動物写真家・岩合光昭さんが写す“自然体な猫”の秘密「まずは母猫に撮影許可をもらって...」
2026年02月21日 公開
一緒にハトを見上げる(イタリア・チンクエテッレ)
岩合光昭さんは日本を代表する動物写真家。NHK BS「岩合光昭の世界ネコ歩き」は今年で14年の長寿番組となり、各地で開催される写真展も大盛況です。「猫写真といえば岩合さん」は多くの日本人の共通認識になっています。『スタンド・バイ・ニャー』(辰巳出版)は、そんな岩合さんの猫写真集の中でも「猫と人」をテーマにした異色の一冊です。その魅力と見どころを担当編集者が語ります。
猫を見ながら気分は世界旅行

田んぼが広がる村で一緒に暮らす猫と少女(ブータン・イビサ村)
――人と猫に焦点を当てた岩合さんの写真集は珍しいですね。
【担当】私の知る限り唯一無二です。岩合さんの魅力は、猫そのものだけでなくて、彼らが住んでいる土地や、そこでの暮らしぶりまで一緒に感じさせてくれるところだと思っています。人と一緒の写真は、関係性が出ますし、猫との日常が垣間見えるのが魅力です。
――タンザニア、オーストラリア、ギリシア、アメリカ、タイ、ペルー......5大陸制覇していますね。
【担当】南極以外は全大陸制覇ですね。34ヶ国で撮られた写真を収載しています。その点、野生動物と猫を求めて世界の隅々まで旅をしてきた岩合さんらしい写真集かもしません。
南米のアンデス山脈やスイスのアルプス山脈、ベトナムの世界遺産のハロン湾、タイのゾウなど、後ろに写っている景色が絶景と珍しいものにあふれています。家や街並みも地域によって個性がありますから、ページをめくっているだけで世界一周旅行をしている気分になります。
でも、どこへ行っても当たり前のように猫が写っているのが一番の驚きかもしれません。
いい猫を撮る秘訣はコミュニケーション

朝の光とシルエットが美しい砂漠と猫。人物は現地在住の日本人女性(アラブ首長国連邦・ルブアルハリ砂漠)
――どうしてどこの猫もこんなに自然体なのでしょうか?
【担当】猫が一番信頼している人としっかりコミュニケーションを取るからではないでしょうか。日本での取材でも、岩合さんは猫のご主人ととても丁寧に接するし、相手のお話をよく聞いて、関係を作ってから撮影に臨んでいるようです。
両親と親しくしていると、人見知りの子どもが話しかけてくることがありますよね?猫や犬にも同じようなところがあって、やっぱりお世話をしている人と親しくなるのがとても大事です。
その上で、猫にも目線を合わせて丁寧に接します。挨拶して優しく言葉をかけながら、撮影を許してもらうという感じでアプローチしていく。すると猫がいつも通りの姿を見せてくれるのでしょう。
「なるほど」と思ったのは、子猫を撮る時、まず母猫に許可を得るというお話です。猫に限らず、動物は小さい子どもを育てていると見慣れない人間を警戒するし、敵と見なすこともあります。いきなり子猫を撮ろうとしたら、猫を緊張させてしまうかもしれません。だから、まず母猫の信頼を得てから、子猫を撮らせてもらうと。
自然体の猫が撮れるのは、動物を知り尽くしているからだし、カメラを向けるまでの準備がとても丁寧だからだと思います。
世界のどこにいても同じように輝く動物

先代猫のために脚にタトゥーを入れる少女と現在の愛猫モンスン(ノルウェー・アルタ郊外)
――人もリラックスしているようです。
【担当】みんな猫と一緒だからではないでしょうか。写真集には、老若男女、住んでいる国も地域、民族衣装からスーツまで着ている服もさまざまな人々が登場します。そういう違いを越えて、みんな自然体で、とってもいい顔をしています。「猫ってこんなに人の心を丸くして、こんなにも幸せにするものなんだ」と、改めて気付かされました。
「猫にかける愛情は世界共通なんだな」と感じることもできます。例えば、ノルウェーでは、脚に猫の足あとのタトゥーを入れている少女が出てきます。このタトゥーは大好きだった先代猫のために入れたものだそうです。彼女が現在の猫を抱く手つきやまなざしを見ていると、亡くなった猫への思いが垣間見えて胸を打たれます。

植物を編んだ浮島で湖上に暮らす猫と人(ペルー・ティティカカ湖)
――そして猫がどこにいても場になじんでいますね。
【担当】そこが猫という動物の不思議なところです。雄大な景色や、大きな仏像やゾウみたいに珍しいものと一緒に写っているのに、猫の存在感がどの写真でも際立っている。それでいて空間にちゃんと納まって絵になっている。
岩合さんは猫以外のものもしっかり撮るし、猫がいる空間全体を撮ろうとします。だからいっそう猫の凄さが際立つのではないでしょうか。
パリの真ん中にいても、カンボジアの農村にいても、アラブの豪邸にいても同じSSように輝き、周りと調和して他を引き立てる。こんな動物は他にいないのではないでしょうか。







