ホーム » 生き方 » 『幸福の黄色いハンカチ』と高倉健さん~倍賞千恵子の現場

『幸福の黄色いハンカチ』と高倉健さん~倍賞千恵子の現場

2017年07月28日 公開

倍賞千恵子

※本記事は、PHP新書『倍賞千恵子の現場』より、一部を抜粋編集したものです。

倍賞千恵子の現場

スーパースター、高倉健さんのオーラ

高倉健さんと初めて共演したのは『幸福の黄色いハンカチ』(1977年、山田洋次監督)です。

初めてお目にかかったのが、東京・築地の東劇で開かれた記者会見のときでした。顔を合わせた共演者の高倉さん、武田鉄矢さん、桃井かおりさんは、それぞれ仕事の畑が違うので、みんな知らない人同士。私もガチガチに緊張していました。

会見前に喫茶室でみなさんとお茶を飲んだとき、映画初出演の武田さんが大ヒットした「母に捧げるバラード」の延長のようなエピソードを披露して、みんなで涙が出るほどゲラゲラ大笑い。ふと気がついたら緊張も何もなくなって、会見にもリラックスして臨むことができていました。

健さんの第一印象は、「やっぱりかっこいいなあ」

ずっと第一線で仕事をされてきたスーパースターのオーラというか存在感というか、これまで会ったことのない人に出会ったという感じでした。

とくに印象が強かったのは、その「眼力」です。なにしろ私はずっと目のちっちゃな「お兄ちゃん」と仕事をしていましたからね。

『幸福の黄色いハンカチ』は、北海道の網走から夕張まで武田さん、桃井さん、健さんが赤いファミリアに乗って旅をするロードムービーです。

私は夕張での回想シーンの出番がほとんどでした。ほかの3人が撮影チームとともに北海道を移動する間、私はひたすら待ち続け、夕張で3人を迎えるかたちで合流しました。

健さんは、映画初出演で監督に叱られてばかりいた武田さんや、緊張している桃井さんを撮影後に慰めたり励ましたりしながら関係を深めていったそうです。

私はすでにできあがったファミリーに毎回ゲストの女優さんを迎え入れる『男はつらいよ』とは、ちょうど逆の立場です。

だから最初は気持ちが張っていました。初日ロケはみんなで食事したあと、お茶を飲みに行くことになりました。ちょうど雨が降っていたのですが、そのとき山田監督から突然、
「倍賞君、健さんのところに行って、兄弟が何人いるのか聞いてきてごらんよ」
と言われ、え?と思いながら健さんのところへ行き、そこでお話を聞いているうちに、いつのまにか腕を組んで相合い傘をしていました。ドキドキしていたので結局、兄弟は何人だったのかは覚えていません。

 

ハンカチを見てポロポロ涙が流れた

この映画のクライマックスは、何といってもラストシーンです。

ためらう勇作の代わりに、若い二人が夕張の炭鉱住宅のほうに分け入っていき、黄色いハンカチが下がっているかどうかを確かめます。まず武田さんが「あれ?」と見つけて、桃井さんも促されて気がつきます。

「なに?どうしたの、欽ちゃん………ほらっ!あれ!」
「よかったなあ。勇さん、勇さん、ほら見てみろ、ほら!」
「ほら、勇さん、なんだかわかる?ハンカチよ、ほら、ちゃんとあったじゃないの!」

竿に数えきれないほどの黄色いハンカチが風にはためいている――。

それはどんな場面になるんだろう。私は家のそばの樹にリボンをたくさん結んで花が咲いたように見せるのかなぁと思っていました。でも撮影前に現場に行くと……空を背に高々とそびえる鯉のぼりの竿の頂上から2本のつり紐が山型に下がっています。そこにびっしり連なった黄色いハンカチが目に飛び込んできました。

美術部さんが1枚1枚ミシンで縫ってつくってくれたハンカチで、鯉のぼりの竿にこんなふうに黄色い花が咲くんだ、ああ、この作品に出られてよかった、と熱いものがこみ上げてきて、ポロポロと涙が流れました。

雲一つない真っ青な空をバックに強い風にたなびくハンカチ。そんなシーンを撮るために、天気待ちを3日ほど続けました。

洗濯物を干していた光枝は、黙って近づいてくる勇作を目にして、呆然と立ち尽くします。言葉を交わすこともなく、黙って勇作の荷物を手に取ります。黄色いハンカチを見上げて、家の中に向かおうとする勇作。光枝はその場で顔を手で覆う。勇作はその肩を抱き、二人で家に向かいます。

健さんの荷物を抱いた私は、ちょっとよろよろっとしてしまいます。台本のト書きに書いてあったわけではないけれど、思わず肩を抱く健さんの動きが自然になってよかった、と監督さんたちに言われました。

このシーンは終始、遠くから二人の姿をロングショットで捉え、そのまま撮影を終えました。でも編集の石井巌さんができあがったフィルムを見て、

「ここで観客がどうしても見たいのは、健さんの帰りをずーっと待ち続けた妻の顔。倍賞さんのアップを捉えたカットを絶対に入れるべきだ」

そう訴えて、光枝が勇作の姿を目にしたアップのワンカットのために、追加で撮り増ししました。

この映画は第1回日本アカデミー賞をはじめ数々の映画賞に輝き、ハリウッドでは『イエロー・ハンカチーフ』(2008年)というタイトルでリメイクもされました。

癒しフェア2018 東京(8月)、大阪(3月)出店者大募集!!

関連記事

編集部のおすすめ

『男はつらいよ』と渥美清さん~倍賞千恵子の現場

倍賞千恵子

黒柳徹子 子どもたちへのまなざし

100年インタビュー『本物には愛が。』より

森光子さんからのメッセージ「100年後の皆様へ」

森光子(女優)


WEB特別企画<PR>

WEB連載

アクセスランキング

WEB特別企画<PR>

WEB連載

癒しフェア2018 東京(8月)、大阪(3月)出店者大募集!!
  • Facebookでシェアする
  • Twitterでシェアする

ホーム » 生き方 » 『幸福の黄色いハンカチ』と高倉健さん~倍賞千恵子の現場