
歩く時のひざの痛みに悩んでいませんか? 愛媛大学医学系研究科教授、抗加齢予防医療センター長の伊賀瀬道也さんは、ひざ関節痛の改善には「コラーゲンが効果的」だと語ります。本稿では書籍『百歳まで歩ける人の習慣』より、コラーゲンが体にもたらす影響や、効果的な摂取の仕方についてご紹介します。
※本稿は、伊賀瀬道也著『百歳まで歩ける人の習慣 脚力と血管力を強くする』(PHP新書)を一部抜粋・編集したものです。
歩くときはコラーゲンをとる
■ひざ関節痛の改善には栄養補給が不可欠
歩くときには、下肢の筋肉はもちろんこと、体幹の筋肉やひざ関節などが重要なことはいうまでもありません。ところが、高齢になると、多くの人が腰の痛み(腰痛)やひざの痛み(ひざ関節痛)に悩むようになります。
腰痛やひざ関節痛を放置すると、歩く機会が減って足腰の筋肉が衰え、やがて寝たきりになって要介護の状態を招く「ロコモティブシンドローム」(運動器症候群)におちいることもあります。
たとえば、ひざ関節痛の原因はさまざまで、関節軟骨や筋肉の衰えのほか、骨粗鬆症のように骨そのものが弱くなることが考えられます。
これらの改善には、運動療法や対症療法として薬物療法がありますが、栄養補給も欠かせません。
基本は毎日の食事をきちんととることですが、プラスアルファを求める人にはコラーゲンがおすすめです。ひざ関節痛対策の栄養といえばグルコサミンがよく知られていますが、私がコラーゲンを推す理由は、骨や血管、肌、髪など、全身のあらゆる組織の若さを維持するのに役立つタンパク質の一種だからです。
低分子コラーゲンペプチドを吸収する
私たちの体内に存在しているコラーゲンの量は、タンパク質全体の約30パーセントを占めています。私たちの体を構成するタンパク質は、約20パーセントといわれます。体重50キログラムの人だと10キログラムがタンパク質ですので、コラーゲンは約3キログラム程度ある計算になります。相当な量ですね。
さて、動物由来のコラーゲンは一般的に分子量が約30万といわれており、非常に大きな物質で、そのまま食事としてとっても十分に吸収できません。
そこで、たとえば、牛すじ肉であれば、牛すじ煮込みのように熱を加えて調理することで、ゼラチンといわれる物質(分子量は約10万)ができ、それが体内に吸収されます。ゼラチンは体内では胃や腸で消化されて、アミノ酸のかたちで小腸から吸収されます。
アミノ酸が2個とか3個とかくっついた状態の約1000程度の小さな分子量のものを、「低分子コラーゲンペプチド」と呼びます。
現在は、低分子コラーゲンペプチドを酵素分解反応で大量につくることができ、食用に提供されています。低分子コラーゲンペプチドは「ゲル化能」(ゼリーのように固まる性質)というものがないので、冷やしてもゼリーになりません。飲料やスープなどに溶かして大量摂取することが可能で、体内で吸収されやすくなります。
現在では、低分子コラーゲンペプチドは細胞を使った基礎研究だけでなく、実際にひざ関節痛で困っている患者さんに飲んでもらい、「関節痛が和らいだ」という研究成果も出ています。
ちなみに、私が行った研究では、血管年齢から5歳分若返ったことから、低分子コラーゲンペプチドに血管若返り作用があることも証明できています(「バイオサイエンス・バイオテクノロジー・アンド・バイオケミストリー」日本農芸化学会英文誌、2018年5月)。