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仕事

若手、後輩を腐らせる悪しきベテランとダメ上司

本田有明(本田コンサルタント事務所代表)

2016年04月04日 公開 2023年01月12日 更新

誇りをもって自分たちの仕事を語れ

筆者の友人に、ある意味でベテラン社員の見本ともいうべき男がいる。工業高校を卒業して自動車会社の工場に勤務すること30年。クルマ造りに誇りと情熱をもち、それを衒いもなく人前で表現する人物だ。

アフターファイブに仲間と酒を飲んでも、口にするのは昔からクルマのことばかりで、自分の手がけている車種がいかに美しく高性能かを得意そうに話す。

「おまえが担当しているのはバックミラーの取り付けくらいじゃないのか」と茶々を入れられても、どこ吹く風である。

飲んだ帰りに街路を歩いていると、行き交う車列をながめ、「お、あれはずいぶん古いモデルだな。おーい、元気か!」と大声を出して、子どものように手を振ったりする。それがいかにも素直な感じで、にくめない。

筆者は彼が若い部下たちと飲む席に呼ばれたことがあるが、そのときも態度は変わらなかった。自分たちが造っているクルマをさかんに賞賛し、店を出ると、車道に向かって手を振る。

「また始まった」と言って、部下たちは苦笑するのだが、それがとてもいい雰囲気なのだ。やがて上司と並んで手を振る者も現れた。

なんでも自画自賛すればよい、という単純な理屈ではない。しかし、年を重ねるうちに情熱が色あせ、自分たちの仕事を卑下したり自嘲気味に語ったりするベテランよりは、こういう元気な人間のほうが若手をまっすぐに導くことは確かだ。

城山三郎氏の作品から印象深い言葉を掲げておく。

「新入社員を迎えるたびに、しゃんとしなければならないのは、古参社員の方である。新人の初心を前に、粛然と姿勢を正すべきである。新入社員教育は、新入社員の入社ごとに、古参社員が受けるべきである」(『猛烈社員を排す』)

 

本田有明(ほんだ・ありあけ)

本田コンサルタント事務所代表。1952年、兵庫県神戸市生まれ。慶應義塾大学哲学科卒業後、社団法人日本能率協会に勤務。経営事業本部、情報開発本部などに所属し、部長職を務める。1996年に人材育成コンサルタントとして独立。おもに経営教育、能力開発の分野でコンサルティング、講演、執筆活動に従事している。おもな著書に『人材育成の鉄則』(経団連出版)、『ソクラテス・メソッド』『ヘタな人生論より葉隠』『ヘタな人生論より夏目漱石』(以上、河出書房新社)、『若者が3年で辞めない会社の法則』 『本番に強い人、弱い人』(以上、PHP新書)などがある。

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