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芥川賞に『ゾンビ回収婦』 小砂川チトさん「AIに負けても、小説を書くのはやめない」

Moguru編集部

2026年07月17日 公開

芥川賞に『ゾンビ回収婦』 小砂川チトさん「AIに負けても、小説を書くのはやめない」

2026年7月15日、第175回芥川龍之介賞の選考会が都内で開かれ、小砂川チトさんの『ゾンビ回収婦』(『群像』2026年5月号掲載)が受賞作に決まりました。選考会後の記者会見では、選考委員を代表して奥泉光さんが選評を述べ、小砂川さんが受賞の喜びや作品に込めた思いを語りました。

 

奥泉光さん「自由な虚構の世界を作り上げた」

小砂川チト著『ゾンビ回収婦』

受賞作『ゾンビ回収婦』は、AIの普及によって夫婦ともに仕事を失った主人公が、VR空間でゾンビの亡骸を回収する掃除婦として働き始める物語です。現実と仮想世界を行き来しながら、働くことや人間らしさ、社会の中で役割を担うことの意味を描いています。

選考委員を代表して選評を述べた奥泉さんは、小砂川さんがこれまで、人間と人間ではない存在との交流を描いてきたことに言及しました。本作では、主人公がVRゲームの世界に存在するキャラクターたちと関わっていきます。

奥泉さんは、現実世界とVR空間を単純に対立させるのではなく、両者を織り交ぜた新たな世界を立ち上げていると評価。「小説の一つの大きな魅力である、自由な虚構の世界を作り上げることを徹底している」と述べ、小砂川さんのスピード感のある文体によって、虚構世界を徹底して成立させた点を受賞理由に挙げました。

また、AIに仕事を奪われつつある人間の状況を背景に、変化へ過剰に適応しようとする主人公をアイロニカルに描いている点についても触れ、一種の社会批判として読むことができるとの意見が選考委員から出たことも明かしました。

 

「人生にこういうことが起こることもあるんですね」

小砂川チトさん

会見に臨んだ小砂川さんは、「今、胸がいっぱいで。人生にこういうことが起こることもあるんですね」と、驚きと喜びをにじませました。

AIの普及に伴い、小説のあり方が変化していく可能性について問われると、「たとえAIがどれほど上手に面白い小説を書き、それに負けることがあったとしても、書くのをやめることはない。自分が『書きたい』と思う限りは、作品を作り続けていきたい」と語りました。

また、作品に描かれた働き方や生き方に触れ、それぞれが自分に合った生き方を選べる社会への思いを明かしました。全身全霊で行動する生き方だけでなく、「この場にとどまりたい」「ゆっくりしたい」と考える人もいるとして、各自が自由に生き方を選べる世の中になってほしいと話しました。

小砂川さんにとって、『ゾンビ回収婦』はこれまでとは異なる方向へ踏み出した作品でもあったといいます。作品を重ねるごとに、純文学的なものから少しずつ遠ざかってきたような感覚があると説明し、今回の受賞についても「まだ半信半疑で、いいのかしらという気持ちがあります」と率直な心境を語りました。

一方、創作においては、かっこよさだけでなく、かわいらしさや人懐っこさを備えた作品を目指しているといいます。「次の作品も同じように、お褒めいただける作品を作りたい」と、今後の創作への意欲を示しました。

 

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