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大谷翔平メジャー1年目で“右肘故障”の衝撃

ジェイ・パリス(スポーツ・ジャーナリスト)、関麻衣子(訳)

2023年07月18日 公開

 

ひたすら幸運を祈る

2018年6月22日

この日のブルペン・セッションでは、マウンドに立つ右投げのフェリックス・ペーニャから60フィート6インチ(18.44m)離れた人物に注目が集まっていた。

右肘の負傷で初めて故障者リスト入りした大谷翔平が、いつも通りの様子で打席に立っていた。エンゼルスのブルペンで、大谷はペーニャの放つ投球に意識を集中させていた。

6月28日に出る検査結果を待ちながら、エンゼルスの関係者らはひたすら幸運を祈っていた。その日になれば、PRP注射と幹細胞注射を受けた大谷の肘の経過が、レポートに詳しく記載されて送られてくるはずだった。

結果によっては、一切のプレーができなくなるという可能性もある。その一方で、エンゼルスの中盤の打者として復帰できる可能性もないわけではない。さすがにピッチングは当分無理だとしても。

回復に12~14カ月かかるというトミー・ジョン手術が必要であるという診断は、まだ大谷には下されていなかった。もしも手術が必要となれば、すぐにオフシーズンに受けるとしても、2019年にマウンドに立つ可能性はゼロとなってしまう。

それでもバッターとしての復帰が見込めるならば、救いはある。6月7日以降、球団はそれだけを望みの綱にして大谷を見守ってきた。

 

待ち望んだ結果報告は...

2018年6月27日

待ち望んでいた大谷の肘の経過報告がようやく行われたが、結局今シーズンに登板できるかどうかは微妙な状態だった。

バットは振れるのか? それもまたはっきりしなかった。

エンゼルスのチームドクターであるスティーヴ・ユン医師は、クラブの経営陣に、大谷の肘の回復を妨げないよう絶対に投球させないのであれば、打者としての復帰の可能性もあると伝えたそうだ。

「ということは、彼は打席に立てるのだと私は理解した」GMのビリー・エプラーは、MLBネットワークのインタビューでそう話した。「医師が靭帯の状態はよくなり、事実上回復したという意味で言ったのだとすれば」

6月7日にPRP注射と幹細胞注射を受けたのは、トミー・ジョン手術を回避し、損傷した内側側副靱帯の回復を早めるためだった。

エンゼルスはこのとき4連敗中で、打線も5試合でわずか10点と振るわず、打率は.185にまで下がっていた。

大谷の最新の打撃成績も、一時期は.342を記録した打率が.289まで下がるなど、 ここ13試合において振るわなくなっていた。

 

大谷が戻ってくる

2018年6月28日

6月6日に大谷翔平の故障が発覚してから、エンゼルスの面々は黙々と練習に励み、なんとか窮地を脱するよう試行錯誤していた。

大谷もようやく右肘の再検査を終えて、バッティング練習の許可を得ることができ、再始動に向けて動き出していた。しばらくバットを握っていなかった大谷は、落ち着かない様子でブルペンに立ち、ピッチャーの投球を目で追いながら練習に備えているようだった。

「彼が打者としてチームに戻ってこられるのは前進であり、待ち望んでいたニュースだ」 ビリー・エプラーはロサンゼルス・タイムズ紙にそう話した。

ちょうどそのとき、マイク・ソーシア監督が鉛筆を持ち、打者のラインナップに大谷の名前を書き加えようとしていた。

「準備が整ったら、知らせてくれるだろう」監督は言う。「すぐかもしれないし、もう少し時間がかかるかもしれない。どういった練習が必要であるにせよ、無理はせず、着実に 一歩ずつやってもらいたい」

それは正しい判断に違いない。球団関係者だけでなく世界中のファンが、大谷が戻ってくるというニュースに活気づくことだろう。

 

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