「定年後にやることがなく孤独な人」と「楽しく充実している人」の違いとは?
2025年12月31日 公開
「定年退職をしたものの、これから何をしたらいいのかわからない...」60代からのキャリアに悩む人は多いものです。ライフキャリアコンサルタントの金澤美冬さんに、定年後を充実させるポイントについてお話を聞きました。(取材・文:高松夕佳)
※本稿は、月刊誌『PHP』2024年1月号より、一部編集・抜粋したものです。
やりたかったことをやってみよう
私はもともと20~30代向けの転職エージェントとして独立しました。しかし、仕事を始めてみると、定年後の再就職を目指す50~60代の男性からの相談がとても多かったのです。
しかし、50代以上の求人は非常に少なく、みなさん「私の経験ではたいしたことないからですね」と肩を落とされる。その姿を見るのがつらくて、定年後、後悔しない道を探すお手伝いへと事業の方向を転換しました。
従来、定年後の過ごし方といえば、家でのんびりして余生を楽しむというイメージ。しかしいまや人生100年時代。60代は非常に元気です。気力も体力もあり、社会で活躍したいと思っている。人手不足なので需要もある。でも定年退職したとたん、後輩からは音沙汰がなくなり、家にいると妻からうとまれ、何をしていいかわからない。
そうならないためにも、同じ気持ちの人たちが情報交換しながら切磋琢磨できる場「おじさんライフキャリアコミュニティ(LCC)」を立ち上げました。
会社のために長年がんばってきた人は、自分の気持ちにふたをしていて、やりたいことが見つかりにくいようです。会社員として多くの責任を背負い、失敗が出世に響くような厳しい評価制度のもとで仕事をしてきた影響でしょう。世代的にまだ男性のほうが多いですが、男女雇用機会均等法以降、企業で働いてきた女性も同様です。
よっぽど強い思いがなければ、「何かをやりたい」と言う資格さえないと思い込んでいる人、ひたすらインプットするのに、失敗を恐れて結局行動に移さない人も多い。そういう方には、「やりたいかも」とか「好きかも」という程度のことでいい、まずはやってみましょうとお伝えします。
会社員の働き方と、定年後のライフキャリアの開拓方法は別物です。やってみなければ、自分が本当に好きなのかがわからないし、それが社会から求められているものかもわかりません。
やってみて違うと思えば、また別のことをすればいい。「三つのうち一つに芽が出ればいい」というぐらいのスタンスで試すと、失敗のダメージも少なくなります。
人との交流で選択肢を増やす
ブログで稼ぐかたわら、家具店のアルバイトで若い社員や顧客とかかわって心身の健康を保つ人、ずっとなりたかったカメラマンの仕事をする人、結婚相談員やキャリアコンサルタントとして活動する人......。
定年後、後悔なく生きている方の過ごし方は千差万別です。定年前後の方がいるコミュニティを見つけて参加してみましょう。多様な事例を目のあたりにすると、こんな生き方もあるのかと視野が広がり、選択肢を増やすヒントが得られます。
私の運営するコミュニティに、定年後はのんびりしようと考えている方がいました。しかし、定年後もやりたいことを追いかけている方々の姿を見るうちに、半年後には「個人事業主として業務委託を受けるくらいなら自分にもできるかも、と思えるようになった。起業など考えたこともなかった私にとって革命でした」と言われたのです。その方は再雇用の任期が切れる3年後を目指し、準備を始められています。
やりたいこととの相性や、それが社会から求められているかは、すぐにはわかりません。始めてから仕事になるまでに少なくとも半年以上はかかるので、お試し期間を含めて準備期間が3年あると安心です。実際、おじさんLCCの参加者の7割は50代、3割が60代。みなさん早くから意識的に活動をされています。
定年後に何をやればいいか見当もつかないという方におすすめなのは、興味のある学びや資格の講座に参加すること。友人づくりのコミュニティの門を叩くのは気恥ずかしい人も、学びの名目があると入りやすい。関心のあることを学んでいるうちに、自然と知り合いができていた、というのはいいですよね。
「できない」と言わない
定年後のライフキャリア形成には、大きなマインドチェンジも必要です。やるべき仕事や目標を会社が用意してくれた現役時代と違い、定年後はみずから問いや目標を立てなくてはなりません。
家族の理解も重要です。夫が定年を迎えて妻が最も心配するのは、安定した収入を失うこと。できれば再就職してほしいと思われているなかで元手のかかる事業を始めると、反対にあいやすいのです。妻から懸念を示され、やりたかった塾経営ではなく、別の仕事を始めた方もいます。「あのとき勝手に決めて勝手に始めた」と思われないよう、安心材料を少しずつ伝えながら話を進めるのがおすすめです。
定年後に後悔なく生きている人を見ているなかで、共通していることがあります。それは価値観が次々と更新される時代、他人の意見に耳を傾け、学ぼうとする姿勢があることです。また、「○○だからできない」と言わない方ばかりです。居住地や情報の少なさなど、みずからの置かれた状況を言い訳にせず、一つひとつ前向きに克服していく人が幸せになっています。
定年をきっかけに孤独に陥る方がいるのは今も昔も変わりません。しかし、そうなりたくない、どうにかしなきゃと思う方が出てきている。そういった方々のいきいきと活動する姿を見ていると、歳をとるのも怖くないと、私自身も励まされます。
【金澤美冬(かなざわ・みふゆ)】
早稲田大学政治経済学部を卒業後、三菱倉庫などを経て、転職エージェントとして独立。現在、「おじさん未来研究所」理事長を務め、「おじさんLCC(ライフキャリアコミュニティ)」なども運営している。著書に「おじさんの定年前の準備、定年後のスタート」(総合法令出版)などがある。
![月刊PHP 2024年 1月号 [悔いのない生き方]](/userfiles/images/book2/B0CN9QVCCZ.jpg)






