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戦艦大和の運用次第で、太平洋戦争の戦局は覆っていた!

2013年09月27日 公開

平間洋一 (元防衛大学校教授)

『歴史街道』2013年10月号より》

戦艦大和
 

戦艦大和が効果的に運用されていたら?

太平洋戦争のターニングポイントとされる戦いにおいて、戦艦大和が効果的に運用されていたら、勝敗は逆転し、日本が優勢となる可能性は高かった。さらに戦術的レベルに留まらず、戦略的活用に踏み切っていれば、大和は世界大戦の帰趨さえ変えてしまう力を秘めていたのである。

平間洋一 (ひらま・よういち) 元防衛大学校教授
昭和8年(1933)生まれ。防衛大学校卒(一期)。護衛艦「ちとせ」艦長・第31護衛隊司令などを歴任し、昭和63年(1988)に海将補で退官。その後、防衛大学校教授、筑波大学講師などを務める。法学博士(慶應義塾大学)。主著に『第一次世界大戦と日本海軍』(慶應義塾大学出版会)、『第二次世界大戦と日独伊三国同盟』(錦正社)、編著書に『戦艦大和』(講談社)がある。

 

ミッドウェー海戦の IF

 戦後の日本では、大和をして「万里の長城、ピラミッドと並ぶ、三大馬鹿」とまで評する声がある。まさに何をかいわんや。確かに、大和はその実力を発揮する機会を与えられなかったが、それだけを理由に「無用の長物」と批判するのは見当違いも甚だしい。それはスポーツにおいて、出場機会を与えられなかった名選手を、「無能」と断じるようなものだ。

 実際の戦闘において、最強戦艦の大和が投入されていれば、戦局を大きく変えたことは疑いようがない。つまり、大和の問題は全て、いかに用いるかという「運用」に尽きるのだ。

 では日本海軍は、大和をいかに活かすべきだったのか。「歴史に IF は禁物」というが、大和の場合、特に実現性の高いケースが多く、それらについて考察することは、現在に通じる様々な示唆を与えてくれるに違いない。

 実際の戦闘を取り上げるならば、まず、大和の初陣となった昭和17年(1942)6月のミッドウェー海戦である。日米戦争の転換点となったこの海戦で、日本は虎の子の空母4隻を失うという大敗を喫し、以後、劣勢に立たされる。この時、大和を軸とする主力部隊は、空母機動部隊の500キロメートルも後方にあり、ついに戦闘に加わることはなかった。

 これは、機動部隊が敵艦隊に一撃を加えた後に戦艦部隊で止めを刺すという、旧来の艦隊決戦思想に則った戦国序列を重んずるがゆえの配置であった。しかしながら、やはり大和は機動部隊とともに行動させるべきだった。そうすることで、ミッドウェーの最大の敗因である「索敵の不備」を防ぐことができたからである。

 主砲の攻撃力が注目される大和だが、実は、通信設備も極めて充実していた。事実、ミッドウェーの作戦行動中、大和は「多数の敵航空機が行動中」との軍令部特信班からの情報を受信し、アメリカ空母の一部が、ミッドウェー付近で待ち伏せしている可能性のあることを掴んでいる(大和の敵信班が、敵空母らしき符号を傍受したとも)。だが肝心の機動部隊は情報を受信できず、また無線封止中のため、大和から機動部隊に通報されることもなかった。もし大和が機動部隊と行動をともにしていれば、戦局を左右するその情報を、発光信号などで伝えることもできた。となれば索敵に全力をあげることになり、史実のように敵空母部隊の発見が遅れ、兵装転換の間に攻撃されて、空母4隻を失うことなどなかっただろう。

 大和の同行には、もうひとつ大きな利点がある。敵攻撃隊が機動部隊を襲った際、大和が「盾」となったはずなのだ。たとえば低空から魚雷を放つ敵雷撃隊に対しては、空母の手前に大和がいて弾幕を張れば、攻撃を阻止できる。一方、直掩の零戦隊は急降下爆撃隊の迎撃に専念すればよい。つまり、大和の存在によって、敵攻撃隊への対処は極めて効率的になるのだ。

 また、よしんば互角の戦いとなり、日本の空母が米空母と相撃ちになって損傷しようとも、大和が追撃戦を敢行していれば、日本の航空隊が損傷を与えた米空母に止めを刺し、残敵掃討をすることも可能だったろう。いずれにせよ、当時の日本海軍の練度は米軍を凌いでおり、大和が機動部隊とともにあればまず負けることはなかった。

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