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ザックジャパン 「頭脳的サッカー」で強豪は倒せる

杉山茂樹(スポーツライター)

2011年08月13日 公開 2024年12月16日 更新

杉山茂樹

ザックジャパンが目指すべき「効率的サッカー」

ザッケローニは俗に攻撃的なサッカーを好む監督だと言われる。しかし、かつての攻撃的サッカーに対する守備的サッカーはもはやほとんど存在しない。世の中は攻撃的サッカー対攻撃的サッカー。攻撃的サッカーは当たり前となったため、攻撃的サッカーは死語と言うべきモノになっている。

この世界は、ほぼ同じような価値観で溢れている。守備的サッカーがこの世から消えたのは、攻撃的サッカーに比べて効率的ではないことがハッキリしたからだ。攻撃的サッカー発展の理由は、効率的サッカーと同義語になったからだ。

ザックジャパンが目指すべきは、攻撃的サッカーというより効率的サッカーだ。効率的サッカーは、言い換えれば頭脳的サッカー。ザッケローニの攻撃的サッカーと、日本人の長所と言われている部分には明確な接点がある。

攻撃的サッカーはあたかも頭を空っぽに、いつ何時も攻め立てるサッカーを連想するが、実際は知恵を絞りながらクリエイトするサッカーだ。相手ゴールを目指すサッカーの方が、拘らなければいけない点が多い。それは同時に、自軍の守備にも反映する。

残念ながらテレビは、そのあたりのことを伝えきれずにいる。選手個人の活躍を伝える装置としては素晴らしいが、効率的か否か、頭脳的か否かを伝えきることはできない。

バルセロナがチャンピオンズリーグで優勝すれば、メッシに目が奪われる仕組みになっているのだ。シャビ、イニエスタも、個人技は負けず劣らず凄いぞという話になりがちだ。しかし、彼らが拘っているポイントは、テレビ画面との兼ね合いで、ほとんど紹介されずにいる。

バルセロナという攻撃的サッカーの権化と言うべきチームが、いかに効率化を図り、頭脳的な集団に変貌していったかは分かりにくい。バルセロナであれほど活躍できるメッシが、アルゼンチン代表になるとなぜパッとしないのか、日本代表のディフェンスに手を焼くのか、むしろ、足を引っ張る存在に成り下がるのか、といったことがテレビでは伝えきれていない。

それが「布陣や戦術は関係ない。サッカーは個が大切だ」と、10年前、20年前と同じような台詞を吐く人が日本に相変わらず多くいる理由かもしれない。

だが、そうだとしたら、日本代表に未来はないという話になる。僕は日本人選手のサッカー偏差値を55.5と考えている。54だった2年前より1.5ポイント上昇したと見ているが、世界的な選手はいない。良いと言われる選手でも60台の前半がせいぜいだ。

長友選手もその一人になるが、その彼がなぜインテルで活躍できるのか。それこそサッカー偏差値が65以上ありそうなレベルの高いクラブで、スタメンに近いところにいるのか。そこでむしろ、日本代表より、さらに良いプレイをしているように見えるのはなぜか。日本代表のサッカーの方が、頭脳的ではないからだ。

頭脳的か否か。これこそが日本代表戦を観賞する上でのキーワードだ。次回ブラジルW杯で、前回南ア大会以上の成績を狙うなら、サッカー偏差値は58以上にしておきたい。体で負けても頭で負けるな、である。

 

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