1. PHPオンライン
  2. ニュース
  3. 山本周五郎賞が「すごく欲しかった」 蝉谷めぐ実さん『見えるか保己一』受賞で喜び語る

ニュース

山本周五郎賞が「すごく欲しかった」 蝉谷めぐ実さん『見えるか保己一』受賞で喜び語る

Moguru編集部

2026年07月02日 公開 2026年07月02日 更新

山本周五郎賞が「すごく欲しかった」 蝉谷めぐ実さん『見えるか保己一』受賞で喜び語る


蝉谷めぐ実さん

第39回山本周五郎賞の贈呈式が、2026年6月26日に開催されました。山本周五郎賞は、すぐれた物語性を有する新しい文芸作品に贈られる賞です。今回の受賞作は、蝉谷めぐ実さんの『見えるか保己一』(KADOKAWA)です。本稿では贈呈式の様子をレポートします。

 

「強い個性と創造力」が発揮された作品

伊坂幸太郎さん
伊坂幸太郎さん

受賞作『見えるか保己一』は、江戸時代後期に活躍した全盲の国学者・塙保己一を主人公とする長編小説です。幼少期に失明しながらも学問を志し、やがて『群書類従』の編纂という大事業に取り組んだ人物を描いています。

選考委員を代表して選評を述べた伊坂幸太郎さんは、本作に強い個性と創造力を感じたと語りました。当初は実在の人物を扱うことで作者の個性が出にくい作品かもしれないと考えていたものの、実際には「読んでいてドキドキする」小説だったと、伊坂さんは振り返りました。

さらに本作について「他の作家が書いたら多分こうはならない」と述べ、史実を題材にしながらも、蝉谷さんならではの小説として成立している点を評価しました。

 

「小説家になって良かったと心底思う」

左から、川端康成賞を受賞した古川真人さん、蝉谷めぐ実さん、三島由紀夫賞を受賞した豊永浩平さん
左から、川端康成賞を受賞した古川真人さん、蝉谷めぐ実さん、三島由紀夫賞を受賞した豊永浩平さん

続いて登壇した蝉谷さんは、山本周五郎賞への思いを率直に語りました。

自身が候補に挙がっていない時でも、選評を読み込んできた賞だったと明かし、「すごくすごく欲しかった賞だったので、こうして候補に挙げていただいて頂戴できたこと、心から嬉しく思います」と喜びを述べました。

また、伊坂さんの選評をその場で聞けたことについて、蝉谷さんは「小説家になって良かったなと心底思う」と話しました。

蝉谷さんは、本作『見えるか保己一』で、実在の人物を主人公にすることに大きな覚悟が必要だったと述べました。人物の一生を小説として描くためには、どうしても再構成する部分が生じます。その行為が失礼にあたるのではないかという迷いを抱えながらも、保己一に向き合ったといいます。

さらに、全盲の人物を描くことについても、慎重に取り組んだと話します。自分に都合のよい形で解釈していないかを考えながら、全盲の文化人類学者である広瀬浩二郎さんに取材を重ねて執筆。完成した作品について広瀬さんから肯定的な言葉をもらえたことを、蝉谷さんは「大切にしたい言葉」として受け止めていると明かしました。

最後に「小説は薬にも毒にもなる」という認識のもと、「この一文が人を傷つけるかもしれないし、でも同時に救うかもしれない。だからこそ今後も覚悟と責任を持って書き続けていきたい」とスピーチを締めくくりました。

 

関連記事

アクセスランキングRanking

前のスライド 次のスライド
×