文鳥は豊かな感情や感性をもち、人と心を通わせるコンパニオンバードとして人気が高い小鳥です。
今年5月に刊行された書籍『文鳥のいいぶん。』(日東書院本社)では、文鳥研究の第一人者である相馬雅代さん(北海道大学大学院理学研究院生物科学部門教授)監修のもと、最新研究でわかった文鳥の50のヒミツが、表情豊かで愛らしい写真とともに紹介されています。飼い主なら気になる文鳥の健康についてはもちろん、文鳥の意外な生態や能力、人間のような感情・心理などについて、多角的に解説。
本稿では、『文鳥のいいぶん。』の一部を再編集し、文鳥の「恋」と生存戦略についての考察を紹介します。(画像は全て『文鳥のいいぶん。』より)
まるで「大きくなったらパパと結婚する」と言う女の子

人間の女の子も小さいころは「大きくなったらパパと結婚する」などと言うものですが、文鳥のメスも似たところがあるようです。
まるで知らない歌よりも、自分の父親の歌に似た歌を聴いたときに強く反応することが実験でわかっています。そう、文鳥のメスはファザコンなのです。
これは文鳥に限ったことではなく、近縁種のキンカチョウも同じ。逆も然りで、キンカチョウのオスは母親に似た見た目のメスを好みます。オスはマザコンなのです。
さて、文鳥のメスはなぜ父親似の歌を好むのでしょうか。
文鳥は父親の歌を代々継承するので、一族の歌には共通点が多くあります。父親似の歌をもつオスは自分と同じ地域で暮らし、その地域環境に精通したオスであることを示します。
そうしたオスとペアになることは生存に有利。文鳥は定住性の鳥なので、地の理があるパートナーを選びたいと思うのかもしれません。
ただファザコンだったりマザコンだったりすると、まさに自分の親やきょうだい(親に似た見た目や歌をもつ)をパートナーに選んでしまわないのか気になりますよね。でも近親交配は遺伝病などのリスクが増え、生存には不利になります。
ウズラの実験では、①幼少期に接していた異性、②まったくなじみのない異性、③その中間の少しだけ接したことのある異性がいると、③を選ぶそうです。近すぎず遠すぎないパートナーが最適なのでしょう。
難しい歌を歌えるオスはモテる メスは単調な歌よりも複雑な歌が好き

文鳥のメスは音のレパートリーが多く複雑で長い求愛歌を好むことが実験でわかっています。
優秀なオスは音のレパートリーが広く高度なトリルを出すことができます。また長く歌えるのは体力があることを示します。
つまり難しくて長い歌を歌えるのは優秀なオスのサインということ。メスが好むのも当然ですね。
ちなみに文鳥は孵化後5か月ごろに歌が固定化しますが、そのときとその1年後では1年後のほうが歌が上手になっているそう。1年後の歌は音域が広く、テンポも少し速い高度なものになっているのです。毎日の練習のたまものなのでしょう。
ということは、5か月齢の若い文鳥より1歳過ぎのオスのほうが魅力が増しているのですね。
文鳥は父親の歌を継承するとお伝えしました。もし父親の歌が音のレパートリーが少なくあまり魅力的でない歌だとしたら、その息子も孫も魅力的でない歌を継承し、メスにモテない一族が続いてしまうのでしょうか?
メスにモテない歌しか歌えなければ、いつかその一族は途絶えてしまうのではと心配になります。
実は、息子は父親の歌を100%継承するわけではありません。
飼育下のジュウシマツでは、10%ほど父親以外の要素が入ることがわかっています。鳴禽(めいきん)は群れで暮らすので、父親以外の歌も聴こえる環境で育ちます。基本は父親の歌を継承しつつも、別のオスの歌の要素を取り入れて自分の歌に完成させることが推測されます。息子は父親の歌にアレンジを加えてオリジナリティーを出すのですね。
ということは、もし父親の歌があまり魅力的でないとしても、努力次第で魅力的な歌にバージョンアップしていけるのかもしれません。








