1. PHPオンライン
  2. 仕事
  3. 「AIに選ばれる宿」が生き残る? 熾烈な競争に勝つために見直すべき7つのポイント

仕事

「AIに選ばれる宿」が生き残る? 熾烈な競争に勝つために見直すべき7つのポイント

内藤英賢(合同会社Local Story代表)

2026年04月30日 公開

「AIに選ばれる宿」が生き残る? 熾烈な競争に勝つために見直すべき7つのポイント

世界と比べてAIの利用が遅れている日本。ところが、若い世代を中心に利用率は高まっており、旅行にAIを活用している人もいるでしょう。そうした状況も踏まえ、観光ビジネスもAIを上手く活用する必要があると、合同会社Local Storyの代表で観光業にも長年携わる内藤英賢さんは語ります。

本稿では、日本と海外のAI利用率の違いやAIに選ばれるために必要な要素について見ていきましょう。

※本稿は、内藤英賢著『観光ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

AI利用率日本30%/世界60%の衝撃

「全ての産業においてAIの影響は避けられない」

昨今では、そのように言われますし、事実AIの目覚ましい進歩を見て、そう思わない方はいないでしょう。観光業界も例外ではありません。AIが観光業界に及ぼすであろう様々な出来事について、未来予測も含めながら見ていきたいと思います。

そもそもですが、日本は生成AIの活用について世界より遅れをとっているという事実を認識しなければなりません。総務省が発表した「国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究22025」の2024年の生成AIサービスの利用経験調べによると、「使っている」と回答した人がアメリカ68.8%、ドイツ59.2%、中国81.2%に対して、日本は26.7%という低さとなっています。

さすがに2026年現在では、さらに上昇しているとは思いますが、2024年時点では異例の低さとなっていたのが実態です。このことは日本の観光ビジネスにおけるガラパゴス化を生み出しかねません。

なぜなら、世界の観光ビジネスは既にこのAIとの融合を見据えて動き出しているのに対して、日本ではユーザーたる旅行者の生成AI利用率が低いと、ビジネスとしてアプローチする動機付けが薄くなってしまうからです。したがって、今後の観光ビジネスを見据える上で、日本国内の動きしか見ないと世界の動きからは取り残される可能性があるので注意が必要です。

観光ビジネス×AIでもっともポピュラーな影響は「旅行先を探す際にAIを活用する」ということでしょう。すでに40%以上の人が、旅行の検索先にAIを活用していると回答しており、今後、加速度的に増えていくことが予測されます。

まずAI検索の特徴としては、キーワード型検索から自然言語検索になるということが言えます。端的に言うと、これまで「箱根 ホテル」などと検索していたグーグル型キーワード検索が、「4月8日に箱根で夫婦2人で行くのだけど、予算1人2万5000円以内で私たちの好みに合ったものを探して」と言うような自然言語での探し方に変化していくということです。

これは、AIがより詳細な情報を与えた方が質の高いアウトプットを出力するため、このような自然言語での入力がよいためです。生成AI活用が26%止まりの日本ですが、20代に限って言えば、40%以上が活用し、10台に至っては60%がAIを活用しているというデータもあるので、今後はAI検索をするユーザーが増えるのは必然と考えられます。

こうなると当然発生する議論は「うちの観光地、うちのホテルは、AIに選ばれるためにどうすればいいんだ!?」という議論です。まずは「AIで自然言語型検索をする層」というのが、相当数すでに存在しているということを理解しておくことが大事になります。

つまり、今後は旅行者に選ばれることと同じくらいに、AIに選ばれることが大事になってくるということなのです。これは、2000年代に起きたインターネット革命に近いインパクトとゲームチェンジを引き起こすことになると予測されます。

すでに、そのことを強烈に意識しているのは海外OTA(エクスペディアやアゴダなどの店舗を持たない旅行代理店)です。AIをうまく活用できれば海外OTAのビジネスをさらに成長させる可能性もありますが、AIの登場によって旅行者と事業者が直接結びつけば、自分たちの存在を脅かされかねないという危機感も一方で認識している訳です。

観光ビジネスにおいても、AIというゲームチェンジを引き起こしかねない要素をめぐり、熾烈な戦いの火ぶたが切って落とされているのです。

 

AI時代を生き抜くためのチェックリスト

AIがあらゆる産業に影響を及ぼすことが不可逆な時代において、私たち観光事業者は具体的に何をしなければならないのでしょうか?「AIに選ばれる(AIO)」ためのアクションを、明日から使えるチェックリストとして整理しました。

【AIに選ばれるための7つのチェックリスト】

①ターゲットの明確化

AIがマッチングしやすいよう、「誰のための場所か」を尖らせていますか?AIは「誰にとっての最適解かを探しています。「30代・女性」といった広い括りではなく、「都内で働く30代独身女性、週末は自然の中でサウナに入りたい人」いわゆるペルソナレベルまで言語化できているかが勝負です。

②よくある質問の充実化

ターゲットの悩みや興味(文脈)に応える記事や情報を発信していますか?単なる施設案内ではなく、ターゲットが検索しそうな悩み(例:「子連れで雨の日の箱根での過ごし方」)と、それに対する「答え」となるコンテンツを拡充する必要があります。

③クチコミの資産化

AIの推奨根拠となる「良質なクチコミ」を能動的に集めていますか?AIの推奨根拠の大部分は「実際の利用者の声」にあります。クチコミを増やす施策はもちろん、ネガティブな声への誠実な対応(AIは返信内容も読んでいます)も評価対象になっています。

④情報の統一

店名・住所・電話番号の表記は、全ネット上で一字一句統一されていますか?グーグルマップ、公式HP、SNS、OTAすべてで表記(Name, Address, Phone)が一致していないと、AIは「同一実体」として認識できず、評価が分散してしまう(認知漏れが起きる)リスクがあります。

⑤世界観の統一

写真や言葉選びのトーンを揃え、AIにブランドイメージを学習させていますか?公式HP、SNS、OTAの写真や文章の雰囲気がバラバラだと、AIはブランドの個性を学習できません。「この宿=〇〇な雰囲気」とAIに覚え込ませる統一感が必要です。

⑥権威性の活用

信頼できるメディアや専門家に言及され、AIからの信頼スコアを高めていますか?自画自賛だけでなく、信頼できるメディアやインフルエンサー、公的機関のサイトで紹介されているかどうかが、AIにとっての「権威性の担保」になります。

⑦構造化データ化

WebサイトをAIが読み取りやすい形式(FAQなど)に整備していますか?Webサイトは人間だけでなく、ロボット(クローラー)が理解しやすい構造や記述になっている必要があります。

これらは、いわばAI時代における「身だしなみ」です。これらをサボるということは、AI時代において「存在しない」ことと同義になってしまうからです。AIがあらゆる産業の根底を塗り替えている今、観光業界もその例外ではありません。AIがどうビジネスに組み込まれていくのかを理解し、使いこなす事業者とそうでない事業者の間では、集客効率や業務生産性において埋めがたい差が生まれるでしょう。

しかし、最後にひとつだけ、決して忘れてはならないことがあります。それは、「観光ビジネスは、結局のところ人間対人間のビジネスである」という真理です。この点こそが、AIに完全にディスラプト(破壊)される産業とは異なる、観光ビジネスの希望であり面白さでもあります。どれだけAIが発達して、便利で、完璧なガイドをしてくれても、人間味あふれる、じいちゃんばあちゃんのガイドの方が人間の心を動かす可能性が大いにある訳です。

AI対策を実施して、いかに上っ面をよくしてAIに選ばれたとしても、実際に訪れた時の「リアルの体験」がお粗末であれば、旅行者は二度と戻ってきません。そうなれば、悪い評判がデータとして蓄積され、結局はAIにも人間にも見放されることになります。

デジタル化が進めば進むほど、「生身の人間が接客する」ことの価値は高騰します。AIにはファンがつかないかもしれませんが、「あなた」という人間にはファンがつくのです。AIが推奨しただけの場所よりも、地域住民が「よく来たね」と笑顔で迎えてくれる場所の方が、また行きたくなる価値ある観光地になるのは必然です。

AIを最大限に活用しつつも、このヒューマニズムを忘れない観光地だけがAI時代にも支持されることは間違いありません。なぜなら旅行するのはAIではなく、心を持った人間だからです。

プロフィール

内藤英賢(ないとう・ひでさと)

合同会社Local Story代表

合同会社Local Story代表。早稲田大学政治経済学部卒業後、三菱UFJ銀行に入行。退職して、吉本興業の養成所(NSC)を経て約3年半芸人として活動。その後、観光業界へ転身し、株式会社アビリブに入社。株式会社プライムコンセプトの創業にも参画し、取締役副社長COOなどを歴任。宿泊施設や観光地のマーケティング・ブランディングを中心に300以上のプロジェクトを手がける。現在は地域活性化やDMO支援、講演活動など幅広く活躍している。
X:https://x.com/Naito_Local

関連記事

アクセスランキングRanking

前のスライド 次のスライド
×