ビジネス書を中心に1冊10分で読める本の要約をお届けしているサービス「flier(フライヤー)」(https://www.flierinc.com/)。
こちらで紹介している本の中から、特にワンランク上のビジネスパーソンを目指す方に読んでほしい一冊を、CEOの大賀康史がチョイスします。
今回、紹介するのは『AIはニュータイプの夢を見るか ~人工知能と想像力のあいだ』(三宅陽一郎、青土社)。この本がビジネスパーソンにとってどう重要なのか。何を学ぶべきなのか。詳細に解説する。
AIは全知全能で万能な存在になっていくのか
あなたはAIを、人を支えるパートナーだと考えているでしょうか。それとも、人類を脅かす存在だと考えているでしょうか。
日本には、鉄腕アトムやドラえもん、ガンダムシリーズのハロのように、AIに人格のようなものを見出し、愛着さえ抱く文化があるとよく言われます。こうしたAI観は海外から見ると独特に映るようですが、その背景には西洋との思想的な違いがあるともいわれます。
一方、西洋では、AIに全知全能の神のような知性を持たせようとする方向で開発が進んでいるように見えます。AIを人類への脅威とみなす傾向も、欧米のほうが強い印象です。
技術が急速に進歩するとき、人間の想像力はしばしばその先を行きます。インターネットがそうだったように、さまざまな要素技術が統合されて形になるまでには時間がかかります。しかし想像力は、それよりも速いスピードで世界の姿を描いていきます。
本書は、コンテンツ論を軸にしながら、AIと社会の行く先という、いままさに人類が頭を悩ませている問いに挑んだ一冊です。そして未来に想像を巡らせるうえで、SFを描くアニメやゲームは格好の題材となります。
著者は数学と物理学を学んだ人工知能の専門家であり、同時にゲームなどのコンテンツ制作にも携わってきた、まさに時代が求める経歴の持ち主です。そんな著者が見通す未来を覗けるのは、本を手に取る人だけの特権かもしれません。ここでは、本書の中から印象的な箇所を紹介していきます。
AIとニュータイプ
『機動戦士ガンダム』は皆さん知っていると思います。ここではその本質に迫った考察がなされています。初代ガンダムシリーズは主に地球やその周辺で暮らす人に対して、宇宙の円筒型のコロニーで暮らすスペースノイドと呼ばれる人、特に技術が高度に発展したサイド3と呼ばれるエリアの人々との戦争が描かれています。
そこで登場するのがニュータイプと呼ばれる特定の才能が開花した少数の人々です。ニュータイプ特性の強さは人によって少しずつ違いがあるのですが、主人公のアムロ・レイがその代表で、感性や直観が特に強い人物として描かれます。このニュータイプの特性はガンダムなどの戦闘用兵器(モビルスーツ)の操縦で高度に発揮されやすいため、戦争に利用されやすいという悲しい側面もあります。
著者はなぜニュータイプと呼ばれる人が登場しうるのかについて、洞察を深めています。宇宙世紀になり人が世界を認識するフレームに変化が起きることがポイントです。人の周りの世界が宇宙に変わることが第一の理由で、人間が戦闘用のモビルスーツを操縦することで身体を拡張している感覚になることが第二の理由としてあげられます。それらは拡張されたフレームを人々に提供します。
また、アムロと対峙する敵としてララアという少女が登場し、戦闘中に2人が世界と溶け込み合った感覚を持つ有名なシーンがあります。そこでも新たなフレームによりニュータイプの人々の世界が変容し、人と人が高度にわかりあえるようになる、とするビジョンが描かれているように感じられます。
このあたりは仏教思想で重んじられる身体感覚に近いように感じられます。ニュータイプは運動能力や論理的思考力などの能力が進化したものではなく、感受性や認識の変化が起きるというのも、東洋思想らしいものと言えるかもしれません。観たことのある方はアムロとララアがわかりあうシーンを思い出すと、東洋思想の理想を感じられるように思います。
東洋的思想とAI
SFの世界でもAIは様々な思想が反映されたものになっています。冒頭に触れた鉄腕アトムやドラえもんのように、日本ではAIが人間と対等な存在として描かれることが多くあります。その根底には神道に代表される、いたるところに神を感じる八百万神であり、人間以外のものに魂の存在を認める世界観があります。
一方で、西洋を代表とするキリスト教などの一神教を信仰する国では、神および人間は絶対的な存在と考え、AIは人間にとってのサーヴァントであると位置づけられます。神、人間、AIという縦の序列が常に意識されるのです。そのため、物語においてもその縦の関係を逆転させるような内容が描かれやすく、AIが人間にとっての脅威として感じられやすいのでしょう。
そのような思想を下敷きに、西洋的AIは人間を労働から解放し、人間が豊かさを享受する方向性で開発が進んでいるようです。それに対して東洋、特に日本ではAIによる労働の軽減は重視されていないように見え、AIがある程度自律的な存在としてあり、それと共存するような未来が想像されているようです。この思想の違いは、日本が西洋とは異なる特別なAIの開発拠点になるポテンシャルを示しています。
西洋的なAIにおけるフレームの問題は、元をたどればプラトンやデカルトに由来する、問題を細かくしていくことで解決を図る思想に帰着するように感じられます。西洋ではAIの暴走を恐れ、特定の領域に閉じ込めようとしますが、東洋では自律発展したAIの姿が世界と混ざり合うことで新しい可能性が見出されやすいのかもしれません。
未来のAI社会を積極的に想像していくために
AIによる社会への影響を想像し、今後の世界を占っていくために、本書ではAIのテクノロジーとともに哲学・思想等の人文知を参照しながら、アニメ等のコンテンツで描かれた世界観が展開されていきます。
その多様な世界に触れると、いかに人間の想像力が素晴らしいもので、今にとらわれずに未来を作り出すことができるかがわかります。その理解を深めると、今後の世界のあり方が固定的ではなくなり、我々が様々な世界の中から未来を選んでいく、という可能性にも気づくでしょう。
そもそもAIは人類に対して脅威なのでしょうか。原子力エネルギーのように一定の規制や安全技術があれば、効果的に活用できる可能性のあるものでしょうか。人類に寄り添う新しい存在になり得るものでしょうか。AIという技術の可能性は、それ単独では存在せず、AIを開発する側の思想や世界観が反映されるものなのだとも思います。
今、世界はAIの発展における重要な分岐路にいることは確かでしょう。その際に技術そのものだけでなく、人の想像力の結晶であるSFコンテンツを参照することで、未来への想像を促されるでしょう。現代とこの先の世界への深い洞察を得るために、本書は頼りになる道しるべとなります。ぜひ一読して、AIと共存する世界に想像をめぐらせてはいかがでしょうか。








