早いうちからお金に関する知識を学び、使い方を工夫できるかどうかで、人生の選択肢は変わってきます。まず始めるべきなのは、収入の振り分け。欧米でよく知られている「50/30/20ルール」とは。上手に節約し、無理なく貯蓄する方法とは。ファイナンシャルプランナー(FP)として、多くの人からお金の相談を受けてきた「かわゆ先生」こと川口幸子さんが、欧米暮らしの経験をふまえつつ、若い人に知ってほしい、お金との付き合い方の基本を解説します。
本稿は、川口幸子著『FP歴30年の母が20代の娘に伝えたい人生が変わるお金の話』(日本実業出版社)より一部抜粋・編集したものです。
「NEEDS」「WANTS」「SAVINGS」にお金を分類
「50/30/20ルール」は、欧米で有名な家計管理の方法です。
50%は、NEEDS(必要なもの)で、食費、住居費、光熱費、衣類、医療、日用品など。
30%は、WANTS(欲しいもの)で、旅行、趣味、外食、携帯電話など。
20%は、SAVINGS(貯蓄)で、貯蓄、投資、返済など。
このように家計を振り分けることで、投資等に回すお金が明確になります。
例:手取り26万円の場合
13万円を必要経費に(50%)
7.8万円を娯楽や外食に(30%)
5.2万円を貯蓄に(20%)
実家暮らしの場合は、必要な経費が50%もかからない場合もあります。余った分は貯蓄や投資に回して将来の準備をしたほうが堅実です。「50/30/20ルール」を考慮しながら家計管理をしてみると、家計を回しやすくなります。
賃貸の家賃を下げることは難しいでしょうが、コロナ禍以降、外食が減ったり、人と会う機会が減ったり、出かける機会が減ったり、化粧品の量が減ったりなど、娯楽関係費は流動的です。
「交際や娯楽に回すお金の余剰金」は、趣味などだけでなく余剰にも回せるように家計管理をして、「50/30/20ルール」の柱の割合をしっかりと押さえておきましょう。
家賃、光熱費、通信費、交通費等の生活に必要な固定費用に関しては、少しでも下げられるような対策を立てることが大切です。携帯電話の契約プランを見直す、光熱費を節約する、自動車を保有するかどうかなど、念入りにシミュレーションをして選ぶようにしてください。
常に、お金を使う際に「今、本当に必要?」なのかどうかを自問自答してから使うとよいでしょう。
収入の10%を貯蓄に回すと、10年後には1年分の年収になる
収入の10%を毎年貯蓄すれば、10年で1年分の年収が貯まります。
たとえば年収400万円なら、毎年40万円を貯められれば10年で400万円になります。
この10%分で投資をしていたら、金利や利回りでさらに増えます。
「先取り貯金」を習慣にし、強制的に貯める仕組みをつくりましょう。
毎月決まった金額を投資する積立投資などで、利率が良い商品を利用すると効果的です。
先取りをして「10%」と決めて、そのお金はなかったものとして生活ができたら、「10年後には1年分の年収が待っている!」と思うとがんばれませんか?"今"も大切ですが、10年後の自分を想像することも大切です。
ただ、貯めるといっても、銀行口座を分けたくらいでは簡単にATMで下ろせてしまいます。
バーゲンセールで良いものを見つけてしまったり、買いたいものを発見した時に誘惑に負けてしまうこともあり得ます。
「今回だけ使っちゃおう!」と安易に手を出してしまうことも考えられますよね。
そのため、強制力を持たせた貯め方にするのがコツです。
10年間、少しでも利率が高い積立などを利用して、「解約するのが面倒!」なくらいの商品で積み立てるのがちょうどよいです。
「節約=生活をつまらなくする」にしないこと
「なんとなく貯金ができない」「毎月ギリギリまで使ってしまう」と感じている人は、まず生活費を「見える化」することが第一歩です。
生活費には大きく分けて「固定費」と「変動費」があり、それぞれに対してアプローチの仕方が異なります。だからこそ、この2つを区別して考えることで、賢い節約や貯蓄が可能になります。
「固定費」とは、毎月必ず決まって出ていくお金のことです。家賃や住宅ローン、通信費、水道光熱費、保険料、駐車場代、習い事、各種のサブスクリプションなどです。
これらの支出は、一度契約や設定を変えるだけで、大きな節約に直結します。たとえば、スマホの料金プランを見直すだけで、年間数万円を節約できることも珍しくありません。
一方、「変動費」とは、月によって使う金額が変わる支出です。食費や日用品、交際費、被服費、レジャー費などがこれに当たります。
変動費を抑えるには、日々の暮らしの中で少しずつ意識を変えていくことが必要です。
ポイントは「我慢」ではなく「選び方」。
たとえば、外食が週3回だったら週1回にする。コンビニでの買い物を週5回から週2回に減らす。それだけでも月に数千円、年にすると数万円の差が出ることもあります。
大切なのは、「節約=生活をつまらなくする」にしないこと。むしろ、無駄な支出が減れば本当に価値のあることにお金と時間を使えるようになります。
具体的には、レシートやクレジット明細に「固」「変」のマークを自分なりにつけるだけでも効果があります。
色ペンで仕分けしてもいいし、家計アプリを使うのもおすすめです。自分にとって「何にいくら使っているのか」がパッと見てわかるようになるだけで、お金の使い方は驚くほど変わります。
そして、もう一つ大事なことは、「見直しは1回きりではない」ということです。
ライフステージが変われば必要な支出も変わります。結婚、転職、引越し、子どもの成長...そのたびに固定費も変動費も定期的に点検し、今の自分にとって最適な使い方にアップデートしていきましょう。
たとえば、保険。付き合いで入ったままになっている保険や、ライフスタイルに合っていない保障内容のものはありませんか?「保険=安心」と思い込みすぎず、本当に必要な保障だけを残すことで、無駄な固定費をカットできます。
また、見落としがちなのが家電の買い替えタイミングです。古い冷蔵庫やエアコンを「まだ動くから」と使い続けていると、電気代がかさむ原因になります。10年前の冷蔵庫と最新のモデルでは、年間の電気代が2倍近く違うことも。長い目で見ると省エネ家電に買い替えたほうが結果的にお得です。
生活費の見直しは、ただ「節約するため」のものではありません。
「自分が大切にしたいことにお金を使うため」の下準備なのです。
支出のバランスを整えることは、自分の価値観を明確にし、「どんな人生を歩みたいか」を考えるきっかけにもなります。数字に向き合うことで、自分自身とも向き合える。それが家計管理の、もう1つの醍醐味です。








