子育て中に「自由時間を作れる人」の共通点 夫婦で意識したい4つのポイント
2026年10月08日 公開
子育てをしていると、自分の時間が持てない――そんなふうに感じている人も多いでしょう。1人で暮らしていた時よりも考えなければならないことが多く、自分でも気づかないうちに疲れ切っているということもあるかもしれません。
家事・育児は考える時間が増えるため、「家庭内の決め事を仕組み化することが大切」と語る、言語学者で明治大学教授の堀田秀吾さん。ここでは、夫婦で共有したい4つのポイントを紹介します。
※本稿は、堀田秀吾著『心理学×脳科学×行動経済学で科学的に証明された 悩まない人の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
疲れている日の最低ラインを決めておく
体調が悪い日や子どもの看病で余裕がない日ほど、何を優先すべきかを考える力そのものが落ちています。その状態でやるべきことを1からリストアップしようとすると、時間もエネルギーも余計にかかります。
対策は、あらかじめ「やらないこと」を決めておくことです。たとえば、お風呂に入る、歯を磨く、食器を洗う。この3つができたら十分、それ以外は明日に回してよし、というルールを先に作っておくのです。
こうしてあらかじめ線を引いておく工夫は、実は「立ち直る力」そのものの土台でもあります。ミネソタ大学のマステンは、子どもの発達と回復力を長年研究する中で、困難やストレスに直面してもうまく適応し、立ち直る力(レジリエンス)は特別な才能ではなく、誰もが持っている力だと述べています。日常の中で自分を立て直す小さな工夫を積み重ねた人ほど、危機の場面でも倒れにくいとマステンは述べています。
よく晴れた休日に紙とペンを用意して、自分が体調を崩した日・家族が病気になった日・心が折れた日、それぞれの「やらないこと」を3つずつ書き出しておきましょう。書いておくだけで、いざという日の自分が助かります。パートナーにも共有しておくと、しんどい日に「今日は最低ラインだけで」と一言伝えるだけで相手の理解も得やすくなります。
基準を余裕のある日に決めておく理由は、疲れているときには冷静な判断がしづらいためです。一度決めておけば、体調を崩すたびに1から考え直す必要がなくなり、繰り返し使える安心材料になります。
【今日すぐできること】
・体調不良・看病・心が折れた日の「最低ライン」を晴れた休日に書いておく
・「これさえできればOK」を家族と共有しておく
プライベートの予定を先に入れる
自分の予定は後回しにされやすいものです。カレンダーは仕事の予定や「やるべきこと」でいっぱいになり、空いているところに自分のための時間を入れようとしても、翌週、また翌週と持ち越されてしまいます。
予定を丁寧に考えようとする人ほど、自分のやりたいことが後回しになってしまう傾向があります。他人との約束は「守らなければ」という意識が働くのに対し、自分ひとりの予定はいくらでも動かせるものとして扱いがちだからです。
ミズーリ大学セントルイス校のマカンは、時間管理に関する調査を行いました。目標を立てる、優先順位を決める、計画を立てる、スケジュールを組む。こうした時間管理のスキルが高い人ほど、仕事の満足度が高く、仕事関連のストレスや体の緊張が低いことがわかりました。
なかでも強く関係していたのが、「自分の時間を自分でコントロールできている」という感覚です。これは、実際にどれだけ自由な時間があるかではなく、自分で選んで時間を確保したという実感があるかどうかが重要なのです。つまり、スケジュールを受け身で埋めるのではなく、自分から先に枠を確保することで、心の安定につながっていくということです。
ここで取り入れたいのが、プライベートの予定を仕事よりも先にカレンダーに入れてしまう方法です。月初の日曜夜に10分だけカレンダーと向き合う時間を取り、今月の楽しみを3つ書き込んでみてください。書き込んだ時点で、その時間は「動かせない予定」として扱います。延期はしてもキャンセルはしない、ということをルール化します。
空いている時間にプライベートを入れるのではなく、プライベートを先に入れて、残った時間で仕事を組み立てるのです。この順序を変えるだけで、自分の予定が後回しにされる状況を防ぎやすくなります。
【今日すぐできること】
・月初めに「今月の3つの楽しみ」をカレンダーに入れる
・書き込んだ予定は延期してもキャンセルはしない
「夫婦の取り決め」を見えるようにする
夫婦の間で負担になっているのは、作業そのものの手間だけではなく、常に何かを気にかけ続けなければならないという「状態」も含まれています。献立の組み立てやゴミ出しの曜日確認など、名もなき家事・育児のうち、パートナーがやっていると認識しているのは実はほんの一部かもしれません。
この負担感は、実際に手を動かしている時間だけを見ていては気づきにくいものです。休憩中や睡眠中にも頭の片隅で気がかりとして残り続けていて、体を休めていても心が休まらない原因の1つになっています。
ハーバード大学のダミンガーは、家事にかかる「頭を使う負担」について研究しました。35組ほどの中流家庭にインタビューを重ねた結果、家事には4つの見えない側面があることがわかりました。
①予測(何が必要になるかを先回りして考える)
②特定(選択肢を調べて絞り込む)
③決定(最終的な判断を下す)
④モニター(決めたことが進んでいるか見守る)
目に見える物理的な家事は、夫婦である程度分担されています。ところが、この4つの見えない家事については、多くが妻に偏っているという事実が明らかになりました。なかでも「予測」と「モニター」は、ほぼすべての家庭で女性が担っていたと報告されています。
これらの作業は目に見えません。だからこそ、実際にどれだけの負担がかかっているかが担っていない側には伝わりにくいのです。この見えにくさこそが、夫婦間のすれ違いの大きな原因になっています。
ここで取り入れたいのが「夫婦の取り決め」を紙やアプリで見えるようにすることです。「保育園の準備」を「服を選ぶ・着替えさせる・連絡帳を書く・水筒を洗う」と分解して書くのがコツです。分解することでこれまで見えなかった工程が明らかになり、パートナーが「自分は何をやっていなかったのか」に気づけます。
月に一度、夫婦で話す時間を作って、「これ、最近どっちがやってる?」と確認してみてください。感情的に責めるより、紙に書き出して淡々と確認するほうが、夫婦間の話し合いも落ち着いて進めやすくなります。
【今日すぐできること】
・「保育園の準備」など、見えない家事を工程ごとに書き出す
・月に一度、夫婦で分担を見直す時間を作る
完璧な親を目指さない
子育てをしていると、理想と現実のギャップに悩んでしまうことがたびたびあります。手作りのお弁当、寝る前の読み聞かせ、充実した休日の過ごし方。SNSを開けば、まるで親子の理想像ともいえる様子が流れてきます。
こうして理想と現実を比べてしまうこと自体は、誰にでもあることです。問題は、その差を「自分はダメな親だ」という評価に結びつけてしまうことです。
ルーヴァン・カトリック大学のリンらは、ベルギーとポーランドの724人の親を対象に、「完璧な親を目指す気持ち」と「親バーンアウト」の関係を調べました。親バーンアウトとは、子育てに力を注ぎ続けた結果、心身ともに消耗しきってしまい、子どもへの関わり方にも支障が出てしまう状態のことです。
その結果、危険因子は「よい親でありたい」という願いそのものではないとわかりました。本当に危ないのは、間違えたらどうしようと心配し、できなかった自分を責め続ける「不安」の側面です。理想に届かない自分を責め続けることが、燃え尽きにつながっていたのです。
ただし、自分や相手の感情に気づき、理解する力が高い人では、この悪影響が弱まっていました。つまり、理想を持つこと自体は問題ではなく、理想に届かないときに自分とどう向き合うかが結果を左右するのです。
「よい親であるための基準」は、多くの場合、自分自身が育った環境や周囲の期待から作られたものであり、必ずしも今の自分の状況に合っているとは限りません。
うまくいかなかったときは、頭の中の「よい親であるための基準」から項目をひとつ減らしてみてください。基準を減らすことは、子どもへの愛情を減らすことではありません。むしろ、無理のない基準で長く子どもと向き合い続けられることのほうが、子どもにとっても安定した環境になります。
パートナーや友人にも、この「よい親であるための基準」を見せて話してみると、自分だけが背負っていた基準に気づくきっかけになることがあります。
【今日すぐできること】
・完璧な親を目指さない
・「よい親リスト」から項目をひとつ減らしてみる









