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オバマの嘘・「尖閣を守る」を信じてはいけない



2014年08月08日 公開

日高義樹(ハドソン研究所首席研究員)

《『「オバマの嘘」を知らない日本人』より》

 

本当のことを安倍首相に言わなかった

 オバマ大統領は日本の安倍首相に対し、中国が尖閣諸島を攻撃した場合、アメリカは日本を助けると述べたが、議会の承認を得なければオバマ大統領は戦争をすることはできない。厳密にいえば、オバマ大統領は安倍首相に嘘をついたことになる。

 この4月23日、日本を訪問したオバマ大統領は、「日本が施政権を持つ尖閣諸島に軍事攻撃がしかけられた場合には、日米安保条約の第5条に基づき日本を助ける」と明言した。

 この考え方はクリントン前国務長官も表明し、国防総省をはじめ、アメリカ政府関係者もすでに非公式ながら認めているもので、目新しいものではないが、アメリカの大統領が明確に日本の肩を持ち、尖閣諸島を守る意向を明らかにしたことから、日本国民に強い安心感を与えた。このこと自身は大歓迎すべきで、いまさら異論を挟む必要はないと思われる。だが現実問題として考えると、オバマ大統領の言っていることが実際に実行されるかどうかはまったく別で、安心ばかりしてもいられない。

 まず最も基本的な問題は、アメリカ軍が尖閣諸島をめぐって中国軍を攻撃すれば中国に対する敵対行為となり、さらに一歩進めれば宣戦布告が必要になることである。

 戦争に関してアメリカの大統領が持つ権限を規定した法律はいくつか存在するが、いま最も強い影響力を持っているのは1973年の戦争法案、英語では“ザーウォー・パワーズ・アクト1973”と呼ばれている法律である。戦争だけでなく、アメリカの安全やアメリカの領土、所有物への攻撃に対する大統領の権限を規定している。

 この法律は、ベトナム戦争にあたって、ニクソン大統領が議会と話し合いをしないで次々にベトナム周辺の国々に対して攻撃を行なったことに反発して、議会側が対抗措置として成立させた法律である。

 オバマ大統領は尖閣諸島をめぐって戦争が起きた場合、どのような軍事行動をとるのか明確にはしていないが、アメリカ軍の航空機や艦艇、さらにはアメリカ兵に対する攻撃が行なわれた場合、大統領には戦争を始める権限が認められている。またアメリカ軍の艦艇、航空機、兵員が直接、攻撃されなくとも、同盟条約のもとにある地域に対する攻撃は、アメリカに対する攻撃と見なして戦うことが、この法律の第2条C項に盛り込まれている。

 しかしながらこの法律には大統領権限で戦闘を始めた場合、48時間以内に下院議長ないし上院の代表に対して、文書によって戦争を始めなければならない理由や戦闘の規模、期限の見通しなどについて報告しなければならないとも規定されている。

 最も重要なのは戦闘が始まって60日以内に議会が同意をしなければ、戦争を中止しなければならないという規定があることだ。オバマ大統領は、尖閣諸島が攻撃を受けた場合、日本のために戦うという意味合いの発言をしたが、実際には議会の同意がなければ戦うことができない。

 アメリカ議会にはいま、この法律を改正して、さらに戦争についての大統領権限を規制しようという動きがある。中心になっているのはマケイン上院議員とケイン上院議員で、1973年の法律を修正するかたちで議会の関与をさらに強化する法案を、2014年1月16日、上院に提出した。

 この法案では、アメリカ議会が議会の指導者や上下両院の情報、軍事、外交、歳出の4つの委員長を含めた特別委員会をつくり、戦争を始めるにあたって、大統領はこの委員会と協議をしなければならないことが決められている。この委員会は常任委員会で、アメリカ大統領はこれまでのように戦争を始める権限を1人では行使できなくなる。

 ワシントンでは大勢の人が、オバマ大統領が東京で日本を守るために戦争を辞さないと言ったのは無責任だと考えている。オバマ大統領は記者団との一問一答で「本当に戦争するつもりか」と聞かれ、にやりと笑って言葉を濁しただけでなく、「日米安保条約は私が大統領になるずっと前からある条約なのでね」とつけ加えた。

 オバマ大統領は安倍首相との首脳会談の中で、尖閣諸島について日本の施政権が及んでいると言ったが、日本の領土であるとは言わなかった。領土問題には関わらないというのは、アメリカがずっと維持している姿勢である。

 オバマ大統領の本音は「その状況が暴力行為によって変えられることに反対する」という発言のほうである。つまりそうした事態が起きないように中国との関係を平和的なものにするよう、日本側に要求したのである。

 ようするにオバマ大統領は尖閣諸島問題について、アメリカは日本の立場を支持するが戦争が起きないように中国と平和で友好的な関係を続けなさい、と強調しただけなのである。日米安保条約をからめたオバマ大統領の発言が言い過ぎだったことは明らかである。



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