1. PHPオンライン
  2. 仕事
  3. 5分の遅刻にはキレるのに、残業は放置 今こそ見直すべき「日本人の時間感覚」

仕事

5分の遅刻にはキレるのに、残業は放置 今こそ見直すべき「日本人の時間感覚」

澤円(株式会社圓窓代表)

2026年08月06日 公開

5分の遅刻にはキレるのに、残業は放置 今こそ見直すべき「日本人の時間感覚」

天候などの影響で数分遅刻したら厳しく叱責されるのに、数時間の残業は「頑張っている」と評価される――そうした経験をしたことがある人もいるかもしれません。

そんな矛盾した時間感覚が日本企業の生産性を下げており、今こそ時間に対する考え方をアップデートすべきだと、株式会社圓窓代表の澤円さんはいいます。

誰にとっても有限な時間。本稿では、時間を有意義に使うための考え方について紹介します。

※本稿は、澤円著『思考をアップデートする全技術』(アスコム)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

人生に「終わり」があることをもっと意識する

「人の命は永遠ではなく、いつか必ず死ぬ――」

人間が生まれてから死ぬまでの時間は有限であり、その大前提は誰もがみんな平等です。もちろん寿命の長さはそれぞれ違うだろうし、いつどのタイミングで死ぬのかもわかりません。でも、いずれにせよ人生に「終わり」があることは絶対的な事実です。僕たちは、その「終わり」に向かって常に前へと進むしかなく、後退はできません。

つまり、自分の命の時間は増えることがなく、残り時間は減っていくしかない、ある意味では残酷なものであるということです。この事実を、ぜひ頭に刻み込んでほしいのです。そして「時間」に対する概念をアップデートしてほしいのです。

なぜなら、今あなたが直面している仕事や生活上の問題の多くは「時間をムダにしていること」「時間のムダに対する抵抗感が薄れていること」によって引き起こされているものがほとんどだからです。

「時間は有限であり、ものすごく貴重なもの」

これが本当に納得できたら、あなたの未来は俄然、明るくなるでしょう。まず、自分の時間の使い方が丁寧になり、その時間をもっと有意義に過ごそうとして「質」の面を大切にし始めます。同じ時間を過ごすなら当然快適なほうがいいし、楽しいほうがいいし、意義あるほうがいいですからね。また、自ずと他者の時間をムダに奪うこともなくなります。自分の時間を大切にできるようになると、自分だけでなく周りの人間まで幸せにしていくのです。

今この瞬間に僕たちに与えられているものを考えたとき、場所や地位や属性などは個人差が大きいかもしれない。でも、時間だけは誰にも等しく与えられています。そういう意味では、みんな同じ条件のもとで生きていると言えるかもしれません。たとえ社長であっても、新入社員であっても。

 

意味のないルールや時間の考え方を破ってみる

以前、僕の友人がこんな話をしてくれました。

ある日、都内に大雪が降って会社に遅刻をしてしまったそうです。前日から雪の予報だったので30分以上早く家を出たものの、案の定どこもかしこも混雑していて、結局、彼は5分の遅刻をしてしまいました。自分と同じような人もちらほらいたそうです。

「この天候じゃ仕方ないよな」

そう思った瞬間でした。

「雪が降るのはわかっていたはずだ!なぜもっと早く家を出ないんだ!」

いきなり部長がキレました。あまりの剣幕にみんなは驚いて口も利けません。そんな様子を見てさらに弾みがついたのか、部長は、そこから30分以上も部下を立たせたまま説教を続けたそうです。

あなたは、この出来事についてどう思いますか?5分の遅刻に対して30分以上の説教......。これって、僕流に言わせてもらえば完全な「暴力」だし「時間泥棒」です。そして、その部長は遅刻に対してキレたことで「私はマネジメント能力がゼロなのだ!」と大声で叫んだようなもの。

僕は友人に「その会社、今すぐ辞めたら?」とアドバイスしたのですが、こんなことが日本の会社では結構まかり通っています。もしかしたら、あなたも似たような出来事に遭遇した経験があるかもしれません。

こうした「遅刻に厳しく、終わりの時間にはゆるい」のは、日本企業特有のマインドセットです。朝は数分遅刻しただけでガミガミ怒られるのに、夜は数時間残業していても、怒られるどころか「頑張っているな」と褒められることさえあります。

でも、よく考えてみてください。それぞれ部署ごとにやることが違うのに、朝9時に全社員が揃って出社しても1円にもならないではありませんか。また、ダラダラと残業して生産性が高まるとはとても思えません。

会社とは、あくまでも利益を出す場所なので、これらはまったくもって意味のない行為。そうした意味のないルールや時間の考え方を、今こそ一人ひとりがアップデートしなければならないのだと思います。

「それって本当に効率がいいの?」

「そのことで何かを生み出しているの?」

「誰かが幸せになるものなの?」

一人ひとりが自覚的に、自らに問いかけることが大切なのです。

 

「公平」を重視するあまり、生産性を下げていることに気づく

「なぜ全社員が同じ時間に出社する必要があるのでしょうか?」

こんなことを言うと、「現場はもう動いているのだ!」と言い返されるのがオチです。朝8時半や9時に出社時間を定めている多くの会社は、工場や店舗や工事現場を基準にして出社しているということなのです。

「現場でトラブルがあったときに連絡がつかなければ問題になる」とは、もっともらしい理由かもしれません。でも、これだけスマートフォンが普及した時代に、来るかどうかもわからない連絡をオフィスで待ち受ける必要があるのか、という疑問も湧いてきます。

「会社に重要な書類が置いてあるんだ!」

確かにそうかもしれませんが、そんなことではその会社は交通機関が止まった瞬間に、すべての機能が停止することになってしまいます。つまり、BCP(事業継続計画)がむちゃくちゃなわけです。むしろ、どこからでも情報にアクセスできるように整備するなどして、いかなるときも業務が止まらないようにすることのほうがよほど重要です。

業務の効率だけを考えれば、全社員が同じ時刻に出社する必然性はありません。なのに、なぜみんなが朝9時に行かなくてはならないのでしょうか? 結局のところ、こんな理由だったりします。

「不公平になる」

「現場は早く出ているのだから、本社や本部もそうするほうがいい」という考え方ですね。現場では時間で区切ってタスクを回さなければならない面もあるので、みんなが同じ出社時間である必然性はあるかもしれません。でも、本社や本部の社員には何の関係もなければ、必然性もありません。

ましてや朝9時に出社しようとすると、電車も道路も混んでいるし、エレベーターは長蛇の列。これでは、社員の生産性はまったく上がりません。であれば、朝7時に出社して、15時に仕事を終わらせて帰るほうがよほどいいでしょう。もちろん、昼ごろに出社して夜に終わることだってありですよね。

そうした考え方ができない会社が多いように思います。なぜかというと、心のどこかに「現場は早くから動いていて悪いから、それに合わせよう」という日本人特有の気質があるからではないでしょうか。僕はそう感じてしまうのです。時間についてアップデートする第一歩は、意味のないルールに疑問を持つことからスタートしましょう。

プロフィール

澤円(さわ・まどか)

株式会社圓窓代表

株式会社圓窓代表。武蔵野大学専任教員。元・日本マイクロソフト株式会社業務執行役員。マイクロソフトテクノロジーセンター長などを歴任。
現在は、プレゼンテーション、コミュニケーション、グローバル人材育成を中心に講演・研修・メンタリングを行い、大手企業の顧問やスタートアップ企業のメンターとしても活躍。著書に『メタ思考』(大和書房)『The Giver 人を動かす方程式』(文藝春秋)などがある。

関連記事

アクセスランキングRanking

前のスライド 次のスライド
×