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優れた上司の1つの条件...部下から「話しかけやすい」と思われるメリット

園部浩司(人材育成・組織風土改革コンサルタント)

2024年06月17日 公開 2024年12月16日 更新

優れた上司の1つの条件...部下から「話しかけやすい」と思われるメリット

「メンバーが主体的に行動し、仕事のやりがい・達成感を得られるチームを」作るには? 変化をもたらすリーダーになるために、必要な2つの条件について園部浩司さんが解説します。

※本稿は、園部浩司著「変化をもたらすリーダーは何をしているのか?」(フォレスト出版)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

変化をもたらすリーダーが身につけておきたい条件

「メンバーが主体的に行動し、仕事のやりがい・達成感を得られるチーム」におけるリーダーの姿についてお話ししましょう。

優れたリーダーの条件はいろいろありますが、大きく分けると2つ。1つは「ロジカルであること」、もう1つは「話しかけやすい柔らかい雰囲気」です。

「ロジカルであること」は、リーダーのベーススキルです。仕事に必要なことを、チームのメンバーたちにわかりやすく伝えることがリーダーの仕事として必須だからです。この「ロジカルであること」の基になっているのは、コンサルティング業界に由来する「ロジカルシンキング」です。

日本では、2001年5月にマッキンゼーの照屋華子・岡田恵子著『ロジカル・シンキング――論理的な思考と構成のスキル』(東洋経済新報社)が出版されて一躍ブームになりました。

同書では、話の重複、モレ、ズレをなくす技術として「MECE(ミーシー)」が紹介されています。この「MECE」という言葉も、ブームに乗って広まりました。

「MECE」とは、「Mutually(お互いに)」「Exclusive(重複せず)」「Collectively(全体に)」「Exhaustive(漏れがない)」の頭文字からできた言葉です。何かを考えたり、正確な答えを導き出すために必要なこととされています。

リーダーがチームのメンバーたちに対して、仕事に必要なことを伝える際にも、こうしたロジカルシンキングに基づき、伝えるべきことを整理できるスキルが求められます。

一方、「話しかけやすい柔らかい雰囲気」は、人の感情と深い関わりがあります。人には必ず感情があり、リーダーはメンバーの感情に影響を及ぼす存在です。そこでリーダーには、部下の感情を適切に汲み、配慮や寄り添うスキルが求められます。

リーダーはメンバーの行っていることを理解し、適切にコミュニケーションが取れるようでなければなりません。

ですから、リーダーはいつでも、メンバーが躊躇なく話しかけられる雰囲気でいる必要があります。そのため、リーダーに求められるのが「話しかけやすい柔らかい雰囲気」なのです。

人は、厳しい表情の人より、笑顔でいる人のほうが断然話しかけやすいと思いませんか?

「上司と部下という関係があるのだから、メンバーはリーダーに対して、話の内容や言葉を選んで話してほしい」というスタンスより、「同じチームの仲間なんだから、何でも話していいよ」というスタンスのほうが、あれこれ相談しやすいのではないですか?

そこで、リーダーのポジションパワーを感じさせないように、メンバーにはフランクに接することが大切です。もしかしてあなたは、「そんな態度だとメンバーになめられて、むしろ良い関係が築けないのでは?」と考えているでしょうか。そんなことはありません。

メンバーが話しかけやすく、何を話しても否定されないと感じられる柔らかい雰囲気を醸し出しながらも、仕事や成果に真摯に向き合っていれば、一緒に働いているメンバーにはその真摯な思いはちゃんと伝わるものです。

私も会社員時代に、特に説明をしなくてもメンバーが「あのリーダーはただ話しかけやすいフラットな人じゃない。仕事には真摯で厳しい」とわかってくれていたな、と感じた経験があります。

 

自分には「話しかけやすい柔らかい雰囲気」が足りないと思ったら

私にも覚えがありますが、かつて私自身に足りなかったのは、リーダーに求められる2つの条件のうち、話しかけやすさや、柔らかい雰囲気でした。

そして、2つの条件を比べてみると、「ロジカルである」というスキルより、「話しかけやすい柔らかい雰囲気」のほうが身につけやすいように感じています。このスキルは、人には感情があることを認識し、その感情を汲み取って適切なコミュニケーションを行うためのものです。

当初私は、仕事をするにあたって、人の感情を汲み取ることが必要だとは思っていませんでした。そのために大きな失敗をしてしまったわけですが。

しかしだからと言って、自分自身が本当に感情豊かな人、人に寄り添うのが当たり前の人に変貌する必要はないと思っています。リーダーとは、あくまで「役割」だからです。人はいろいろな場で、「役割」を果たしながら生きています。会社の中では「リーダー」という役割を果たしているにすぎません。

リーダーとしては、メンバーが「あの人は私の話を聞いてくれる」「あの人だからぜひ相談したい」と思えるように「役割」を果たせればいいのです。それには、人が話しかけやすい柔らかい雰囲気を身につけることが有効です。

 

リーダーとして、自分のブランディングを

そういう意味では、「あのリーダーは柔らかい雰囲気で、誰に対してもフランクな態度だから話しかけやすい」というブランディングが必要だと考えています。

私自身、"相談しやすいリーダー"を目指すようにしてからは、オフィスに一歩足を踏み入れた瞬間から笑顔でいることを強く意識していました。

「おはようございます!」の挨拶も、笑顔で陽気に。いつも朗らかでいると同時に、言葉は丁寧であってもフランクな態度で。

コミュニケーションには言語によるものと、非言語によるものがあります。非言語とは何かというと、表情、声のトーン、視線、身ぶり手ぶりなどのことです。心理学者のアルバート・メラビアン氏によると、その人の印象を決めるのは、93%が非言語的要素だということです。

ですから、同じ言葉を口にするにも、どんな表情で、どんな声で、どんな身ぶり手ぶりで言うのかがとても大事なのです。

とはいえ、「自分は人にフランクに接するのは苦手だな」「いつも朗らかそうにはできないよ」という人もいるかと思います。

「リーダーとはこういうタイプが最も優れている」という答えがあるわけではありません。

そうであれば、自分ならどんなリーダーの元で仕事をしたいのか、自分の持ち味を活かしながら、一緒に働きたいリーダー像になるために何ができるかを考えてみることが必要です。

 

著者紹介

園部浩司(そのべ・こうじ)

人材育成・組織風土改革コンサルタント,研修講師,プロファシリテーター

1991年、NECマネジメントパートナーに入社。経理部に配属され、その後、事業計画部へ異動し36歳でマネージャーに昇格。さまざまな企画を立案し実行するが、チームマネジメントはプレイヤー時代のようにはいかず、成果をなかなか出せずにいたところ、あるプロジェクトにおいてメンバーとの関係が破綻。これをきっかけに、自身の変化の必要性を感じ、試行錯誤を繰り返す。すると、チームの状態が劇的に向上し、プロジェクトでも大きな成果がでるように。その後は、「メンバーの育成」と「成果」の2軸にフォーカスするチームマネジメントを行い、300名在籍の組織変革プロジェクトリーダーをつとめ、1年間で約2億円の営業利益の改善に導く。業務改革推進本部では、最年少部長に抜擢。2016年に独立し、人材育成や業務改革、風土改革のコンサルティングを行う「園部牧場」を設立。ベンチャーから大手企業までのチームプロジェクトを仕切るほか、年間2500人以上のチームリーダーやファシリテーターの育成に携わる。営業活動はSNSなどを一切使わず口コミのみ。数年先まで依頼で埋まっているコンサルタントであり、トップファシリテーター。指導した人数は、延べ2万人を超える。

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