「説得より共感」で変わる 60歳から磨く穏やかな話し方
2025年09月19日 公開
長年培った経験や知識は、人生の宝物。しかし、その言葉が時に相手を委縮させてしまったり、意図せず命令口調になってしまったりすることはないでしょうか?
この記事では、60歳を超えて、仕事や子育てから離れて時間に余裕ができたときにこそ身につけたい、心を豊かにする「話し方」のヒントをお届けします。周囲と温かい関係を作るための、コミュニケーションにおける大切なことを探っていきましょう。
※本稿は『変化を愉しむ 60歳からの気品のルール』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を一部抜粋・編集したものです。
命令口調を避ける
長年培ってきた仕事上の習慣から生まれる口調が、日常会話にも顔を出し、知らず知らずのうちに命令調になってしまうことがあります。
誰かを思いやり助けようとする善意から咄嗟に発した言葉が、相手には不愉快な指示として響いてしまっては、なんとも残念なことではないでしょうか。
「〜してください」という直接的な表現よりも、「もし良ければ〜していただけると嬉しいのですが」といった柔らかな言い回しを心がけると、相手の心により優しく届くものです。
熱心な説得は無用
気遣いから生まれる注意や教えも、あまりに熱心になりすぎると、かえって相手の心に壁を作ってしまうことがあります。
たとえば、あたかも相手が自ら気づいたかのように感じる話し方、さりげない問いかけを通して自然と納得へと導くような会話の運び方ができれば、互いにとって愉しい時間となるでしょう。
「これはこうすべきだ」という断定よりも、「こういう見方もあるかもしれません」という提案の形で伝えるなど、相手の自尊心を傷つけない言い回しを工夫しましょう。
議論をせずに流れを変える
相手の立っている場所や内面に秘めた考え方をそっと見抜くことから始め、適度に共感しながらも自分の本質を見失わず、互いにとって心地よい時間を紡いでいきましょう。
熱くなりすぎず、自然と話題が変わっていくような会話の導き方こそが、人間関係を豊かにするコツといえるかもしれません。
時には「なるほど、そのお考えも理解できます」と相手の意見を受け止めつつ、「私はこう感じているのですが、いかがでしょう」と柔らかく自分の見方を添えることで、対立ではなく対話が生まれるのです。
穏やかに優しい口調に徹する
笑顔を絶やさず、自然と美しい心情のテーマへと話題を導いていきましょう。
これこそが年齢や立場を超えて、誰からも好かれる話し方の神髄といえるのではないでしょうか。
表面的な取り繕いではなく、内から湧き出る誠実さが伝わる内容を語り、時には「お気持ち、よくわかります」と相手の立場に立って共感の言葉を添えることも、心の距離を縮める大切な要素です。
聞き上手になる
相手がどのようなことに心惹かれ、何に関心の光を向けているのかを、さりげなく見極めていきましょう。
「そのことについて、もう少し詳しく聞かせていただけますか?」と興味を示しながら、相手の好みに沿った話題で場を温め、その流れの中にさりげなく自分の思いや感じていることも織り交ぜていくと、会話は自然と彩りを増していきます。
話す時間と聞く時間のバランスを大切にし、相手の言葉に頷きながら「なるほど」「それは素晴らしいですね」といった相槌を打つことで、会話は心地よいリズムを刻んでいくことでしょう。
相手を尊重する言い回し
「今日はずいぶん冷え込みますね。そちらのお席は窓際で寒くはないですか?」
本音を言えば窓を閉めてほしいという思いがあるのですが、それを直接的に要求するのではなく、相手を気遣う言葉として包み込みます。
自分の願いや要望を伝える際も、「〜してください」という依頼形ではなく、「もしよろしければ」「ご都合がつくようでしたら」といった前置きを添え、相手の立場を尊重する姿勢を示すことで、言葉は柔らかく心に届くものとなります。
思いやりを込めて話す
言葉の美しさとは、単なる表面的な飾りではなく、その表現と行為が調和して一体となった時に初めて真価を発揮するものではないでしょうか。
形式的に丁寧な言葉を選びながらも、その内容に思いやりが欠けていては、本当の意味での心遣いとは言えないかもしれません。
「それはできません」という断定的な否定よりも、「申し訳ありませんが、別の方法で対応させていただけないでしょうか」といった前向きな代替案を示す言い回しを心がけてみましょう。
言葉の選び方一つで、同じ内容でも相手に与える印象はまるで違ってくるものです。
そっと寄り添う言葉を使う
謙虚さを表現する言葉遣いも、日々の会話の中で磨いていきましょう。
「あなたならきっとできますよ」「これからのご活躍が愉しみです」といった励ましや期待の言葉を贈り、相手の心に喜びの火を灯すことができるのは、今の自由な立場だからこそできることです。
誰もが共感できるような穏やかな言葉を、相手が必要としているちょうどそのタイミングで差し出すことで、目には見えない支えとなることができるのです。
直接的な助言よりも、そっと寄り添うような言葉が、時に深く心に届くものです。






