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経営はシンプルに考えるとうまくいく



2015年05月21日 公開

松本 晃(カルビー会長兼CEO)

《隔月刊誌『PHP松下幸之助塾』[特集:カンを磨く]より》

「ポテトチップス」「じゃがりこ」「じゃがビー」などの商品を持ち、スナック菓子業界でシェア1位を誇りながら利益率の低さにあえいでいたカルビーが、松本晃氏の会長兼CEO就任後、確実な成長を続けている。2015年3月期の決算予測では、就任前の6年前と比べて売上高が6割増、営業利益率は3倍を超える勢いだ。
さまざまなムダを捨てて業績を上向かせてきた松本氏には、経営上の意思決定においてどのような“流儀”があるのか。インタビューから見えてきたのは、複雑さを極力排し、本質を確実に早くつかむ考え方だった。

<取材・構成:加賀谷貢樹/写真撮影:永井 浩>

 

ビジョン、プラン、そしてリーダーシップが経営の「軸」

 経営のさまざまな決断の場面で発揮されるカンのあり方について、松下幸之助さんは「カンと科学は車の両輪」とおっしゃいました。しかしそれは、一種の「照れ」からくる言葉ではないでしょうか。

 幸之助さんは、知識も経験もスキルもあり、経営者としての自分の「軸」を持っておられました。何か問題が起きたときは、それらの軸を総動員してパッと物事を決めていた。これを総じて「カンと科学」とおっしゃったのだと、私は理解しています。

 私にとっての経営の軸は何かと考えると、ビジョン、プラン、リーダーシップの3つで、これらが会社経営で最も大事なものだと思います。おそらく幸之助さんの場合も、最初にビジョンがあって、そのビジョンのもとに、これからどんな商品をつくるのか、そのためにいつ何をやるかという具体的なプランがあり、最後にみずからリーダーシップを発揮されたから、会社が成功したのでしょう。

 また、私が事業において決断をする際の流儀は、だいたい幸之助さんと同じだと思いますが、1番が「世のため人のためになるか」、2番目に「儲〈もう〉かるか」、3番目が「勝ち目はあるか」です。何か新しい商品や事業を立ち上げるときなどは、これらを常に考えています。

 幸之助さんはたしか、まず「世のため人のためになりまっか」、次に「やる人がわくわくしまっか」、そして「儲かりまっか」だったと思います。

 もう1つ、ビジネスや経営に必要なものは地頭〈じあたま〉だと思います。地頭は、学校の勉強ができるかどうかということではなく、いわば持って生まれた頭のよさがあるかどうかです。

 日本で戦後に成功してきた人たちは、勉強ができればビジネスをうまく行なっていくことができました。ところが変化や競争が激しい今の時代では、それだけでグローバル競争の荒波を乗り切っていくのはなかなか厳しいと思います。

 東大を出た人の中には、優秀なビジネスパーソンもいますが、そうでない人もいます。逆に今、第一線で活躍している名だたる経営者たちすべてが一流大学を出ているかといえば、そうとはかぎりません。

 要は、ビジネスパーソン、経営者としてのずば抜けた地頭を持っているかどうかです。

 

「コックピット経営」から「ダッシュボード経営」へ

 私はあいにく持ち合わせていませんが、「天性のカン」や「動物的なカン」といったものが、スポーツなどの世界にはよくあります。ところが、ビジネスの世界では事情が少々異なります。まず知識や経験、スキルを身につけ、それらを背景によほど考え抜かなければ、ビジネスにおける成功はおぼつきません。

 そこで非常に大事になるのが、学ぶことと考えることのバランスです。「学びて思わざれば則〈すなわ〉ち罔〈くら〉し。思いて学ばざれば則ち殆〈あやう〉し」(『論語』為政篇)という言葉のとおり、勉強しているばかりで自分の頭で考えない人は、学んだことが身につくことはありませんし、逆に、考えているばかりで学ばない人は危険です。だから、このバランスをとりなさいと、私は会社でよく話しています。

 考えることは、仕事や経営の実践の中で身につく部分が多いと思います。一方、経営に必要な知識を増やすうえでは、さまざまなジャンルの知識や事柄を学ぶことが大切ですし、新しいことを学ぶのは楽しいことです。私は、経営に関するもの以外にもさまざまなジャンルの本を読んでいます。やはり面白いのは歴史の本で、日本史では戦国時代や幕末の維新といった変化のある時代に興味があります。

 すごい人物だと思うのは、織田信長と徳川家康。なかでも信長は、時代を変えるような新しいことや前例のないことに数多く挑戦しています。地頭がいいからあんなことができたのでしょう。また信長は、物事をあまり複雑に考えていなかったような気がします。

 学校の勉強ができる人たちは、往々にしてビジネスを複雑なものにしてしまいがちですが、私は、経営はそれほど複雑怪奇なものではないと思っています。いくらシンプルにしても実行することはむずかしいのですから、複雑なことは、なおさらやりようがありません。

 カルビーは以前、「コックピット経営」という、データを重視した経営手法をとっていました。数多くのデータを集約し、経営陣がそれらを見れば、たちどころに会社の動きが分かるということで、飛行機やレーシングカーのコックピット(操縦席)にたとえた言葉です。

 各事業ユニットの数値データをグラフ化し、さまざまな判断に活かそうとしたのですが、データが1100種類も集まるのです。そこまで膨大で複雑なデータを使いこなすことなど、とうていできません。しかも、膨大なデータを精緻〈せいち〉に分析し予測するような暇はなく、やったとしても予測自体が当たるとはかぎらないのです。

 そこで、私は会長に就任すると、より簡素化した「ダッシュボード経営」を導入しました。

☆本サイトの記事は、雑誌掲載記事の冒頭部分を抜粋したものです。以下、「役に立つのは『情報』ではなく『諜報』」「物事は常に帰納的に考える」「『フルグラ』はなぜ大化けしたか」「お客様は商品のことをよく分かっている」などの内容が続きます。記事全文につきましては、下記本誌をご覧ください。(WEB編集担当)

 

松本 晃

まつもと・あきら

カルビー会長兼CEO

1947年京都市生まれ。1972年京都大学農学部の大学院修士課程を修了後、伊藤忠商事入社。1986年医療機器販売の子会社に出向し、取締役営業本部長。1993年ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人に転じ、1999年同社社長、2008年最高顧問。同年カルビー社外取締役に就任後、2009年から現職。

 



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