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天使の仕事ですべての人を幸福にしたい

2015年07月24日 公開

久保華図八(バグジー代表)

《隔月刊誌『PHP松下幸之助塾』[特集:活力を吹きこむ]より》

 

 

「三方よし」を実現する愛にあふれた美容室

大手企業や自治体の研修先として、年間約800名が見学に訪れる北九州市の美容室・バグジー。顧客が離れない、社員が離れない会社として、業界でひときわ異彩を放つ存在だ。「すべてに愛を持って」働く社員たちのバイタリティは、どこから生み出されているのだろうか。その背景には、「従業員満足なくして顧客満足なし」という、久保華図八氏の信念があった。〈取材・構成:佐久間史信/写真撮影:河本純一〉

 

思い知らされた成果主義の落とし穴

 私は北九州を拠点に、美容室・バグジーを七店舗展開しています。社員は約100人。美容室業界の離職率は非常に高く、1年で2割から3割のスタッフが辞めると言われています。しかし、バグジーの離職率はその10分の1以下です。辞めていく理由も独立して店舗を構えるなどの「卒業」が大半なので、日本でいちばん人が辞めない美容室だと言われることもあります。

 経営理念に「敬愛」を掲げ、社員には「すべてに愛を持って取り組む」ことの大切さをいつも伝えています。お客様に喜んでいただけるサービスを提供し、地域の方々に必要とされ、その結果、愛されることが私たち自身の喜びになる。こうした好循環が、バグジーの周囲では生まれています。

 しかし、最初からそうだったのではありません。苦い経験をばねにして、いまの幸せな状況をつくってきたのです。

 私は、1983(昭和58)年に渡米し、著名な美容師の下で修業を始めました。当時、私が目を奪われたのは、いわゆる成果主義です。1人カットすればいくら支払うという歩合制で、腕のいい美容師にはどんどん給料を支払う――。

 モチベーションを高めるのに最適だと考え、帰国後に出店したバグジーでも、迷わず歩合制を導入します。個人の売上グラフをつくって貼り出し、これ見よがしに収入を競わせました。成果主義に魅かれて、スタッフは増え続け、売上も急速に拡大。私はまさに得意絶頂でした。

 しかし、10年ほどたったころ、次第に「歪み」を感じ始めたのです。美容師のあいだで勝者と敗者が明確に分かれ、人間関係がギスギスする。派閥が生まれる。ライバルをつくらないよう、後輩の教育を渋る。簡単に言えば、お金になることはする。ならないことはしない。こんな、〝拝金主義〟が蔓延してしまったのです。

 そして1人辞め、2人辞めと、次々に仲間が去っていきました。当時、美容室は3店舗あり、50人ほどのスタッフがいましたが、気づけば残ったのは15人ほど。これでは店が回るはずがありません。打開策を探りましたが、時すでに遅し。借金に追われ、「あそこは倒産する」という噂も流れ、いま思い返しても地獄の日々でした。

 

「利より信」に転換し従業員満足を追求

 そんな折、落ち込んでいる私を心配した友人が、「お坊さんの説法でも聞いたらどうか」と勧めてくれたのです。私は半信半疑のまま、福岡市で開かれた講演会に足を運びました。

 和尚さんは、「上に立つものが欲深くなったとき、兵は去っていく」という西郷隆盛の言葉を紹介されました。そして、「人が辞めていくのは、その組織のトップが悪いから。去っていく部下の悪口を言うような人は、いますぐリーダーをお辞めなさい」と、おっしゃったのです。

 私は愕然としました。「どうして自分のことを知っているのだろう」。自分がやってきたことは、大きな間違いだった。そう心から反省することができたのです。

 その日の夜、残っていた社員たちに、「悪かったのは自分だ」と、素直な気持ちを伝えました。するとみんな泣き出して、「残ったメンバーでこれから頑張っていこう」と言ってくれたのです。私も涙が止まりませんでした。ちょうど15年前のことです。

 メンバーからは「もっと勉強したい」「お店の運営に参加したい」など、たくさんの意見が出されました。「メンバーの希望を片っ端からかなえていこう」。私はそう決心し、新たな「バグジー」が生まれたのです。

 それからは、方針を「従業員満足」の追求に180度転換。利益よりも信じる心、つまり「利より信」を大切にしようと決めました。するとそのうちに、お金を儲けるのとは違った満足感を得られるようになったのです。それは、「周りを幸せにした分だけ、自分も幸せになる」という、味わったことのない感覚でした。

 「利より信」を続けていると、幸せにする範囲も広がっていきます。毎朝の清掃活動では、お隣の店前や道路も併せて掃除をする。地域の行事やボランティアにも、積極的に参加する。そうした地道な取り組みから、好循環が生まれ始めました。 

 「新生バグジー」での活動は、徐々に評判となり、いまでは顧客満足や人材育成についての講演依頼が、年間300件ほど寄せられています。また、大手企業や自治体の研修先として、昨年は800名の方が店舗の見学に来られました。

 経営を考えるとき、もちろん顧客満足度を高めることは重要です。しかし、そのまえに大切なのが、従業員満足度をいかに高めるかです。顧客満足度ばかりを優先していると、どうしても長時間労働などのかたちで、社員にしわ寄せがいってしまいます。

 社員から、「もっと勉強したい」と要望が出たのなら、経営者はそれを実現するべきです。バグジーでは、入社1年目に1000時間という、業界平均の5倍近い研修時間を設けています。もちろん研修を行うのはすべて営業時間内。残念なことに、スタッフの教育は勤務時間外にする、という美容室も少なくありません。しかし、それでは新入社員に過度な負担を求めることになります。バグジーは、絶対にその道を選びません。トップが「いい職場」をつくって初めて、社員にやる気が生まれ、お客様に満足していただける仕事ができるのです。

☆本サイトの記事は、雑誌掲載記事の冒頭部分を抜粋したものです。以下、「お客様の喜ぶことは何でもやれ」「徹底的に任せることで自主性を生み出す」「やる気を維持し、離職を防ぐバグジーの流儀」「毎晩の食事会で社員と直接つながる」「社員に合わせて会社が変わっていけばいい」などの内容が続きます。記事全文につきましては、下記本誌をご覧ください。(WEB編集担当)

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著者紹介

久保華図八(くぼ・かずや)

バグジー代表

1961年北九州市生まれ。’75年美容業界に入る。’83年渡米、サンフランシスコ、ニューヨーク、ミラノ、パリなどで経験を積み、帰国後、’93年に九州壹組設立。北九州市を拠点に美容室7店舗、カフェ3店舗を経営するかたわら、講演活動なども精力的に行う。近著に『社員が輝くときお客さまの満足が生まれる』(経法ビジネス新書)がある。

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