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ソフトからハードへ …韓流マーケティングの四段階

金美徳(多摩大学経営情報学部教授)

2011年12月15日 公開 2022年10月06日 更新

ソフトからハードへ …韓流マーケティングの四段階

ここ10年足らずの韓国企業の躍進は、かつて日本企業が世界に進出した時とは異なる特徴をもっている。技術力も資金調達力も日本に及ばない韓国の武器は何なのか。

世界有数のグローバル企業となった韓国四大財閥(サムスン、ヒュンダイ自動車、SK、LG)の強さの秘密を徹底的に分析。韓国企業の強みと弱み、グローバル戦略と新興国ビジネスモデルの特徴など、豊富な具体例で明らかにする。

韓国企業には学べる点と学べない点がある。日本企業に欠けた情報や視点を提供することによって、日本経済の再興に資する。

※本稿は、金美徳著『なぜ韓国企業は世界で勝てるのか』(PHP研究所)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

北東アジアを取り込む鳥取県

まず、北東アジアのエネルギーを見事に取り込んでいる鳥取県の事例を紹介する。2020年3月に鳥取県主催の「北東アジアビジネス交流フォーラム」で基調講演およびコーディネーターをする機会があったが、平井伸治知事をはじめとする鳥取県の取り組みには目を見張るものがある。

鳥取県は、日本海を挟んだ対岸諸国と古くから交流があることから、この地政学的立地を最大限に生かし、「環日本海交流」を積極的に展開している。交流相手は、韓国江原道(カンウォンド)、中国吉林省と河北省、ロシア沿海地方、モンゴル中央県で、これらの自治体と「北東アジア地域国際交流・協力地方政府サミット」を1994年より持ち回りで開催している。

この「環日本海交流」は目に見える成果を生み出しており、最近では、北東アジアゲートウェイ構想を打ち出し、その一環として環日本海定期貨客船航路を開通させたことだ。鳥取県境港市~韓国東海(トンヘ)市~ロシア・ウラジオストクの定期便就航により年間約2万人の韓国人やロシア人の外国人観光客を誘致している。

同定期貨客船航路は、中国・韓国・ロシア・モンゴルの四カ国が進めている「広域図們江(ともんこう)開発計画(GTI)」の運輸部会のプログラムに盛り込まれており、鳥取県はGTIにオブザーバー参加している。

GTIは、中露と北朝鮮の国境地帯から日本海に注ぐ図們江の沿岸地域などを対象にした開発計画で、国連開発計画(UNDP)の支援を受け、運輸・観光・資源・環境の四部会から構成されている。鳥取県は今後、このルートを生かして、二十世紀梨、スイカ、メロンを輸出する一方、韓国からパプリカを輸入するなど物流の活性化も図る。

また、空の便とのシナジーも狙う。すでに韓国アシアナ航空の米子―ソウル便が好調で、2010年2月の搭乗率は69.5%と過去最高となった。

2つ目は、韓国ドラマの『アイリス(虹の女神)』の第二弾の『アテナ(戦争の女神)』のロケ誘致に成功し、韓国人のみならず、日本人の観光客の増加が期待されている。『アテナ』は、朝鮮半島と世界を脅やかすテロ組織アテナと、これに対抗する韓国国家危機防止局の要員の活躍像を措いた諜報アクションドラマだ。

有名男優のチョン・ウソン(代表作『私の頭の中の消しゴム』)が出演しており、2010年12月13日の韓国での初放送では『アイリス』を上回る視聴率22.8%を記録した。ロケ誘致にあたっては、5~6カ所の地方自治体が名乗りを上げたが、平井知事のリーダーシップや韓国留学経験のある鳥取県職員たちの誠意が、韓国の制作会社社長に伝わったようだ。

実際、私自身も平井知事や鳥取県職員たちのアジア・マインドや人柄と接して、ロケ地が鳥取県になった理由が十分に理解できた。アジアビジネスにとって大切なことは、韓国人やアジア人と「心と心の交流」を図ること。そして、自らが相手に先駆けてまず開くこと、すなわち日本が先にアジアに声をかけることである。

3つ目としては、韓国江原道とLEDの共同開発などにも取り組んでいることだ。もはや、日本の企業のみならず、地方自治体もアジアのエネルギーを取り込まずして、生き残れない時代が到来したと言えよう。

アジアのエネルギーを取り込むというのは、アジアのヒト・モノ・カネ・情報を日本に受け入れることであり、日本のヒト・モノ・カネ・情報をアジアに受け入れてもらうことだ。そこでアジアを受け入れるにしろ、アジアに出て行くにせよ、ヒントとなるのが韓流マーケティングである。

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