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中国の急成長で変わる、日本経済の「中国依存」

ワールドエコノミー研究会

2012年10月20日 公開 2022年07月13日 更新

中国の急成長で変わる、日本経済の「中国依存」

以前より、日本の最大の貿易相手国はアメリカであったが、近年世界2位の経済大国となった中国との関係はもはや日本経済において書くことのできない存在となっている。

ここでは、拡大を続ける中国経済と、革新的であった人民元の国際化に着目して日中の経済関係を解説する。

※本稿は、ワールドエコノミー研究会 著『一目でわかる!世界経済のからくり グローバル時代のヒト・モノ・カネノ流れ』(PHP研究所)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

拡大を続ける中国との貿易

日本がこれまで貿易の取引先として最優先してきたのは、いうまでもなくアメリカだ。戦後、日本経済は対米輸出に強く依存することで成長し、1960年代にGDP(国内総生産)がアメリカに次ぐ世界2位の経済大国となった。それがここへ来て変わりつつある。

中国がアメリカと同等、いやそれ以上に必要欠くべからざる相手となってきたのだ。

 

中国は2003年から2桁の経済成長を続け、いったんは世界同時不況の波に呑まれたものの、積極的な景気対策が功を奏してV字回復を果たした。10年にはGDPで日本を抜き、世界2位の座を奪取した。

こうした中国経済の急速な発展により、日本と中国との輸出入の貿易額は拡大の一途をたどっている。04年には日本の対中国の貿易額がアメリカを超えてトップになった。

かつて「アメリカがくしゃみをすれば日本は風邪をひく」といわれたが、今日では「中国がくしゃみをすると、日本は風邪で寝込む」時代になっているのだ。

日中関係の深まりは対中投資の拡大からもうかがえる。対中投資とは、簡単にいうと日本企業が日本で企画や設計をし、中国に設立した工場で製品をつくって日本に出荷すること。この対中投資が最近は製造業に限らず、非製造業でも増えているのだ。

また、中国からは巨大な資本力をもつ大企業へと発展して日本の有名企業の買収に踏み切る企業も出てきている。さらに日本を訪れる観光客が落とす中国マネーも、日本の小売店にとって大きな影響を及ぼしうるまでになった。

このように好むと好まざるとにかかわらず、日本経済は中国なしに成立しえない時代になったのだ。

その一方で、日中関係が深まることによる問題点もいくつか指摘されている。たとえば中国は社会主義国であるため、民主主義国でふつうに行なわれている取引の常識が覆されるリスクがある。また商取引上の習慣の違い、知的財産権に対する考え方の違いも、軋轢を生む一因となる。

さらに中国国内における賃金上昇により、コストダウンが難しくなってきたのも事実だ。中国内での需要を伸ばす現地生産態勢への方針変更、他の安い労働力が期待できる国への生産拠点の移転など、日本企業には的確で迅速な対応が求められている。

 

【わかる解説】 中国が進める人民元の国際化戦略

日中貿易の拡大にともない、通貨の取引方法も変化した。2012年6月1日から、日本の円と中国の人民元が直接取引できるようになったのだ。

これまで貿易で円と元を交換する際には、ドルを仲介役として交換する方法がとられていた。日本企業が中国へ輸出して得る売り上げ代金はドル建てにし、その売り上げ代金をドルから円に交換して回収していた。

元を円に交換する際にも、いったんドルと交換し、そのドルを円に交換していた。つまり、円と人民元を交換するには2つの段階をふむ必要があったのだ。

しかし、この方法ではドルとの交換に手数料がかかるというデメリットが生じる。またドルによる売り上げを円に換える最中にドル相場が変化するというリスクも抱えることになる。そこで日中両国は、これらのマイナス面を考慮し、東京と上海で円と人民元の直接取引ができるようにしたのだ。

これによって日本企業は二度手間をかけずにすみ、為替変動のリスクを回避できるようになった。

企業だけではなく、投資家も人民元を投資対象にしたり、財産の一部を人民元にして他の通貨との投資リスクを分散するメリットを享受できる。また、旅行をするときも通貨の交換が楽になり交換手数料が半減するから、その分をショッピング費用にまわしたりもできる。直接取引が可能になったことで、人民元は日本人に身近な存在となっていきそうだ。

 

中国の人民元国際化戦略

中国が円と人民元の直接取引に合意したのは、人民元の国際化戦略の一環と見られている。実は中国は、人民元をドルのような世界の基軸通貨にしようとしており、以前から計画を進めていたのだ。

中国はすでに周辺国14カ国との貿易で人民元を使っている。周辺国の通貨は人民元ほど強くないため、主要な通貨として浸透してきている。円との直接取引の成立は、この国際化戦略を後押しすることになるのである。

 

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