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顧客に信頼される第一印象とは? 販売のプロが解説「見た目で差をつける方法」

豊岡舞子(株式会社豊岡代表取締役)

2025年05月07日 公開

顧客に信頼される第一印象とは? 販売のプロが解説「見た目で差をつける方法」

営業成績を左右する大きな要因の一つ、それはお客様との最初の出会いで決まる「第一印象」です。メラビアンの法則だけでは語れない、お客様の心に深く響く信頼感の築き方とは?

20年にわたり接客や販売員教育に携わってきた豊岡舞子さんは、モノを売るためには、お客様の心理的なニーズに応じた印象をつくる必要があると解説します。お客様に「この人から買いたい」と思わせるための具体的な方法を、豊岡さんの著書『モノが飛ぶように売れる人の考え方』よりご紹介します。

※本稿は、豊岡舞子著『モノが飛ぶように売れる人の考え方』(インプレス)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

何のためにモノを売るのか考える

あなたは、何のためにモノを売っていますか?

一般論としては「会社のため」「売り上げや数字のため」と言う方が多いでしょう。売り上げを立て、従業員は人件費としてお給料をいただくことができます。かくいう私も、20代の頃は数字しか見ていませんでした。

人によっては、会社からの評価や出世、ステータス、実績のためにモノを売るのだという考えをお持ちの方もいらっしゃるでしょう。

しかし、モノを売ることの価値とは果たしてそれだけでしょうか?

モノを売ることには、仕事の成果以上の価値を手にできるという大きな意義があります。仕事の成果以上の価値とは、人生のミッションを感じるようなものです。そのことを意識できている方はそう多くはありません。ですが、本稿を読んでいるあなたにはぜひ気づいていただきたいのです。

今目の前にある仕事をより大きな枠で考えたときに、「会社」というのは狭い世界です。会社勤めの方であれば、人生は会社で勤めているときよりも長く続いていきます。日々の仕事が終われば、誰もが家に帰り、そこには生活や人生があります。会社以外にも、私たちの外側にはもっと広い「社会」が広がっているのです。

長く会社勤めをしていると、そのことが次第にわからなくなってしまい、気づけなくなってしまいます。会社が人生そのものになり、それ以外の世の中に興味が薄れてしまうことは珍しくありません。

それを続けていると、ある日突然会社がなくなったときに何も残らないのです。何らかの理由で、会社での立場がなくなってしまうときも同様です。例えば、左遷のように望まない異動が起きるというのはよくある話です。そのときまで自分=会社になってしまうと、心が耐えきれずに人生を失ってしまうかもしれません。

私が20代だった頃、目先の数字に追われてしまって、部下にも数字のことばかり追及してしまっていました。確かにそれで売ることはできて、会社から褒められたり表彰されたりしましたが、最終的に何が残ったのかというと、自分の手元には何も残らなかったのです。その後に私についてくる人は誰もいませんでした。

会社のなかではパワーバランスであったり、仕事の関係でやらなければ怒られてしまったりするため、その場では部下たちも私の話を聞くのです。

ところが、私がエリアマネージャーから店長に降格したときにパーッと人が離れていってしまいました。身を削って会社のために頑張って、休みなしで働いて、最終的に私を本当に好きで支持してくれる人はいなかったのです。これは私に限らず、世の中のどこにでも起きていることなのではないでしょうか。

例えば、大企業勤めで役職があったときには「◯◯さんに一生ついていきます!」と大勢の人が付きしたがっていても、役職から外れてしまったときに、周りの人が一斉にいなくなってしまう様子を想像できます。

私は30代になってからは、はじめにでもお伝えしたように仕事のやり方を変えました。部下たちが幸せになることを1番に考えて取り組んだ結果、ただの仕事仲間を越えた信頼関係が構築できました。いまだにずっと付き合いがあり、仕事のパートナーにまでなっています。「会社」ではなく「社会」という大きな枠組みで、本当に大切なものが手に入ったのです。

人間関係にも社会課題にも広く通じることですが、人生において「何のためにやっているか」ということが非常に大事なのだと改めて感じました。

何のためにモノを売るのか?

そのモノを売った先には、必ず自分の人生に返ってくることがあるということ。かつては数字だけを見ていた私も、今ではモノを売るという行為を「社会活動の1つ」ととらえています。モノを売ることで、その先にある社会と繋がることができるのです。

そうしたマインドを持つと、売り方が変わってきます。例えば、目の前のお客様に対してモノを売るだけではなく、その先にお客様の人生があることを考えられるようになります。そのお客様が、また次も会いに来てくれるかもしれません。自分が行った提案や助言が、お客様の人生を豊かにしたり、何かを助けたりするきっかけになることもあります。そうして社会が巡り巡っていくのです。

会社という括りではなく、大きな枠組みでとらえることによって、あなたにとっての世の中は一層広がっていきます。

もちろん、実際にモノを売るときには目の前のお客様に売ります。それを目先の「今日の売り上げのレジがいくらだったか」「四半期の目標が」という理由ではなく、その先の社会と繋がっていて、社会活動をしているのだという売り方をすること。それができると、仕事の成果以上の価値を手にでき、あなたの人生に返ってくるのです。

 

顧客に信頼される「第一印象」を押さえる

どのようなモノを売るときであっても、初対面時の印象、つまり第一印象はお客様との信頼関係を築くための重要な要素です。挨拶や自己紹介では「第一印象力」を意識することで、良好なコミュニケーションの下地を作ることができます。

ご存じの方も多いと思いますが、「メラビアンの法則」というものがあります。人はコミュニケーションを取る際に、視覚情報55%、聴覚情報38%、言語情報7%を相手に与えているという心理学の法則です。一般的には、この法則を根拠として「身だしなみを整えることが大切だ」という結論がよく用いられます。

本書ではモノを売ることに関して、一般的に言われているメラビアンの法則とは違う考え方をしています。極端に言えば、見た目を綺麗にして、わかりやすいほどに売れる人の見た目にすれば売れます。清潔感のある身だしなみ、目元がはっきり見える髪型、信頼に値する目の輝きや目つき、口角を上げた笑顔、背筋を伸ばして堂々と立つなど、これらの雰囲気と挙動が売れる人の見た目です。

しかし、必ずしもそれだけとは限りません。じつは「こんな見た目の人が売れるの?」と驚くようなことも多々あるのです。

例えば、抜けている雰囲気の人。本当はすごく売れる人なのに、相手が安心するような見た目にしてお客様を油断させる人がいます。

天然っぽい雰囲気を出して売れる人もいます。売れる人やできる人のオーラを出していると、それでお客様は身構えてしまうため、気取らない雰囲気のほうが受け入れられやすいのです。人間の心理的な欲求に刺されば売れます。

ポイントは、相手にどうやって心を許してもらうか。そして、見た目で相手に信頼されることです。

わかりやすい例を挙げると、詐欺師はできるビジネスマンのように見せて人を信用させます。高額なお金を扱う場合に、騙される側の人は「これほどの大金をこの人に預けて大丈夫だろうか」と不安に思ってしまうためです。カチッとしているほうが信用も信頼もできますよね。

この場合、お金を預ける人が相手に求めているのはゆるさではありません。心強さやパワフルさです。金額が大きい取引では、強い見た目のほうが圧倒的に有利です。だから詐欺師はそのような見た目でお金持ちの人に近づくのです。

また、売る商材によって求められる見た目は異なります。例えば、リラクゼーション系のマッサージ店で年間パスポートをおすすめする場合を想像してみてください。

どのような見た目が売れそうでしょうか?先ほどの大金を扱うケースとは違いますよね。ふんわりしている雰囲気のほうが売れると思います。食品系や健康系の商材にも同じことが言えますが、その商材がどのようなモノかによって、お客様に安心感を与える見た目は異なります。

このように、その商材を誰から安心して買うかということを考えると、心を許すポイントは変わってきます。売ることに関して、必ずしも「この見た目が売れます」というルールがあるわけではないのです。

きちんとしすぎている見た目が良いとは限りません。柔らかさや安心感、ホッとする印象をお客様に与える見た目でも売れます。

要するに、お客様が「この人なら大丈夫だ」と思える見た目が重要だということです。まとめると、第一印象力と見た目はとても大切な要素です。それによって信用・信頼されるかどうかが決まり、相手との関係性も売れるかどうかも変わります。ぜひそのことを意識してみてください。

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