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控えめな人が会話でやりがちなミス 互いに疲れない「聞き方」の工夫

三上ナナエ(研修講師)

2026年06月09日 公開

控えめな人が会話でやりがちなミス 互いに疲れない「聞き方」の工夫

相手が話している時にたくさん相槌したり、相手に共感しすぎて心が疲れてしまったり。思いやりがある優しくて控えめな人ほど、話をする時にそんな経験があるかもしれません。

では、控えめな人が持つ「相手を深く理解しようとする聞く力」をどのように活かせばよいのか――企業研修などの講師を多数手がける三上ナナエさんが、信頼を勝ち得るための聞き方を紹介します。

※本稿は、三上ナナエ著『控えめでも存在感のある人がしていること』(大和出版)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

相槌は「あえて減らす」

◎多すぎると、かえって話しづらい

相槌は多いほど良い、と思われがちです。「うんうん」「なるほど」「そうなんですね」、会話の合間にこれらの言葉がリズミカルに返ってくると、一見、会話が盛り上がっているように感じます。特に、自分を出すのが苦手で遠慮がちで控えめなタイプの人ほど、「相手を不快にさせてはいけない」「ちゃんと聞いていることを証明しなきゃ」というプレッシャーから、つい相槌の回数を増やしてしまいがちです。

しかし、この「安心させたい」という親切心が、皮肉にも相手の「話したい意欲」を削いでしまうことがあります。テンポが良すぎると、話し手は「自分の言葉が咀嚼される前に流されている?」と感じてしまいます。そして、矢継ぎ早の相槌は急かされているような印象を与え、相手が言葉を選ぶ間を奪ってしまうのです。

私がある研修に参加者として伺ったときのこと。「聞き方」のトレーニングをしているときに、「相槌が少し多くて、話し手のペースに合っていないかもしれませんね」と言われたことがあります。そのことに自分ではまったく気づいていなかったので、ハッとしたのと同時に、指摘してもらえてありがたい気持ちになりました。

話し手のペースと合わない相槌は、無意識のうちに「話しづらさ」を生み出します。まだ言葉を探している途中なのに「はいはい」と入れられたり、気持ちが高まる前に「わかります!」と先回りされたり、そんな経験はありませんか?

「今そこじゃないんだけどな......」と心の中でブレーキをかけてしまいますよね。「聞いてもらえている」というより「作業的に相槌を返されている」、そんな印象になってしまうのはもったいないことです。

◎「1秒待つ」「1つ減らす」まずはここから

相槌には、いくつかのコツがあるので、そのポイントを紹介します。

①声の代わりに、黙ってうなずく

声に出す相槌は相手の会話を妨げてしまうことがあります。それを減らすには、まず「無言でうなずく」に切り替えるのが近道です。その際には、表情、視線、姿勢で「聞いています」を伝えること。すると、言葉の相槌は自然と減らせます。沈黙=無関心ではありません。むしろ「ちゃんと考えながら聞いてくれているんだな」という安心感を届けることができます。

②相槌は「リズム」ではなく「意味」で入れる

相槌が多い人は、話の区切りではなく、自分の癖で入れてしまっていることが多くあります。そうならないために、相槌のルールをつくるのがひとつです。「感情が変化したとき」「結論っぽい一言が出たとき」こういったタイミングで相槌を入れると決めるのです。それ以外は、心の中で「今は待ち」と唱えましょう。

③相槌は「量」より「間」が大事

最大のコツはこれです。相手の話に被せるのではなく、ひと呼吸置いてから反応しましょう。すぐに「はい」「ええ」と返さず、できれば「1秒待つ」こと。この「間」があるだけで相槌の数は適正になります。

この3つのポイントはどれも大切ですが、一度に全部やろうとすると相手の話よりも自分の相槌のほうが気になってしまいます。それでは本末転倒なので、まずはひとつずつ。「今日は相槌をひとつ減らしてみよう」くらいがちょうどいいかもしれません。

<POINT>

「控えめな人」は「安心させたい」と思うあまり、相手の「話したい意欲」を奪うこともある

 

ポイントは「評価」も「解決」もしないこと

◎自分の心も疲れない「共感の仕方」

誰かの話を聞くときに、「相手と同じ気持ちにならなければ」と一生懸命心を寄せてしまうことがあります。相手が悲しんでいれば自分も胸が締め付けられ、相手が怒っていれば「それはひどいね」「許せないね」と感情を増幅させてしまう。これは共感しているようで、実は「同化」している状態です。

そうやって相手の感情を自分のようになぞり寄り添う姿は、一見すると理想的な聞き手に見えるかもしれません。しかし、話し手が本当に求めていることは「同化」ではないことが多いのです。

大切なのは、「あなたの話を受け止めています」を伝えることです。その際のポイントは、「評価」も「解決」もしないこと。たとえば、「辛かったんですね」と、相手の気持ちをそのまま繰り返して伝えてみましょう。そして、その後に、「かなり我慢されたのが伝わりました」など、少しだけ感情を具体化して返します。

評価も解決もせず、ただ「私はちゃんと受け止めました」と言葉で示すのです。感情をなぞりすぎない聞き方は、相手を突き放しているように見えるかもしれませんが、そうではありません。話し手が自分の感情を客観視し、気持ちを整理するきっかけを与えることにつながります。

◎大事なのは、相手との「境界線」

そして何より、感情をなぞりすぎないことはあなた自身が長く「聞き手」であり続けるために不可欠です。控えめな人は空気を読み、小さな変化に気づく繊細なセンサーを持っています。そのセンサーを全開にして相手の感情をなぞり続けてしまうと、あっという間にあなたの心はオーバーヒートしてしまいます。

話を聞いたあとにどっと疲れてしまった経験がある方は、話を聞くとき、心の中でこんな線引きをしてみてください。

・これは相手の感情

・私が感じているのは「理解しようとする感覚」

この一歩引いた視点があるだけで、心の消耗の度合いは大きく変わります。また、聞き終わった後におすすめなのが、「私は今、何に反応していたのかな?」と振り返ることです。

・「助けなきゃ!」と思った

・「怒り」に引っ張られた

明確な答えを出す必要はありません。ただ言語化するだけで、絡まった感情は自然と手放されていきます。

「ここまでは聞く、ここから先は背負わない」

控えめな人にとってのセルフケアは、感情の境界線を確認することなのです。相手が「私が悪いんですよね......どうしたらいいんだろう......」、こんな言葉を発した場合、正解を出さなきゃ、助けなきゃと思うと、自分に負荷をかけてしまいます。

線を引くには、「自分を責めてしまう気持ちが強くなっているんですね」と受け止め、「いくつか選択肢はありそうですが、まず整理をしたい事はどんな事ですか?」など、主導権を相手に返します。

評価も解決もしない、助けすぎないことが、相手の自立も、あなたの心も守っていきます。この境界線を持てるようになると、「聞く力」を長く安定して発揮できるようになります。

<POINT>

「控えめな人」は「共感」を越え、相手と「同化」し疲れてしまうことがある

 

「自分の考え」は「質問」へ変換しよう

◎「何て返せばいいんだろう......」と悩みがち

控えめな人は、話を聞いているときほど、心の中が騒がしくなります。

「何か返したほうがいいのかな」

「聞かせてもらったのだから役に立たないと......」

そんな思いが浮かんできます。それは、でしゃばりたいからではなく、せっかく話してくれた相手に誠実でありたいという思いからです。ただ、話を聞く場面で、その気持ちが強く出ると、相手の思考を先回りしてしまうことがあります。

「それは困りますよね」

「あなたは間違ってないですよ」

こうした発言は相手を思うからこそ口にしたくなるものです。けれど同時に「助ける側」と「助けられる側」を無意識のうちに分けてしまうことがあります。すると、相手との決まりきった関係性の中で会話をしないといけなくなるので、相手も自分もだんだん窮屈に感じてしまいます。

そうならないために、自分の気持ちはいったん、心の中に留めておきましょう。役に立ちたい気持ちは消さずに、まずは「今、私は役に立ちたくなっているな」と心の中で気づくことです。その気持ちは言葉で伝えずに、一度横に置いておきます。

◎「もう少し教えてもらえますか?」と伝えよう

そして、役に立ちたい気持ちを「質問」に変えてみてください。「答え」を与えるのではなく、「考えを支える問い」を与えるのです。たとえば...

・「それは困りますよね」と言いたくなったら、「その中で、特に引っかかっているのはどの部分ですか?」と聞いてみる。

・「あなたは間違っていない」と伝えたくなったら、「ご自身では、どこが一番悩ましかったですか?」と問いかけてみる。

質問に変えることで、相手は考える主体でい続けられます。相手の思考を一歩前に進めることができるのです。

質問は、相手の力を信じているという、静かなメッセージでもあります。ただ、良い質問をしようと構える必要はまったくありません。

「もう少し教えてもらえますか?」

「そのとき、何を一番大事にしていましたか?」

そんな素朴な問いで十分です。大切なのは、「理解しようとする姿勢」です。役に立ちたい気持ちは、抑え込むものでも、否定するものでもありません。形を変えれば、相手の考える力を引き出す支えになります。

控えめな人が差し出すひとつの質問は、場を動かす言葉ではなく、思考が深まる余白をつくる言葉です。聞くこと、待つこと、問いを添えること。それだけで、控えめな人はもう十分に、役に立っているのです。

<POINT>

「控えめな人」の質問は場を動かす言葉ではなく思考が深まるきっかけになる

プロフィール

三上ナナエ(みかみ・ななえ)

研修講師

研修講師・コンサルタント。新卒でオフィスシステム販売会社(現リコージャパン)に入社する。その後、ANA(全日本空輸)に客室乗務員として入社し、チーフパサーやグループリーダー、新卒採用支援などに従事。
退社後は研修講師と活動し、年間80回以上、受講者総数2万人以上の研修を担当。官公庁や大手金融機関など、さまざまな企業で研修を行なっている。
著書に『「感じのいい女性」が使っている気遣いの魔法』(PHP研究所)『マンガでわかる! 仕事も人間関係もうまくいく「気遣い」のキホン』『気遣いできる人は知っている! 会話のキホン』『その気遣い、むしろ無礼になってます』(すばる舎)など多数。

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