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ソフトからハードへ …韓流マーケティングの四段階

金美徳(多摩大学経営情報学部教授)

2011年12月15日 公開 2022年10月06日 更新

 

 

韓流マーケティングの四段階

韓流マーケティングとは、まずは映画・ドラマ・音楽・オンラインゲームなどのソフトを売って韓流フアンをつくり、その後、携帯電話や家電などのハードを売るというもの。サムスン経済研究所は、これを四段階に分けて説明している。

第一段階は、音楽やドラマに触れてスターを好きになる。第二段階は、DVDなどを購入する。第三段階は、家電や生活用品など韓国製品を選び始める。第四段階は、韓国そのもののファンになるという。韓流マーケティングは、アジア、とりわけ台湾、ベトナム、タイ、中国では、すでに第三段階に入っており、第四段階の手前まできている。

一方、日本では、第三段階の壁をなかなか破れなかったが、今回の「新韓流ブーム」に乗ってリベンジし、やっと第三段階の風穴を小さいながらも開けたというところだ。日本市場では、サムスン電子の「GALAXYシリーズ」やLG電子の「Lシリーズ」の携帯電話が売れ始めている。日本の消費者は、NTTドコモからこれらを買っているので、なかには韓国製品を買ったという自覚がない方もいるかもしれない。

また、韓国製品だと分かっている方も複雑な気持ちであろう。韓国製品は、日本製品に比ベて品質が落ちるという先入観があり、どこか疑いの目で携帯電話を使っているのだが、逆に優れた点しか見当たらないので不思議に思っている。そして意識してか知らずか、いつの間にかLG電子のモニターを買ったり、液晶テレビに興味を持ったりし始めている。

 日本では、ドラマや映画が流行って40~50代の女性から支持を得た「韓流ブーム」から音楽・オンラインゲームの分野や、10~30代の男女のフアン層が加わった「新韓流ブーム」に移行している。日本での「韓流ブーム」から「新韓流ブーム」への歴史を振り返ってみる。

第一段階の生成期は2000年からで、韓国映画『シユリ』が日本で初めてヒットした。『シユリ』は、北朝鮮工作員と韓国諜報部員との壮絶なアクションシーンと、男と女の悲恋が美しく描かれており、興行収入は18億円に上った。また、女性歌手のBOAや男性5人組ダンス・アイドルグループのH・O・T(High-five Of Teenagers)が韓国のポップカルチャーの火付け役となった。ただ、そのベースとして、日本での韓国料理(ホルモン焼き・焼き肉)の普及があったということも見過ごしてはならない。

第二段階の進化期は2004年からで、いわゆる「ヨン様ブーム」の到来である。韓国のドラマの『冬のソナタ』や チャングムの誓い』が大ヒットした。第三段階の定着期は2008年からで、男性ボーカル5人のアイドルグループである東方神起(アジアの神が起きるという意味、日本デビュー2005年、現在は2名)が、韓流とK-POPを日本に根付かせた。

第四段階の飛躍期は2010年からで、少女時代(女性9人組の歌手グループ)やKARA(女性5人組の歌手グループ)が、新たなK-POPの一大ブームを巻き起こしており、まさしく「新韓流ブーム」と言えよう。その魅力は、何といっても妥協のないダンスと歌から生み出されるパワーである。

このK-POPの成功要因は、アジアを単一市場と見なして長期的な計画に基づいて大規模投資を行ったこと。また、体系的な歌手育成システムを通じたレベルの高い音楽制作力である。企画(練習生、外国語教育)→製品発表(デビュー)→広報(放送出演)→輸出(海外進出)というシステムが体系化されており、管理が徹底されている。

さらには、韓流の拡大に伴って、拡大する反韓流への対応である。反韓流バッシングを真正面から受け止め、対処できることは対処し、我慢するところは我慢している。繰り返すが、アジア市場を意識したグローバルマインド、長期的な視点に立った高い計画性、大規模投資によるリスクへの覚悟、大企業並みの経営システム管理、打たれ強さが成功要因となっている。

今後、日本企業は、国内外で否応なく韓流マーケティングに付き合わせられる。したがって韓流マーケティングを超える日流マーケティングが求められる。ソフトから入ってハードを売る日流マーケティングを考えるとき、一番に頭に浮かぶのがマンガ・アニメであるがそれだけでは足りない。マンガ・アニメに映画、ドラマ、音楽、ゲーム、日本料理を加えるとともに、これらの組み合わせで知恵を絞らざるを得ない。

または、ソフトからハードを売るという発想を捨てて、まったく別のマーケティングも考えられる。グローバルマーケティングにおいて最も大切なことは、現地の消費者の琴線に響かせることである。そのためには、マーケティングやマネジメントのスキルだけでなく、歴史観や世界観も重要となるであろう。

金 美徳 (キム ミドク)
1962年、兵庫県生まれ。早稲田大学大学院国際経営学修士・国際関係学博士課程修了。三井物産戦略研究所を経て、多摩大学経営情報学部教授、同大学院経営情報学研究科教授。専門は韓国企業、北朝鮮経済、アジア経済。

 

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