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Offは電子書籍で名作を! -3

PHPオンライン衆知編集部

2011年09月24日 公開 2022年09月29日 更新

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 PHP研究所がはじめて電子書籍をリリースしたのは2000年。おかげさまで1000タイトルを突破しました。今後も著者の皆様のご支援をいただき、積極的に電子化をすすめ、読者の方々に新しい読書体験を提供してまいります。

そして、話題の最新刊 PHP新書『日本人はなぜ日本のことを知らないのか』(武田恒泰:著)が、はやくも電子書籍になりました。
電子書籍なら軽がる携帯。いつでもお読みいただけます。ぜひダウンロードしてください。

ここでは、本書の最初の部分をご紹介しています。

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日本人はなぜ日本のことを知らないのか

 学校教育で建国の歴史を教えない国は、世界中で、日本だけではなかろうか。我が国は現存する世界最古の国家である。日本人なら素直に喜び、誇りに思えるこの重大な事実を、なぜ日本人は知らないのか。
 日本が最古の国であることを知ったとき、私は心から感動し「日本はすごい国なんだ」と思った。これほど日本人に誇りを持たせる重要な歴史を教えないとは、不自然極まりない。日本国民の意識から「建国」が完全に抜け落ちてしまった結果、現代日本人は建国精神を忘れ、民族の誇りを忘れ、日本人の気質を失ってしまったように思える。
 そしてその結果、現在の日本は、建国記念の日に建国を祝う国民がほとんどいないという、世界的に見て、極めて異常な状況にある。日本国が存在することのありがたさを、日本人は実感していない。これは国家・民族の危機であろう。戦後教育の誤りは、国を滅亡させる力をも発揮しうるのである。
 現代日本人があまりにも国史に無知であることは、現代日本社会の歪(ひず)みを如実に表しているように思えてならない。我が国は先の大戦の終結来、誇りを持つことを禁止されてしまったように見える。民族に誇りを持てなくなったら、その民族は滅びるに違いない。

日本は現存する唯一の古代国家


 世界には190を超える国が現存するが、そのなかで世界最古の国家が日本であることはあまり知られていない。このことは、戦前までは誰もが共有していたことだが、戦後は国民の記憶のなかから抹消されてしまった。老舗(しにせ)が「創業何年」と銘打つように、古い時代から継続してきたことは、大きな誇りである。私が世話になった小学校も、幕末の慶応年間に創立された長い歴史を持ち、子供時分からそのことを誇りに思っていたことを今でもよく覚えている。長い歴史のなかで、価値のないものは淘汰(とうた)され、失われてきたが、ほんとうに価値のあるものだけが守られ、今に継承されてきた。伝統には、必ず相当の意味や価値があるものなのである。
 世界の歴史は王朝交代の歴史だった。世界史の年表を眺めれば、国家は数十年や百年程度で成立と滅亡を繰り返してきたことがよく分かる。人類史上、400年以上国を守ったのは、数えるほどしか例がない。
 ところが、そのなかで日本だけが、古代から続く王朝を守り、今も存在しているのである。そして、我が国の建国よりも前にあった王朝は、いずれも滅び、今は存在しない。では日本の建国はいなのか。正式な歴史書である正史『日本書紀』によれば、初代神武(じんむ)天皇の橿原宮(かしはらのみや)〔奈良県橿原市〕での即位が我が国の建国で、これは紀元前660年、すなわち今から約2700年前に相当する。もっとも、これには考古学界からは根強い批判がある。『日本書紀』には神話的要素が強く、特に建国に関する記述には信憑(しんぴよう性が乏しく、認められないという。
 しかし、三世紀前期に奈良県の三輪山(みわやま)の麓(ふもと)にある纒向(まきむく)遺跡に前方後円墳が造られたことがヤマト王権の成立を示していて、そのヤマト王権がやがて日本列島の大部分を統治する大和朝廷となり、以来、現在に至るまで王朝の交代がないことは、考古学界でも共通した認識になっている。
 このことから、日本の建国は、考古学の立場から考察し、最も短く見積もっても1800年前となり、いずれにしても我が国は現存する最古の国家であることに違いはない。また、考古学者たちが主張する、大和朝廷の基盤となる王権が畿内で成立したことは、『日本書紀』の記述とも一致する。
 ただし、日本列島の大部分を統治する国が瞬間的に立ち上がるとは考えられない。大和朝廷につながる小さな国家がそれよりも前に成立していたはずであるから、弥生時代の時間の流れが緩やかだったことを考慮すれば、1800年に数百年上乗せした歴史がある、と考えるのが自然であろう。ならば、我が国の建国はおよそ2000年もしくは、それ以上前と表現しても大きく外れることはない。
 日本の国の歴史の長さは、他国と比較すると理解しやすい。現存する国家のなかで日本に次ぎ、2番目に長い歴史を持つのがデンマークである。10世紀前半にヴァイキングたちを統合した初代国王ゴームが建国したと伝えられ、現在の国王はゴーム王の子孫とされる。だが、それでもその歴史は千数十年と、日本の半分程度に過ぎない。次いで3番目が英国で、初代国王のウィリアム一世がフランスから海を渡ってきてブリテン島を征服したのが1066年、およそ九百数十年前のことである。現在のエリザベス女王はその子孫とされる。ところで、国連の常任理事国は英国を除いていずれも歴史が浅い。アメリカが独立戦争を経て英国から独立したのが1776年、フランスはフランス革命が始まった1789年、中国は毛沢東が天安門広場で成立を宣言した1949年、ロシアはソヴィエト連邦が崩壊して独立を宣言した1991年が建国の年である。日本国が2000年以上の間、王朝を守ってきたことは、人類史上の奇跡といっても過言ではない。

国の成り立ちを知らない子供たち  私は慶應義塾大学の大学院で憲法の授業をしているが、学生たちに「日本はいつどのようにできたのか」と問うても、答えられる生徒はほとんどいない。大学院でもその状態であるから、まして、全国の大学生や高校生は日本の国の成り立ちを知らないと考えてよい。この状況は、国家の存亡にかかわる極めて重大な危機と考えるべきだろう。
 この事態を外国に置き換えてみると、日本の異常さが分かる。たとえば、アメリカの教育を受けたにもかかわらず、アメリカの独立戦争を知らず、初代大統領のジョージ・ワシントンを知らないアメリカ人などいるだろうか。もしそのようなアメリカ人がいても、もはやアメリカ人とは呼べないのではないか。アメリカ人なら、誰しも建国の経緯を詳(つまび)らかに語ることができるはずだ。同じように、フランス革命について語ることができないフランス人や、毛沢東を知らない中国人などがいたら「もぐり」であろう。
 国民が建国の歴史を知っていることは、新しい国に限るものではない。日本に次いで古い歴史を持つデンマークや英国でも、国民は建国の歴史を雄弁に語ることができる。初代国王ゴームを知らないデンマーク人や、初代国王ウィリアム一世を知らない英国人などもいるはずがない。
 このように国民が国家・民族の歴史を熟知しているのは、国が力を入れて教育しているからにほかならない。どの国も、自国の歴史は建国からていねいに子供たちに教え込んでいる。ゆえに、そのような国の子供は、自国の歴史を知り、ときには外国人に説明することができるのである。
 同じように、日本でも義務教育の現場では歴史を教えている。中学校の社会科には歴史の科目があり、日本の子供たちは確実に日本の歴史を勉強しているはずである。
 ところがなぜ、日本の若者は建国の経緯を知らないのか。その答えは、中学で使われている歴史の教科書の中身にある。なんと、中学の歴史の教科書には、どこにも我が国の建国の経緯が書かれていない。それどころか、初代の神武天皇も紹介されていないばかりか、天皇とは何かについても、ひと言も説明されていない。これでは、子供たちが、日本はいつどのようにできたか、日本はどのような国なのか、分かるはずがない。

竹田恒泰(たけだ つねやす)takeda.jpg
昭和50年(1975)旧皇族・竹田家に生まれる。明治天皇の玄孫にあたる。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。専門は憲法学・史学。作家。慶應義塾大学講師(憲法学)として「憲法特殊講義(天皇と憲法)」を担当。
平成18年(2006)に著書「語られなかった皇族たちの真実」(小学館)で第15回山本七平賞を受賞。平成20年(2008)に論文「天皇は本当に主権者から象徴に転落したのか?」で第2回「真の近現代史観」懸賞論文・最優秀藤城志賞を受賞。著書はほかに「日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか」「旧皇族が語る天皇の日本史」(以上、PHP新書)、「原発はなぜ日本にふさわしくないのか」「怨盛になった天皇」(以上、小学館)、「現代語古事記」(学研パブリッシング)、「エコマインド~環境の教科書」(ベストブック)、共著に「皇室へのソボクなギモン」(扶桑社)、「皇統保守」(PHP研究所)などがある。

nihonjinhanaze.gif 『日本人はなぜ日本のことを知らないのか』
竹田恒泰 著
新 書 版 税込価格 756円(本体価格700円)
電子書籍 税込価格 600円(本体価格571円)
あなたは自分の国がいつできたのか答えられますか? 学校が教えてくれない「世界最古の国」の奇跡を、明治天皇の玄孫にして、ベストセラー『日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか』(PHP新書)の著者が、強い信念をもって語った意欲作。巻末の「子供に読ませたい建国の教科書」では、「日本ってすごい!」という思いが自然と湧いてきます。

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