうかがえました。

あきる野市立前田小学校での「無意識の思い込み」をテーマとした授業

続いて、授業を担当した主任教諭の犬伏克代先生が「ネイリストはどんな人が就く職業に見える?」と問いかけると、「ギャル」「女の人」といった具体的なイメージが返ってきます。また、「単身赴任はどんな人を想像する?」という質問に対し、女性が当てはまると考えた児童は、クラス24人のうち3、4人にとどまりました。

「男性らしい職業」「女性らしい職業」の上位5つ

さらに、東京都の調査で高校生が答えた「男性らしい職業」「女性らしい職業」の上位5つの結果が示されると、「予想通り!」といった納得の声が複数上がります。身近な職業やライフスタイルについて、「これは男性のもの」「これは女性のもの」といったイメージが、すでに形づくられている様子が見て取れました。

こうした状況を踏まえ、犬伏先生が「男性らしいと思う職業、女性らしいと思う職業は、それぞれ交差しても良いと思いませんか?」と問いかけます。すると、多くの子どもたちが「良いと思う」と深く頷き、同意を示していました。

あきる野市立前田小学校での「無意識の思い込み」をテーマとした授業

「仕事の向き不向きに、男女の差はあると思うか」という質問には、24人中22人の児童が挙手しました。多くの子どもたちが、性別による適性の違いを感じていることが分かります。

また、日本の「ジェンダーギャップ指数」(※)が世界でどの程度だと思うかを予想してもらうと、「トップ5くらい?」と期待を込めた声も上がりました。しかし、実際の順位が148カ国中118位(2025年発表)であることが伝えられると、教室には驚きの声が広がります。

さらに、日本の女性管理職の割合が全体の約16.3%(2025年発表※※)にとどまっていることや、フランス(38.9%)やアメリカ(42.9%)と比べて大きな差があることが示されると、子どもたちはいっそう意外そうな表情を浮かべていました。

「日本って、意外と下なんだ......」。そんな空気が教室に流れ、子どもたちのものの見方が、少し変わったようにも感じられました。

※ジェンダーギャップ指数:スイスの非営利団体・世界経済フォーラムが毎年発表する報告書「グローバル・ジェンダーギャップ・レポート」に基づいて算出される指数。146の国と地域を対象に性別による格差を「経済」「教育」「健康」「政治」の4分野、14項目から測定しており、各国の男女平等に関する状況を数値化する。

※※内閣府男女共同参画局「令和7年版男女共同参画白書」

 

何が当たり前かは人それぞれ。他人のやりたいことを笑わない

あきる野市立前田小学校での「無意識の思い込み」をテーマとした授業

授業が進むにつれ、子どもたちが考え込む場面も増えていきました。後半では、自分たちの中にある「アンコンシャス・バイアス」を見つめ直すワークが行われます。

子どもたちからは、「高齢者だから」「日本人だから、外国人だから」といった理由で、これまで偏った見方をしていたのではないか、という意見も寄せられました。性別に限らず、年齢や血液型、国籍など、身近な経験を手がかりに、さまざまな偏見へと思考を広げていく様子がうかがえます。

意見を交わすうちに、アンコンシャス・バイアスとは何かを、子どもたちなりの言葉で捉え始めているようにも感じられました。

あきる野市立前田小学校での「無意識の思い込み」をテーマとした授業

最後に、アンコンシャス・バイアスを学んだうえで、「将来をどのように生きていきたいか」を問いかけられると、子どもたちからは次のような声が寄せられました。

「決めつけずに、『そんなこともあるか』と思える人でいたい」
「好きな仕事に就きたいし、好きな仕事に就けない人を支えてあげたい」
「何が当たり前かは人それぞれだから、やりたいことを笑ったりしてはいけないと思いました」
「『男だから』『女だから』という概念を捨てたい」

こうした声からは、アンコンシャス・バイアスを知ることが、子どもたち一人ひとりが自分や他者の可能性を見つめ直し、それを引き出すきっかけになっているようにも感じられました。

 

多様性を理解している世代だからこそ、伝えるのが難しい

あきる野市立前田小学校での「無意識の思い込み」をテーマとした授業
あきる野市立前田小学校6年生・江藤千尋さん

授業後に代表の子どもたちに話を聞くと、6年生の江藤千尋さんは、今回の授業を通してアンコンシャス・バイアスの存在に気づくことができたと教えてくれました。

あきる野市立前田小学校での「無意識の思い込み」をテーマとした授業
あきる野市立前田小学校6年生・薄井乃愛さん

同じく6年生の薄井乃愛さんは、「身長が小さいから」「大きいから」といった理由で、自分でも知らず知らずのうちに、できることを決めつけていたことに気づいたと話します。

2人の言葉からは、人を決めつけずに見ることを大切にしようとする一歩を踏み出した様子が伝わってきました。

6年生の授業を担当した犬伏先生にも話を聞きました。今回の授業は、アンコンシャス・バイアスが身近なところに潜んでおり、自分自身もその影響を受けているかもしれない、ということに気づいてほしいという思いから構成したといいます。「物事を一面的に捉えるのではなく、広く見られるようになることを意識しました」と話してくれました。

あきる野市立前田小学校での「無意識の思い込み」をテーマとした授業
あきる野市立前田小学校主任教諭・犬伏克代先生

子どものうちからアンコンシャス・バイアスについて考える意義については、「自分の可能性を広げるだけでなく、日常生活の中でより良い人間関係を築いたり、相手と円滑にコミュニケーションを取ったりするための"土台"になるもの」だと語ります。その一方で、「今の子どもたちは『男だから』『女だから』ということをあまり気にしない子が多い」とも感じているといいます。

授業後の反応については、「最初は『自分には思い込みなんてない』という声も多かったが、終盤には『もしかしたら違うかも』と感じ始めてくれた」と振り返ります。

今の子どもたちは感覚として多様性を理解しているからこそ、無意識の思い込みに気づきにくい側面もある中で、「アンコンシャスな部分を"自分事"として実感してもらうことの大切さと難しさを、あらためて感じた」と、教育現場ならではの葛藤も明かしてくれました。

【参考】
令和4年度性別による「無意識の思い込み」に関する実態調査
令和5年度性別による「無意識の思い込み」に関する実態調査

(取材・構成・写真:PHPオンライン編集部 片平奈々子)

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