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若手、後輩を腐らせる悪しきベテランとダメ上司

本田有明(本田コンサルタント事務所代表)

2016年04月04日 公開 2024年12月16日 更新

若手、後輩を腐らせる悪しきベテランとダメ上司

『ダメな部下でも伸ばす上司、できる部下まで潰す上司』より

 

「御社の若手」は なぜ伸びないのか

将来のビジョンが描けないことの意味

「いまどきの若者」というと、もう何年も前から早期離職者が高い確率で出るとして「七五三現象」が指摘されている。この現象は1990年代から見られ、景気の波との相関関係はほとんどない。今後もしばらく続くことが予想される。早期の離職者を出さないために、会社はどんなことに留意すればよいか。

入社後1、2年で離職した若者たちにヒアリングしたことがある。複数の者から、「その会社での将来ビジョンが描けなかった」という表現を耳にした。25歳、30歳と年数を重ねていったとき、自分はどのように働いているのか。その姿がイメージできなかったというのだ。

これはキャリアプランニングの問題ではない。端的に「働いている姿」の問題である。大きな影響を及ぼしたのは、日々目にする上司や先輩のうしろ姿ではなかったか。

「部下は上司のうしろ姿に学ぶ」という。上司が直接くだす指示・命令や訓話などより、働いているうしろ姿からさまざまな教訓を読み取るという意味だ。

インタビューの一部を紹介する。

「5年、6年と勤めたらどうなるか。その見本がまわりにいっぱいいるわけです。それがもう、みんな疲れている。新人とたいして変わらない仕事を毎晩遅くまでやっているわけです、つまらなそうな顔で。見ていてゾッとしました」

「やっぱり職場環境って大事じゃないですか。元気な人がいるな、こういう人になりたいなって目標があれば、それに向かってがんばれるし、実際に成長するのも早いと思います」

目標にできるような元気な人がいないということが、その会社で元気に働いている自分の姿が見えない、ということに重なる。

見かけだけの皮相な話と笑ってはいけない。見かけは大切なのだ。それが事柄の本質を表していることがよくあるからだ。

見るからに元気そうな職場、見るからにやりがいがありそうな仕事。それはどういうことかといえば、じつに単純である。働いている人が元気そうで、生き生きしているということだ。そういう職場にいれば、自分もよい刺激が受けられると若者は感じる。

3年先輩の人たちの働きぶりを見ていれば、3年先の自分の姿がおぼろげに見えてくる。10年先輩の働きぶりを見ていれば、自分がこの先どう成長していくか、成長していかなければならないかが察しられる。若者が口にする将来ビジョンとはそういうものだ。重要なのは、上司や先輩が生き生きと働いているかどうかなのである。

 

どんな人が若者をスポイルするのか

元気がない職場には、必ず病巣がある。多くの場合それは「困ったベテラン社員」の存在だ。覇気が見られないだとか、惰性で働いているだとかいうレベルではない。まわりに害悪を流し、若者をスポイルするようなレベルの問題社員である。あなたの職場ではどうだろうか。

新人が研修で習ったことを話そうものなら、「お勉強と現場は違う」と冷笑する。ていねいな仕事を心がけていると、「ちょっとくらい手を抜いても平気だ」などと、間違ったアドバイスをする。さらには会社や幹部の悪口を言って、新人を仲間に引き込もうとする。こうした手合いが、どこの会社にも一定数いるものだ。

・斜にかまえて辛辣な評論をするのが好きな「社内評論家」
・人望も能力もなく傍流に甘んじている「落伍者」
・新人相手にしかものが言えない小心な「不満分子」

免疫のない新入社員にとって、職場にいる人はみな同じように先輩であり、初心で経験がないだけに誰からも影響を受けやすい。ときとして、ベテラン社員が流すマイナス情報に大きな衝撃を受けることもある。

筆者が遭遇した新人の最短離職記録は4日。入社して、次の日から研修が始まるという日に早くも辞表を出した。聞くと、職場のベテラン2人から、よからぬ話を吹き込まれたのが原因だった。

「うちは同族会社だから、どんなにがんばっても部長止まりだとか、優秀な社員はみんな途中でやめる、残っているのは米つきバッタだけだとか、情けない話ばかりするんです。それが事実かどうかは別として、こんな人たちと一緒に働くのはごめんだと思いました」これほど極端ではなくても、先輩からイヤな話を聞かされて一気にモチベーションが下がったという例は少なくない。それが直属の上司であったりすれば、罪はさらに深い。

こうした現象はいまに始まったことではないが、人減らしの時代が長く続いて部下や後輩をもつ経験が少なかったぶん、いまどきの上司や先輩のほうが、それ以前の世代よりも陥りやすい傾向があることは確かだ。

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