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精神科医・川野泰周が教える「脳疲労」解消法 1日10分の坐禅と日常生活でできる瞑想入門

川野泰周(僧侶、精神科医)

2026年02月26日 公開

精神科医・川野泰周が教える「脳疲労」解消法 1日10分の坐禅と日常生活でできる瞑想入門

「集中力が続かない」「いつも頭が重い」...。その不調、実はマルチタスクによる「脳疲労」が原因かもしれません。脳をリセットし、疲れにくい状態を作るにはどうすればいいのか。精神科医であり僧侶でもある川野泰周氏が、初心者でも自宅で簡単にできる「ゆるい坐禅」の作法から、食事や歩行といった日常動作を瞑想に変える具体的なメソッドまで、分かりやすく紹介します。(取材・文:高橋裕子、イラストレーション:なかむら歌乃)

※本稿は、『PHP』2026年1月増刊号の内容を一部抜粋・再編集したものです。

 

不調の原因は「脳疲労」

作業に集中できない、つい他のことを考えてしまう、いつも「心ここにあらず」の状態にある...。デジタル技術の急激な発展による情報過多、そして仕事でも家事でも同時に複数の作業をこなすことが求められるマルチタスクによって、私たちの脳は疲れはてています。脳疲労の蓄積は不眠や頭痛、自律神経失調症と呼ばれる不調やうつを招くことがわかっています。

こんな時代を健康で過ごすためには、脳の疲れをとるとともに、ふだんから疲れにくい脳にすることが必要です。そこで私がおすすめしているのがマインドフルネス瞑想です。

マインドフルネスとは「目の前の行為に注意を向けて、そのときに生じた感覚に善し悪しの判断を加えない」という心のあり方。そのような心の状態になるために効果的なのがマインドフルネス瞑想です。

 

坐禅はマインドフルネス瞑想の1つ

マインドフルネス瞑想は「今、この瞬間」の感覚に意識を向けて集中力を高めるエクササイズ。坐禅はそのなかの呼吸瞑想の1つです。呼吸に集中するというタスクを続けることで、集中力が高まる、頭がすっきりする、自己肯定感が上がるなどの効果が得られます。物事を冷静に受けとめる脳になるので、心身の不調も改善します。

そして、自己肯定感が上がると自分を大切にできるようになり、他人を思いやる気持ちの余裕が生まれます。他人の言葉に心を乱されない強さも身につくので、人間関係もよくなるのです。

 

坐禅に挑戦してみよう!

坐蒲がなければ座布団で代用

ここでは一般的な坐禅の方法をご紹介しますが、マインドフルネスの立場から、少しゆるい方法もお伝えします。1回10分くらい行ない、毎日続けることをおすすめします。
 ※禅寺などで坐禅体験をする場合は、そのお寺のしきたりに従ってください

【まずは準備から】
●ベルトやネクタイなど体を締めつけるものは取り除き、ゆったりとした服装で裸足になります。
●外からの音や家の中の生活音が入ってこない環境を選び、なるべく視界にものが入らないように片づけます。できれば壁に向かう形がよいでしょう。
●日中は自然光のみにする、夜は間接照明にするなど、部屋は明るくしすぎないように。
●お尻の下に敷く敷物(坐蒲)を用意します。なければクッションや普通の座布団を2枚重ねてもよいでしょう。

 

坐禅のやり方

調息と調心

【調身―姿勢を整える】

●足を「結跏趺坐」に組み、背筋を伸ばす。
 ※むずかしければ片方の足にもう片方の足を乗せるだけの坐法(半跏趺坐)やあぐらでもOK。あぐらは圧迫を避けるために足をずらして座ります。

●手は左右の親指を合わせ、支えあうような形にする(法界定印の形)。
 ※手のひらを上向きにしてひざや太ももの上に置いても。

●顎を引き、まっすぐ前方を向いたまま、視線だけを1mほど前方に落とす。自然と半眼(目が完全に閉じず半分開いている状態のこと)になり、雑念が浮かびにくくなる。
 ※完全に目を閉じたほうが集中できる人は目を閉じてもかまいません。

【調息―呼吸を整える】
「空気が出ていった、入ってきた」と鼻で感じたり、「体がふくらむ、しぼむ」という感覚を感じながら、自然な呼吸をする。「ひとー」で長く吐き、「つ」で吸う呼吸を「とー」(十)まで数え、また「ひとつ」に戻る(「数息観」という)。
 ※鼻の調子が悪い人は口呼吸でも大丈夫。

【調心―雑念を払って呼吸に戻る】
雑念が浮かんできたら、つど呼吸に戻って「ひとーつ」から始める。
 ※雑念が浮かぶのはごく自然なこと。「雑念が浮かぶなんて自分はダメだ」などと否定せずに、つど呼吸に戻りましょう。

 

生活瞑想をやってみよう!

歩く瞑想と掃除瞑想、空をながめる瞑想

マインドフルネスは、坐禅にかぎらず日常生活の中でも気軽に取り組めます。
ふだんの生活にマインドフルネス瞑想を取り入れて習慣にしましょう。

【食べる瞑想】
最初の1口を2分ほどかけて丁寧に食べます。命から栄養をいただいているという感謝の気持ちが自然と生まれます。ゆっくり味わって食べる習慣がつくので、食べ過ぎを防ぐ効果も。

【1】食べ物を箸ではさんで形や色を見る
【2】匂いをかいでみる
【3】そっと口の中に入れる
【4】すぐに噛まずに舌の上で転がして味や形を感じる
【5】ゆっくり咀嚼して味わう
【6】飲み込む

食べる瞑想

【やり方】食べ物をよく目で見て、匂いをかいだら、舌の上で味わってゆっくり咀嚼を始めます。そのとき、しみ出てくる味を味わいながらゆっくり噛んで飲み込みます。食べ物がのどから食道、胃へと落ちていくところまで感じとりましょう。

【歩く瞑想】
足の感覚を意識して歩くことで集中力がアップし、頭がすっきりします。最初は畳や床の上を歩いてみましょう。
●視線は前方に向けて、なるべく足元を見ずに、足の裏の感覚だけで床を感じる。
●手は体の前か後ろで組む。
●自分の足の裏が地面から離れたり着いたりする感覚に集中する。
 ※歩行が困難な方は手すりや壁につかまりながらやりましょう。

【やり方】自分の足の裏が地面から離れている、着いているという感覚に集中して、1歩ずつゆっくり歩きます。歩く時間や距離は気にしないでOK。家事の合間やトイレに行くときなど、ちょっと歩くだけでも充分です。
慣れてきたら、散歩や買い物、通勤時などにスタスタ歩いてみましょう。足の裏の感覚に集中できればよいので、スニーカーや革靴、ハイヒールなど、履物は何でもかまいません。

【立ったまま行なう歩く瞑想】
ホームで電車を待つあいだなどに、立ったまま右足から左足へ、左足から右足へとゆっくりと重心移動。
「今は右足に7割体重がかかっている」「右足に10割体重がかかって左足が浮いた」など、足にかかる重みを意識すると歩く瞑想になります。

【掃除瞑想】
ひたすら拭く、磨く、掃くといった行為に集中します。自分が住んでいる環境をきよめることで、心も癒やされるでしょう。

【やり方】
「畳3畳分だけ」「出窓だけ」「便座だけ」など、掃除する範囲を狭くしてひたすら掃除します。音楽を聴きながら、鼻歌を歌いながらなどの「ながら作業」はNG。いつも掃除している場所を掃除して、マインドフルネスとそうでない気分の差を実感するのもよいでしょう。

【空をながめる瞑想】
前の3つは目の前のことに集中する「集中瞑想」でしたが、これは、目の前に起こったことに善し悪しの判断を加えずにありのままを受けとめる「観察瞑想」です。

【やり方】
空を見上げてみましょう。「西の空が赤いけれど、高いところは青いな」「飛行機が飛んでいる」など、いろいろな気づきがあるはず。「今日はお出かけ日和だな」「雨が降りそうで気分が落ち込む」といった善し悪しの判断はせず、ありのままを観察することがポイントです。

プロフィール

川野泰周(かわの・たいしゅう)

僧侶、精神科医

1980年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学医学部卒業。2014年より臨済宗建長寺派林香寺住職。精神科の医師として診療に携わり、’25年11月、横浜市に石川町ひだまりクリニックを開院、院長となる。禅やマインドフルネスの実践による心理療法を積極的に行なっている。『頭と心が整理される 1分の使い方』(大和書房)など著書多数。

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