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AI時代になぜ本が重要? マネーフォワードが全社で「読書」に取り組む背景

大賀康史(フライヤーCEO)

2026年05月04日 公開

AI時代になぜ本が重要? マネーフォワードが全社で「読書」に取り組む背景

ビジネス書を中心に1冊10分で読める本の要約をお届けしているサービス「flier(フライヤー)」(https://www.flierinc.com/)。こちらで紹介している本の中から、特にワンランク上のビジネスパーソンを目指す方に読んでほしい一冊を、CEOの大賀康史がチョイスします。

今回、紹介するのは『会社は「本」で強くなる』(宮本恵理子著、日本経済新聞出版)。この本がビジネスパーソンにとってどう重要なのか。何を学ぶべきなのか。詳細に解説する。

 

組織と読書の関係

『会社は「本」で強くなる』

読書について皆さんはどのようなイメージを持っていますでしょうか。個人的な趣味でもあり、教養を身につける術でもあり、そして自己成長を実現する方法でもあるということもあって、様々な印象を持たれていると推察します。

この特集では本の紹介を5年半ほど続けています。そして本書のテーマが経営と本の関係で自分も常々考えているテーマということもあって注目していた本でした。

本書で紹介されているマネーフォワードは、グループCEOの辻さんが読書家であるというだけではなく、経営に読書を徹底的に活かしているという点で特徴的だと考えられます。おそらく経営に読書を活かしている会社というだけだとあまたあるでしょうが、ここまでトップから現場まで本が浸透している会社は珍しいでしょう。

マネーフォワードはご存じの方も多いとは思いますが、SaaS×FinTech領域で事業を展開するテックカンパニーです。「お金を前へ。人生をもっと前へ。」をミッションに掲げ、クラウド会計や家計簿アプリなど様々なサービスを提供しています。

創業者の辻庸介CEOとは随分前にお話したことがあります。留学経験もあり、読書家で博識でありながら、人当たりも柔らかで謙虚な方という印象があります。交友関係が広く、スタートアップ業界を代表される経営者の1人とも言える方です。

ではそのようなマネーフォワードがどのような取り組みを行っているのか、本書の内容から紹介していきます。

 

経営陣による読書セッション

「本気でビジネスで成果を出すためには、本から得られる情報は欠かせない資源」と辻CEOは語っています。社内のチャットツールのSlackでは、社員同士が読んだ本や浮かんだ問いなどの読書体験を分かち合うスレッドがあります。そこでは自主的に書かれた読書メモが蓄積されています。

個人の読書体験が組織の対話へと変化し学びが循環することは、マネーフォワードの企業文化の要所になっているそうです。読書制度を整えるということを超えた、読書を空気にするリーダーおよび会社の姿勢があると言えます。

普段の読書に加えて、オフィシャルな研修にも読書が積極的に活用されているのも重要な特徴です。2024年からは「読書セッション」という本部長クラスのマネジメント層を対象とした取り組みをしています。講師となるのは社内の経営層で、一人一冊ずつ講師を務めます。現場をまとめるマネジャー層向けの研修プログラムでもやはり読書が活用されているそうです。

「文化って"これがうちの文化です"って掲げて育つものじゃないんですよね。誰かがやっているのを見て、自分もやってみようって思う。その共感が広がって、自然と文化になるんです」という辻CEOの言葉がマネーフォワードの読書文化を象徴しているように思えます。

草の根活動として進められているものとして、「すごい読書会」もあります。ポイントは事前準備をしないことです。各自課題図書の1章を担当し、その場で読んで要約したものをそれぞれ発表することで、本の全体を把握できるという取り組みです。インプットとともにアウトプットも兼ねることがこの活動の良さと言えるでしょう。

 

読書と人材育成・組織開発の関係

本書からしばらく離れますが、私が運営するフライヤーでは企業での読書活動の推進を支援することがあります。その中で多く寄せられる声として、企業で読書の活動が広がると各自の成長につながるだけでなく、組織内の対話が増えるというものがあります。

本という存在は不思議なもので、読み通した本について誰かに話したくなるという特性があるようです。誰かに本の内容を話すと、その話を聞いた人が反応をしたり、その本を読んだりすることなど、相互に読書をする意欲と学びが促される傾向があります。そして、自然な形で部署の枠組みを超えた対話が生まれます。

フライヤーの企業向けサービスであるflier businessには、要約を読んだ後にメモを書き組織内で共有する「学びメモ」という機能があります。また、事前準備不要の読書会である「flier要約読書会」も多くの企業で行われていて、その運営を支援しています。どちらもインプットの質を高めるとともに、組織内の対話を促し文化をより高める効果があります。

 

生成AIの時代における読書の推進

これから時代は生成AI本格普及期に入るでしょう。その今、マネーフォワードが読書を活かした人材育成や組織開発をしている背景を洞察してみます。

まずこれから求められる力にはテクノロジーを使う前提として、AIを活用するために高度な母国語の運用能力が求められると考えられます。読解力や言語化力や論理的思考能力がより問われるようになることは間違いないと思います。加えて、課題や疑問の解決スピードが上がるので様々なことへの好奇心や、組織として働くための深い人間理解も求められるようになるでしょう。

そのどれもが読書を推進することで養われることが大事なところだと思います。そのような自己研鑽としての読書の効果に加えて、組織として有機的に働くための対話が促される点も重要です。人材育成、組織開発、文化醸成という言葉を使うと大掛かりなプロジェクトを思い浮かべる人も多いと思いますが、読書を推進することでもその重要な起点を作ることができるのです。

AIの時代では競争力のある企業がめまぐるしく移り変わり、そこで働くビジネスパーソンが十年単位で同じ業務をすることはなくなっていくでしょう。変化の激しさゆえに、今多くの会社では社員の能力・スキル開発を完璧に設計することが難しくなり、ほぼすべての企業で自律型人材が求められるようになっています。読書を通じて概念化が進んだ知恵は、自分の頭で考え行動する基盤となるように思います。

皆さんの組織ではどのような取り組みが話題にのぼっているでしょうか。自律型人材を育成する基盤としても、学ぶ文化を活性化する手法としても、読書の推進は有効な施策となります。本書で紹介されているマネーフォワードの取り組みはその貴重な事例です。ぜひ本書を参考にして、組織課題の解決に取り組んでみてはいかがでしょうか。

 

プロフィール

フライヤー(flier)

ビジネス書の新刊や話題のベストセラー、名著の要約を1冊10分で読める形で提供しているサービスです。通勤時や休憩時間といったスキマ時間を有効活用し、効率良くビジネスのヒントやスキル、教養を身につけたいビジネスパーソンに利用されているほか、社員教育の一環として法人契約する企業も増えています。(https://www.flierinc.com/)

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